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TAKU ANEKAWA | 姉川たく | ARTIST

刺繍をはじめ糸を用いた独特の作風で、オリジナル作品から企業とのコラボレーションまで、幅広く活動を続けているアーティスト、姉川たく。「刺繍=アナログ」というステレオタイプ的な図式に陥ることなく、映像、空間、ドローイング、デジタルデータなど、さまざまなメディア/手法をミックスさせながら、身体性や時間軸を伴った作品を制作してきた彼が、2001年の活動開始からまもなく10年を迎えようとしている。節目ともなるこのタイミングで、NANZUKA UNDERGROUNDでの約2年ぶりとなる個展を迎えることとなった彼に、中目黒のアトリエで話を聞かせてもらった。

Text:原田優輝

物づくりをはじめるようになったきっかけを教えてください。

子供の頃、親に美術館に連れて行かれたりしていたんです。家の近くに動物園があって、最初はそこに行くという話だったのに、着いてみたら美術館で、そこで絵を見せられたり(笑)。父親が設計士だったこともあり、それを見ながら自分でデッサンをやったりもしていました。その頃は自分の頭の中にあるイメージを描くというよりは、動物や人などを模写することが多かったと思います。中学以降はしばらく絵を描いていなかったのですが、大学に進学する頃に、自分が一番やりたいことを考えた結果、美術系の大学に進みました。

大学では何を専攻していましたか?

アパレルデザイン科に入りました。ただ、アパレル以外にも映像や建築の単位を取ることができたので、テキスタイルなどのことを学びつつ、パソコンを使ってものを作ったりということもやっていました。あと、自分でチームを作り、身体表現のパフォーマンスなどもしていましたね。当時は、単に絵を描くということがダサいというような感覚が自分の中にあって(笑)、色々やっていたんです。

その頃のさまざまな経験が現在の姉川さんの作風にもつながっているんですね。

布や糸を使ってものを作るという意味では、その頃の経験が確かに大きいのですが、こういう作品を作るようになったのは、実は30代に入ってからなんです。ちょうどその頃に、東京に出てきたのですが、それまではMacを使って映像を作ったり、スクリプトを書いたりということをやっていました。大阪で就職して3年半くらいインテリアデザイン会社で働いたりもしていました。ある時、本当にたまたまだったんですが、何かを作りたいと思って刺繍ミシンを買ったんですね。ちょうどそのタイミングでグループ展に誘われたので、そこで初めて糸とミシンを使った作品を作ってみたんです。

ANEKAWA TAKUANEKAWA TAKU

実際にやってみて、すぐに手応えは感じましたか?

そうですね。それまで10年くらいパソコンを使っていたので、単純にアウトプットがモノになって、触れることができるというのが大きかったかもしれません。あと、パソコンと違ってやり直しができないし、パソコンよりも自分が引いた線に意味が出てくるような感覚があったんですね。時間はスゴくかかるのですが、作りがいを感じることができたんです。

糸や針を使うというアプローチは、以前にやられていたパフォーマンス同様、身体性を伴った表現ですよね。

やっぱり動いているものが好きなんです。自分の作品は静止画が多いですが、一連の流れでイメージしていて、前後に動きやストーリーがなんとなくあるんです。そういう意味では、割と映像的なイメージが強いのかもしれません。

作品がアウトプットされるまでの過程を教えてください。

最初にラフをある程度きっちり決めるのですが、作っているなかで変化していくので、最終的には当初のイメージと違うものになることもあります。作っている間も途中で時間をおいてみることがよくあって、そういう意味では作品の時間軸というのは自分の中で重要な要素なのかもしれません。そうやって積み重ねていきながら、ある時点で「これで完成」というのが見えてくる。刺繍だからいくらでも重ねていくことはできるのですが、そのタイミングを逃して、それ以上をやっていっても、いいものにはならないんです。

ANEKAWA TAKUANEKAWA TAKU

ラフは手描きで作るのですか?

場合によりますね。最初からイメージが強くある場合は手で描きますが、ネットで拾ってきたものを切り貼りすることも多いです。ゼロから作るということにはそんなにこだわっていなくて、定着の形さえオリジナルであれば問題ないと考えています。

刺繍は手縫いとミシンを使い分けているのですか?

そうですね。量的にはミシンの方が多く、部分的に手で縫ったりしています。刺繍ミシンを使っているので、ミシンを使う場合は最初にデータを作るんです。それをミシンに縫わせているのですが、精度があまりよくない家庭用の刺繍ミシンなので、データ通りに出てくるわけではないんです。ちょうどドローイングとデジタルの中間くらいのアウトプットになる。そのくらいがちょうどいいんです。

映像やインテリアなど、刺繍だけではなく他の手法と絡ませて表現することが多いですが、何かこだわりがあるのですか?

それもさっきの身体表現や時間軸の話につながってくるかもしれませんが、今まではキャンバスの中だけで作品を収めたくないという考えがあったんです。ただ、最近は無理やり中に収めるのも面白いかなと思っていて、糸とドローイングでキャンバスに落としこむということを続けています。これまでずっと作品は変化し続けてきていて、それをあまり自分で制御しないようにしていたのですが、最近ようやく少しずつ落ち着き始めたかなと感じています。

何か心境の変化があったのですか?

活動を続けて10年くらい経って、ようやく自分の物づくりがしっかりできるようになってきたような気がするんです。いままではどこか人の顔色を伺うじゃないですけど、「売れるようなものを作ろう」とか、そういう意識もどこかにあった。でも、最近はそこから解放されて、自分が作りたいものを自由に作れるようになってきました。変に考えすぎたり、小手先で作ってしまうのではなく、なるべく素のままを表現できればと思っています。それは少し恥ずかしいことでもありますが、自分に正直なことが一番なのかなと。それを人が受け入れてくれるかはまだわからないですが(笑)。ただ、どのくらい自分勝手が許されて、どのくらい見る人に歩み寄っていかなきゃいけないのかというところのさじ加減は、まだわからないところもあります。そこを気にしすぎてしまうとつまらないものになってしまうだろうし、かといってまったく気にしないと何も伝わらないですしね。その辺はこれからの課題ですね。

ANEKAWA TAKUANEKAWA TAKU

作品を作る上でインスピレーションソースになっているものを教えてください。

以前は、普段からストックしている画像や、一瞬映ったテレビの映像などが結構多かったのですが、最近は普段の生活のなかで感じたものを、作品に定着させていくという感じですね。それを表現する上で面白い素材がないかを探していくんです。昔はどちらかというと、見る人に合わせたモチーフの選び方をしていたのですが、最近は自分の感情を置き換えやすいものを選ぶようになったと思います。

まもなく開催されるNANZUKA UNDERGROUNDでの個展について教えてください。

いつも僕は展覧会全体のテーマを最初に明確に決めることはないので、全体を作り終えた後に、何か良い言葉が出てくると思うのですが、大きなキャンバス作品4点くらいと、ナンちゃん(※ギャラリスト・南塚真史氏)からの要望もあり、ストーリー仕立ての小さなブック形式の作品を作っているところです。以前から、”人が何かを信じている状態”というものに興味があって、宗教とかをよくウォッチングしているのですが、そういうものが生活と密接に関わっているような状態を、今回の展示では表現できないかなと考えています。

ANEKAWA TAKU
これまでの作品にも宗教的なイメージや土着的なイメージを想起させるものが結構ありますよね。

そうですね。高校のときに、モルモン教に勧誘されたことがあったんです。そのときに、なぜ彼らがそういう宗教を信じているのかがまったく理解できなかったので、週に1度くらい話を聞いていたんです。でもいくら聞いても一向に平行線のままで(笑)。それをきっかけに、人が何かを信じている状態というものに興味を持つようになったんです。僕自身は無宗教ですが、自分の作品だったり、好きな人だったり、そういうものを拠り所にして生きていて、それは大きく捉えれば宗教とあまり変わらないのかなとも思うんです。

宗教芸術などを見ていると、信仰が生み出した作品の強度のようなものを感じることもありますよね。

聖書なんかも読み物としてとても優れていますし、宗教芸術というのは圧倒的に強いですよね。そういう意味でも、人間が何かクリエイティブなものを作ろうとしたときに、宗教以上のエネルギーになるものはないんじゃないかと思ったりすることもあります。自分がそこに入っていくということはないですが、そこにはスゴく興味があるので、ずっと観察をしていきたいという思いがあるんです。

最後に、今後の展望などを教えてください。

さっきも少し話しましたが、僕は自分の活動を10年スパンで考えているんです。最初の10年が終わり、これから中盤の10年に入っていくという感覚でいます。ようやく自分に少し余裕が出てきたので、これからの10年は、本当に表現したいことや得意なこと、面白いと思っていることをみんなに見てもらう時期なのかなと。具体的にこういうことをやっていくということは明確には決めていませんが、自分なりの方向性というのは大まかには見えています。そういう意味でも、今回の個展は次の10年のスタートになると考えています。少し怖くもあるのですが、自分がこれからどういうふうにやっていくのかということを、ちゃんとプレゼンできればいいなと思っています。

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