
SphinkS | スフィンクス | VJ, Broadcasting, Installation
徹底した現場主義を貫き、そこで出会う人や空間に応じて、その都度活動を変化させてきたスフィンクス。光、音、人、空間というクラブ空間を構成する要素をコントロールし、総合的な空間演出を目指すVJプレイを主な活動としつつも、ギャラリーでのインスタレーション、さらには、Ustreamによる移動放送局まで手掛ける彼らの活動を、一言で語ることは非常に難しい。はたしてスフィンクスとは何者なのか? そして、その多岐にわたる活動の背景には何があるのか? 昨年、岸野雄一氏のヨーロッパツアーに参加するなど、その活動を加速させているスフィンクスのメンバー、杉山慎一郎、有村隆、ミッキー三好に話を聞いた。
Text:原田優輝
スフィンクスをスタートした経緯は?
杉山(以下S):僕はもともとVJをやっていたのですが、ナイトクラブでの活動に限らず他にも色々なことに興味があり、枠にはまらずに面白いと思うことをどんどんやるような活動をしたいと思っていました。そんななか、確か2002年頃にイベントなどを通じて有村さんと出会いました。色々話すと背景も好きなものも全く違っていましたが、互いに知らない遊びや文化の良いところを説明し合って共有できる相手だった。加えて、映画や音楽にも詳しく、機材の扱いもよく知っている。その頃に、なにか一緒に出来ないかという話しをしたのがきっかけです。
有村(以下A):僕はそれまでに映像を作ったこともなかったですし、あくまでも客としてクラブでVJを見ていたんです。でも、誘ってもらったイベントで友達がVJをやっていると、自分はやっていないのに当事者意識で見ちゃうんですよね(笑)。もともと映画はよく見ていたし、深読みするのも好きだったので、「この音楽にこの映像を合わせるのはこういうことだよね?」みたいな話をしたりしていたんです。杉山くんの活動については、他のVJとは違う感触があり、スゴく気に入っていたんです。まさか杉山くんから声をかけられるとは思っていませんでしたが、立場が違うものの同じ場を何度か共有していたこともあり、すんなり参加することができました。「自分にできることは何だろう?」と考える間もなく、現場に立っていたっていうこともありましたけど(笑)。

『DMC JAPAN FINAL』
スタート当初はどのような活動をしていましたか?
S:頼まれてもいないのにイベントに機材を持って行って、その辺の壁に映像を映したりしていました。当初は、中古屋で集めてきた古いビデオやレーザーディスクのグッと来る動画部分を抜き出して繋ぎ合わせたものを2台のビデオデッキで再生し、映像ミキサーで混ぜたり、エフェクトをかけたりしていました。そういうことをやっていくうちに、知り合いも増えて、徐々に色々なイベントに誘ってもらえるようになり、多いときは週に3日程、機材を持ってあちこちの催しに参加することもありました。テクノ、トランス、ヒップホップ、ドラムンベース、山奥の怪しいパーティからフュージョンバンドのライブ、友人知人の結婚パーティ、テレビタレントのライブまで、声をかけられればどこへでも行っていました。その後、徐々に打ち合わせや準備を経てから催しに参加するようになり、少しお金をもらえるようになって、Webや媒体に名前が載る機会も出てきたので、なにか素敵な名前をと考えて閃いたSphinkSと言う名前を名乗るようになりました。この頃の様々な経験が僕らの活動の素になっています。

野外パーティ『宇宙集会』チルアウトルームでのインスタレーション。
現在はメンバーに三好さんも加わり、3名で活動されていますが、それぞれの役割分担はあるのですか?
S:三好は、スフィンクスが展示をしているときに、何日間も続けてギャラリーに来ていて、「変なヤツがいるな」と思い、3日目くらいに声をかけたのが最初です。『自分も映像を作っています』と言っていたので『一緒にやる?』と誘うと、『はい!』と。でも実は、彼はその頃映像制作の経験はなく、嘘をついていました(笑)。でも、言ったからにはがんばってもらおうってことで、それから一緒にやってます。
三好(以下M):ギャラリーで映像を使ったソリッドな展示をやっている人をあまり見たことがなかったんです。「なんだこれは?」と思いながら、ずっとギャラリーに通っていたら、「一緒にやる?」と声をかけられて。そのときに初めてスフィンクスがVJをやっているということを知って(笑)、そこから紆余曲折あって今に至るという感じですね。
S:彼は過去になぜか異国で仏教の偉い人と生活を共にしてみたり、いきなりロシアに映画を撮りに行き大失敗して負債を抱えたり、こないだも急にいなくなったと思ったら遠くの町で渡世人をしていたりと、何に対してもとても勉強熱心です(笑)。最近は、立派に仕事をして映像も作るし、現場でもしっかりアシストしてくれています。また、3人の分担というところで言うと、まず僕が具体的に色々と決め、その後は催しや展示に際して漠然としたイメージやアイデアを出し、どうやったら実現できるか、またそれに必要な要素、機材やテクニカルな部分も含め、有村さんと打ち合わせて現実的に各プロジェクトを進めていきます。そして、三好も交えて制作や現場に向けての打ち合わせをします。
OORUTAICHI LIVE in Grrrnd Zero, Lyon
A:現場では、先導的な人はいますが、役割分担は流動的ですね。その場の空気感に合わせて交代しながら、素材や機材をミックスしたり制作したりしています。準備段階から話し合っているので、役割を担う人が変わることで解釈がブレるということはないですね。入り込んでやっている横で、同じ目線からの客観的な指示や提案ができるので良い形だと思っています。
S:外国などの変わったシチュエーションだったり、想像し得なかった状況下で活動する機会もあり、とてもエキサイティングですが、どこへ行ってもやることは同じで、皆が持ってる要素を繋ぎ合わせて編集してなんとかするという感覚でなんでもやっています。事前にプランはしっかり立てますが、だいたい思った通りにいくものじゃないので、今までの知識と経験と機材と勘をもって本番に向かい、そこでそれぞれできることを見つけて全力でやるのが全員の役割です(笑)。

SphinkS Exibition『不思穴カイガン旅行記』(2006)
人間の記憶をテーマにしたインスタレーション。会場内に設置された直径1メートルの巨大な眼球と耳のオブジェから発せられる映像と音が、来場者の動きを感知するセンサーによって様々に変化する。
VJ以外に展覧会でのインスタレーションなどもしていますが、そうした活動はスフィンクスにとってどういう位置付けなのですか?
S:知り合ったギャラリーのオーナーに声をかけてもらったのがきっかけで、以前から頭の中のイメージにあった人の記憶をテーマにした空間を、映像、立体、音響、光を使って制作しました。内容は言葉にしにくいですが、会場で体感してくれた方々と直接話をしたり感想を聞いたり、良くも悪くも評価を頂けることはとても良い経験になります。それ以来、インスタレーションなどの展示活動は、活動の中でとても重要な位置を占めています。今後も積極的に取り組んでいきます。
A:展示活動からの影響は色々な面で大きかったです。技術はもちろんのこと、膨らませたイメージやアイデアの具体化などとても良い経験でした。

『BURTON [ak] Project』(2007) FINAL HOME×ADAPER×SphinkS
来場者の動きを感知するセンサーによりダイエットマシンが起動。上に乗ったマネキンが激しく揺れ、音と映像が流れる。
スフィンクスの活動を見ていると、VJの可能性をさらに広げていこうという思いがあるように感じます。
A:VJという意識自体があまりないんです。VJのことだけを考えている限り、VJの可能性は広がらないように思います。自分たちがやっていることは、光、音、人、空間のバランスやタイミングによってイメージを具現化することなんじゃないかと思っています。それは現場だけでなく、準備段階についても言えることかもしれません。展示活動を経験してから、さらにその考え方は進みましたね。
S:日常生活の中で興味のあることに触れたり、気になる場所に出かけて行ったりしますが、そこで感じることや起こる出来事、知り合った人とのコミュニケーションを通して活動が変化しています。展示をしたり、イベントを企画したり、DJをしたり、ライティングもやったり、知人の舞台では音と映像の演出をしています。常にそこで自分たちに何ができるかを考え、相談し提案して進めてきました。活動の幅は多岐にわたっていますが、これまでの経験や様々な人との出会い等、自分たちの中にはストーリーがあります。
昨年、岸野雄一さんらと回ったヨーロッパツアーについても教えてください。
S:岸野雄一さんとは3年程前に偶然出会って、「ヒゲの未亡人」のライブ用の映像を一緒に作らせてもらい、音楽と映像について勉強させてもらっています。ツアー参加した「ヒゲの未亡人」のライブは、岸野雄一さん扮するヒゲの未亡人『ゾラ』の愛とユーモア溢れる歌とパフォーマンス、そして綿密に作り込まれた映像とがステージ上で組み合わさってひとつの物語になるものです。毎年ライブ用の映像を一緒にブラッシュアップしていて、去年は一緒に(ヨーロッパに)行くかという話になり、よりリアルタイムな演出を加えてステージに参加しました。オオルタイチくんともそのツアーで出会い、ライブのVJをしています。言葉や背景も異なる人たちと、音楽と映像で「何か」を共有する瞬間を各地で何度も実体験し、涙が出るほど濃密なツアーでした。
A:フランス、ドイツ、オランダの計8ヶ所を回ったんですが、言葉も通じない海外で観客のダイレクトな反応を得るという体験ができたことは、とても大きかったですね。ステージ外でのコミュニケーションでも多くのものを得られました。
KISHINO YUICHI DJ in Cafe Pompier, Bordeaux
最近は、色々な場所に行ってUstream中継をやったりもしていますね。
S:数年前まで、メンバーでシェアしていたスフィンクスのオフィス兼住まいがあり、普段そこで映像の仕事や打ち合わせなどをしていましたが、友人、知人やさらにその友達等がしょっちゅう遊びに来てくれて、遠方の友人も東京へ来ると『ただいま~!』と言う感じでしばらく滞在したり、音楽やパーティが好きな人たちが集まるコミュニティのような場所でした。その住まいの音声を毎日24時間ネットラジオで放送するようになったのが配信の最初です。そのうちVJ機材と一緒に配信機材を持って出かけるようになって、VJで関わるナイトクラブや催し物会場、友人の家やギャラリー等からも配信するようになり、移動放送局と相成りました。その様子は、「Public-image.org」でも『不思穴カイガン旅行記』として連載させてもらっています。配信を見たり聞いたりして現場に人が来てくれたり、遠方の方が聴いて感想をくれたりしているので、引き続きなにかのきっかけになったらいいなと思います。最近は、吉田アミさんらとの『やっぱり猫が好き』や、観客参加型DJイベント『レコード・バトラー』等の番組を放送しています。今後はクイズ番組、旅番組、子供番組、ニュース等老若男女楽しめる番組を企画中です。

Ustream番組『やっぱり猫が好き@大谷能生家』
出演:吉田アミ、毛利悠子、五所純子
今後の予定や、やっていきたいことなどがあれば教えてください。
A:継続的に参加しているイベントなどを引き続きやっていきつつも、こないだのヨーロッパツアーのように全然知らない場所でやる機会も作って行きたいなと思います。
M:ぶれないように揺れないように放物線を描きたいです。
S:ここまでまったく予想がつかなかったように、この先もまだわかりませんが、いつも自分たちの信じる活動をするのがスフィンクスです。







