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MOTOKAZU TERAI | 寺井元一 | Social Creator

NPO法人KOMPOSITIONを立ち上げ、渋谷の街中にある壁をアーティストに開放する「リーガルウォール」、国内最高峰のストリートバスケットボールリーグ「ALLDAY」など、アートからスポーツまで幅広い分野の表現者たちをサポートする活動を行ってきた寺井元一。これら一連の活動を通して、いかに社会にコミットしていくかを考え続けてきた彼は、今年に入り、まちづくりに特化した活動を展開していくために、「まちづクリエイティブ」を新たに立ち上げた。試行錯誤を繰り返しながら、持ち前の行動力を武器に前進を続け、ネクストステージへと足を踏み出した彼に話を聞いた。

Text:原田優輝
KOMPOSITIONを始めるきっかけを教えてください。

大学を卒業する頃、自分の周りにアーティスト活動をしている人や、音楽をやっている人が何人かいたんです。でも、就活の時期になると、これから先どうするんだという話があるなかで、辞めていってしまう人も多いんですよね。とはいえ、絵でも音楽でも表現活動というのは、その人の生き様そのものだと思っていたし、簡単に職業のように変えられるものじゃないんじゃないかと。そういうネガティブな選択をするんじゃなくて、これから先も彼らが続けていけるような何かができないかなと。続けていくことが難しい状況というのは、結局世の中自体に問題があるわけだから、それを変えなきゃいけないと感じて、最初は学生サークルみたいな感じで、周りの人間に声をかけて、KOMPOSITIONというイベントチームを作ったんです。

KOMPOSITIONのコンセプトを教えてください。

語源になっている「COMPOSITION」という言葉には、「構成」「文法」「作曲」といった意味があるのですが、頭文字を「K」に変えているところには、新しい「文法」や「構成」のようなものを、表現活動をしている人たちと一緒に創り出したいという思いが込められています。そうしていくことが、結果的に世の中を何かしら変えていくことなんだろうというところをベースにスタートしました。よく話すたとえなのですが、電車が走っているところには必ずレールがあって、そのレールがしっかりしていなければ、電車はうまく走れない。自分たちはそういうレールになれたらいいなと思っています。「そのレールというのは一体何だろう?」というところから考えていって、色々試してきたという感じですね。

スタート当初はどのような活動をしていたのですか?

最初は映画館を作ろうみたいな話から始まったんです。周りに映画を作っている人がいて、そういう人間がこれから先続けようか迷っているところを、どうにか後押しできないかと思ったんです。それなら映画館を作るしかないんじゃないかと(笑)。でも、すでにたくさん映画館があるなかで、わざわざお金をかけてそれを作っても仕方がないんじゃないかという話になって、映画は一旦あきらめたんです。それで、とりあえず街に出て考えようというところからスタートしたのが、空いている街の壁を利用して、そこにアーティストが絵を描くという「リーガルウォール」だったんです。

寺井元一

「リーガルウォール」を通して、どんなことをやっていきたいと考えていたのですか?

渋谷の街を歩いていると、たくさんのグラフィティがあって、中にもスゴイものもあるよねという話をしていたのがきっかけでした。そうやって壁に絵を描いている人たちがいて、でも、壁の持ち主は描かれては困ると言っている。かといって、ただまっさらにすればいいのかというと、それもあまり現実的じゃないし、どこかバランスを欠いていると思っていたんです。どうせなら、合法的に絵を描ける環境を提供した方がいいんじゃないかなと。今でもそうなんですが、自分たちの世代や仲間と縁のないようなおっちゃんおばちゃんも含めて、価値観も年代も違う人同士をどうつないでいけるかということに興味があるんです。それが社会に対してコミットしていくということなのかなと思っていて。それを街中にある壁を通してやっていけたら、それは意味のあることなんじゃないかなと思い、渋谷区役所とやり取りを続け、実現させることができました。

アーティスト側と行政側の間を取り持つようななかで、どのようなことを感じましたか?

もともと両者はかなり遠い存在で、根本的に違うところにいるから、なかなか折り合うことは難しいんですね。そこで大切なのは、何をもってお互いにメリットを感じてもらえるかということなんです。行政としては、公園や壁を維持・管理していくときに、業者に清掃してもらうというだけでは、なかなかうまくいかないところもあると。それをより良くするために、あくまでも実験的な試みとして、こういうやり方もあるということを理解してもらう。アーティスト側については、最初は当事者以外の人たちから、「グラフィティ・ライターはそういう活動はやらないんじゃないか」とか「そんなことをやっても意味がない」とか、ネガティブな意見が多かったんです。でも、やってみて思ったのは、やっぱり当事者と実際に話をしてみないとわからないということでした。彼らもひとつのことだけがすべて正しくて、他のことはすべて間違っているというような考えではなくて、あくまでもオプションのひとつとして、こういう考え方もアリだよねという反応が多かったんです。

寺井元一

「リーガルウォール」はKOMPOSITIONにとっても大きなターニングポイントになったのではないですか?

そうですね。映画館を作って、そこにみんなに来てもらうんじゃなくて、僕らが街に出ていくというやり方はスゴくいいなと思いました。公共の場所に出て行けば、無理矢理にでも見せられますし(笑)。よく「One Lose, One WIn」という言い方をしているんですけど、価値観も世代もバラバラな人たちの間に入っていくわけなので、自分たちが何か差し出すことで、何かを使わせてもらうというのがいいんじゃないかと。そのやり方を色んなパターンに当てはめられるんじゃないかと考えるようになりました。

新しいプロジェクトを立ち上げるときに大切していることを教えてください。

KOMPOSITIONには、表現者に活動の機会と場所を提供するという理念だけがあって、その枠組みにハマるものであれば何でもやっています。例えば、うちのスタッフでセパタクローのプロジェクトをやっている人間がいるのですが、ある飲み会で隣に座ったのがセパタクローの日本代表の選手だったらしく、そこでセパタクローの現状を聞かされて、「これはやらずばなるまい!」みたいな(笑)。僕らがレールだとしたら、走ってほしい電車が見つかったときに、それなりに周りの人間を説得できれば、それがプロジェクトになるという感じですね。

寺井元一

表現者の生活や金銭面のサポートという面はどう考えていますか?

今はあまり考えていません。それをやりたいなと思っていた時期もあって、渋谷のセンター街でギャラリーをやっていたことがあったんです。自分たちが関わったアーティストたちの作品を売っていくことで、金銭的にも回っていく環境づくりができたらと思っていたのですが、結局そのギャラリーは、海外アーティストの作品を海外に向けて売るというような感じになってしまって。それを続けていけば、ひとつのインパクトのあるやり方にはなったのかもしれませんが、僕自身がサポートしたい人たちというのは、周りにいる国内のアーティストなので、矛盾を感じてしまって…。ビジネスとしてやるんだったら、ひとつのものに特化して、それを強みにしていくという考え方もあるけど、KOMPOSITIONはビジネスじゃない。自分たちはひとつに縛られたくはないし、あらゆる方向に伸びていきたいんです。最近はそこがより強まって、昔よりもNPOらしくなっていると思います(笑)。

まちづクリエイティブという新しいプロジェクトも立ち上げられましたよね。

これはKOMPOSITIONからスピンオフという形で、僕が立ち上げた会社です。「リーガルウォール」をやっていくなかで、アーティストをサポートする環境を提供して、「一緒に楽しくやりました」というだけで終わってしまっていないかと悩んだことがあったんです。本来アーティストは、お客さんやキュレーターとの緊張関係のなかで、新しいスタイルをどんどん切り開いていく必要があると思うんです。でも、応援しているつもりが、「ここにいれば安心だ」と思わてしまう空間になっていたかもしれない。もっとシビアな関係を作らないと、この先はないんじゃないかと感じたんです。でも、それをKOMPOSITIONでやるということはしたくなかった。それに、KOMPOSITIONというのは基本的にアウトプットの形がイベントなので、その瞬間にその空間にいないと体験できないもので、後には残りにくいんですね。そういったKOMPOSITIONとは別の考え方で、街自体をもう一度作り替えるみたいな作業をやってみたくなったんです。それによって、次のステップに行けるんじゃないかと。

寺井元一

具体的にはどんな活動をしているのですか?

街に住んでいる人たちの日常に入っていって、そこから街を改造していくというようなことをやっています。寂れてしまっている地方都市とかには、そういうことが歓迎される場所というのがあると思うんです。地方都市には、空いているスペースや、見放されている物件などもたくさんあって、そういう公共空間をどう使っていくかというようなことを提案していく地域デベロッパー的な活動ですね。分かりやすく言えば、空き物件や廃墟をクリエイターが自由に使える形で提供する不動産ビジネス、つまりスクワット的なことを合法的にやれるようにする事業を軸に考えています。自分たちがその街に行くことで、そこにいる人の価値観が変わったり、そこに新たに人が来るようになったりということを手助けしていきたいと思っています。建物によってではなく、人の力で勝負することで、新しい街の価値を作りたいんです。

そこにはアーティストらも関わっているのですか?

まちづクリエイティブに関しては、第一に地域デベロッパーなので、まだそんなに多くのことをアーティストと一緒にはやっていません。まちづクリエイティブでアーティストと何かをやる場合でも、そこで生活をしている人のことを第一に考えるということが重要だと思っています。例えば、壁画を描くにしても、その前に住んでいるおばちゃんが好きか嫌いかという意見がスゴく重要だと思うんです。アート作品には、美術史の文脈のなかで評価されたり、値段がつけられたりということもあるかもしれないけど、もっと単純に好きかどうかという根源的な部分があると思うんです。そういう意味でも、その壁画を一番見ることになる人が感じることというのはスゴく重要。例えば、自分がサポートしたいと思っているアーティストたちの絵が売れて、彼らが食べていけるようになる世の中が来るとしたら、それはそういうおばちゃんたちが、彼らの絵を買ってくれる時代だと思うんです。

まちづクリエイティブの活動を通して、そういう可能性は感じられていますか?

はい。絵やアートひとつとっても、渋谷のような街と地方都市では、接し方が根本的に違うんです。以前にオランダ人のグラフィティライターを含む3人のアーティストと一緒に松戸で「リーガルウォール」をやったんです。そのときは、描く前に街の人とアーティストと一緒に、ご飯を食べに行ったりしてしたんですけど、顔見知りになったことで、毎日コーヒーを持って来てくれるおっちゃんがでてきたりしたんです。そのおっちゃんに聞くと、なんでコーヒーを淹れているかもわからないけど、なぜか毎日行きたいと思うらしいんです。絵の知識も全然ないし、何を描いているかもイマイチわからないけど、毎日通っていると「今日はいい感じだな」とか、毎日違うことを感じるというんです。それである時そのおっちゃんは、絵を通して毎日自分のことを見ていたんだと気づいたそうなんです。絵を見たときに、そこに何が描かれているかということではなく、自分がどう思うかがすべて。そう思った瞬間に、自分が毎日コーヒーを淹れていた理由がわかったんだそうです。

寺井元一

とても良いエピソードですね。

そういう人たちなら、例えば10万円の絵があったときに、それを普通に受け入れて買ってくれるんじゃないかと感じたんです。それはスゴく面白いなと。アーティストのサポートということを考える上でも、街ぐるみでそれをやっていける環境があった方がいいし、アーティスト側も街全体とつながっていく必要がある。そういうところにはスゴくポテンシャルを感じています。

寺井さんの中で、KOMPOSITIONとまちづクリエイティブはどんな関係性にあるのですか?

同じ人間がやっているので、もちろんそれぞれはつながっています。僕みたいな人間が、まちづクリエイティブのようなことを始めたり、次はこういうことをやろうというときに、それを実現するための場所やコミュニティとしてKOMPOSITIONがあるという感じになればいいかなと。色々な活動をしていくなかで、それぞれが価値を高めていけたらいいなと思っています。

最後に、今後の予定などがあれば教えてください。

まちづクリエイティブの活動として、松戸市をクリエイターやアーティストの拠点〈MAD City〉として最適化、再生するプロジェクトがまもなく始まります。秋以降、アーティスト・レジデンスやワークショップ、トークイベントなどをやっていく予定です。

寺井元一

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