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TAKESHI KOIKE & KATSUHITO ISHII | 小池健 & 石井克人 | Movie Director

石井克人監督による『PARTY 7』『茶の味』などのアニメーションパートや、短編アニメーション作品『TRAVA-FIST PLANET』をはじめ、これまでに数々のコラボレーションワークを手がけきた石井克人と小池健。そんな彼らが、製作7年にわたる長編アニメーション映画『REDLINE』を完成させた。木村拓哉、蒼井優、浅野忠信らの豪華声優陣も話題になっている本作だが、なんといってもその魅力は、10万枚以上という作画枚数が示す通り、徹底的に手描きにこだわったダイナミックなアニメーション表現に尽きるだろう。遠い宇宙の遠い未来で、8組の個性あふれるキャラクターたちが、ルール無用のカーレースを繰り広げるというシンプルな物語に、圧倒的なクオリティとエンターテインメント性を詰め込んだ本作の舞台裏について、監督の小池健と、原作・脚本などを手がけた石井克人のふたりに話を聞いた。

Text:原田優輝
まずはおふたりの出会いから教えてください。

石井:『PARTY 7』のときに、オープニングはアニメーションにしようと思い、国内外の色々なアニメーターの作品を見ていて、これだと思ったのが小池さんだったんです。それは、海外のゲームかなにかのプロモーションムービーで、ピーター・チョンをはじめ、色んな人たちが参加していたものだったんですが、その中で小池さんのパートが一番光っていたんです。金田伊功さんという伝説のアニメーターの方がいるのですが、小池さんはそれを越える表現にチャレンジしているように思えたんです。

小池:『PARTY 7』は、自分がやったことのないようなカメラワークや画面作りができたので刺激になりました。石井さんの企画はどれも面白くて、その後も話をもらう度にすぐに飛びついてやらせて頂いていたんです。しかも石井さんは、いつも割と自由度がある状態で脚本を渡してくれるので、それを自分で消化しながら作っていける。そういうことを許してくれるパートナーとしてスゴく感謝していますね。

REDLINE

製作7年という今回の『REDLINE』は、これまでのコラボレーションワークのなかでも最も大きな規模の作品になりましたね。

石井:そうですね。最初の1年はキャラクター作りで、脚本を作り出したのは2年目くらいからです(笑)。そこから小池監督がコンテを描き始めて、作画には4年かかりました。

小池:作画に入ってしまうと、アニメーションの現場の作業になるので、その間は他のみなさんには「ちょっと待っててください」という感じで(笑)、ひたすら作り続けました。それが徐々にでき始めた頃から、音響などの作業も進めて頂きました。

今回のストーリーが生まれたきっかけを教えてください。

石井:アメリカのセドナというところに知り合いのおばちゃんが住んでいるんですが、その息子が車ばっかりいじっているようなヤツなんですよ。セドナは、ハリウッドのセレブとかも来るところで、温泉もあったりして箱根みたいなところなんですが、UFOが出現したり、山で瞑想している若いヤツがいたりと、ちょっと変わった場所なんです。でも、周りをドライブしてみると、若いヤツはみんな車ばっかりいじってるみたいな(笑)。全然娯楽がないから、映画館にはたくさん人が来てるんじゃないかと思うんだけど、そこにも全然お客さんがいなかったり……。そういう人たちが見ても楽しんでもらえるような、カッコ良い車が走りまくるというシンプルな話を作ってみたいというのがきっかけになりました。

TRAVA-FIST PLANET

映画の設定は未来になっていますよね。

石井:以前に小池さんと「TRAVA」という作品を作ったんですが、遠く離れた銀河系という設定があって、それを引き継いでいるところがあります。たぶん『スタートレック』とか『スター・ウォーズ』とか日本のSFアニメとか見た人なら誰でも入っていけるだろうみたいな意識もあり、そこをベースに作ってみようというのがありました。

『TRAVA』から『REDLINE』までにはかなり時間も経っていますが、今回特にこだわりたかった部分というのはありましたか?

石井:やはり世界観ですね。「TRAVA」のときは、銀河系の最果ての星に調査に行くという話だったので、その星自体の世界観やトーンというのは中心にはなかったんです。でも今回は、メインの舞台となる星をどういう世界観にするかというところはかなり悩みましたね。そのなかで60~70年代のアメリカ映画のザラついた感じの雰囲気がいいんじゃないかという話が出たりしました。最終的には、そんなにザラついた雰囲気にはなっていないのですが、写真や映画を見たり、絵を描いたりして、小池監督と意思疎通しながら、昔の西部劇のようなちょっと黄色いイメージの世界観を作っていきました。

小池:内容としては、カーレースがベースにあり、そこに恋愛と友情という2つの要素が絡んでくるという単純で分かりやすいストーリーにしたいというのがありました。石井さんから最初にもらった企画書には、登場する主要8組のレーサーたちの大まかなキャラクター設定などが書かれていたので、それをもとにまずはキャラクターを作っていくところから始めました。

REDLINE

石井:キャラクターに関しては、今回は小池監督ありきの作品だったので、小池さんの作風をどう生かすかということを念頭に置いて考えていきました。

小池:石井さんからもらったイメージを参考に、全身の見た目や表情などを描いていくなかで、自分なりにキャラクターを固めていきました。その人の特徴を表現する上で、コスチュームも大切な要素だったので、そこにもかなりこだわりました。それぞれのキャラクターだけでひとつの作品が作れるほどの密度の濃いキャラクターにしたいという思いがあったんです。あとは、例えば、松本零士さんの「キャプテンハーロック」のように、違う作品のキャラクターが入ってくるということを自分たちもやりたかったので「TRAVA」に登場したキャラクターを入れたりもしました。

石井:アニメーションの場合は、実写よりも色んなことができるので、妥協の必要がないのがいいですね。例えば実写だと、兜を乗せたキャラクターを考えても、「兜高いんですよ」とか言われたりしますからね(笑)。

小池監督にとっては、長編アニメーション映画の監督を務めるということも大きな経験になったのではないですか?

小池:そうですね。でも、石井さんから「短編を作ってそれを重ねていくだけだよ」みたいなことを言われて気が楽になり、あまりプレッシャーは感じずに、「こうやったら楽しいだろうな」というのを判断基準にして進めていくことができました。もちろん、楽しいというのは楽をするということではなくて、大変なことでも楽しんやれる方法を選んでいけば、良い方向にいけるんじゃないかという思いでやれたので、それが今回はうまくいったのかなと思っています。

REDLINE

作画枚数10万枚ということですが、当初から手描きにこだわるという方向性は固まっていたのですか?

小池:そうですね。僕が初めて劇場アニメーション映画を見たのは『銀河鉄道999』なんですが、メカのカッコ良さや迫力など、当時の衝撃が今でも残っているんです。特にさっき石井さんの話にも出た金田(伊功)さんのパートを見たときは鳥肌が立って。そういう感覚を今の自分たちの技術で表現できればいいなという思いがあり、手描きにこだわりました。やっぱりアニメーションは動かしてナンボという思いがあるんです。劇場アニメの場合は、動かしたいから絵はシンプルにするという流れもあると思いますが、自分たちにしかできない濃い画風を保ちつつ、それをシッカリ動かすということをやりたかった。そのために、キャラクターだけではなく、背景も含めて影をブラックで統一して、自分の好きなアメコミ風の画面を作ることにこだわったりしました。

石井:最初は、これだけの絵を動かせるのかなと心配もしたのですが、実際に観たときに、これはスゴイなと思いましたね。あの絵が本当に動いてる!って(笑)。僕も『銀河鉄道999』は好きなんですが、アルカディア号を見た時よりも驚きましたね。

小池:例えば、序盤に出てくる主人公のJPがニトロを使って加速するシーンでは、彼が乗っているトランザムと一緒に伸びていくような表現をしているのですが、これは手描きだからこそやれたことなんです。脚本の時点では「JPとトランザムがグニューと伸びる」と書いてあったのですが(笑)、重力に逆らって加速していくような感じが出せたんじゃないかと思います。ここは『REDLINE』全体のイメージの核にもなっているシーンですね。

石井:小池監督がどんどん自分のイメージを超えていくので、本当に驚きの連続でしたね。ある時点からは、「もう乗っかっていくしかない」みたいな気持ちになりました。作品がどんどん先に進んでいくので、置いていかれないように、SEや音楽の人たちと一生懸命やりました(笑)。

REDLINE

音響に関しても、細部までリアルに作り込まれていて、空間的な広がりを感じることができました。

石井:すべて実際にある音で構成していこうと考えていました。実写のときもそうなんですが、音の重厚感やツヤを出すためにも、同録した音だけでは使わないんです。実際に他の人がどうやっているかはわからないですが、ドアの音ひとつにしても、4つか5つ音を足すことで、本当はトタンでできているドアを、マホガニーでできているように見せたり(笑)。そういう実写でこだわる部分は、今回もこだわりましたね。

実写とは違い、アニメーションでは完全にゼロから音を作っていくわけですが、その辺りはあまり問題にならなかったのですか?

石井:今回は、ずっと実写でSEをやってくれていたスタッフにお願いをしたんですが、基本は(実写と)同じだと伝えていました。音がまったく撮れてなかったと思ってやってくれと(笑)。ほぼすべて生音で付けていってもらうというアナログ的なやり方をしています。音楽は、当初は2チャンネルで作っていたのですが、音の量がハンパなく多くなってしまったので、途中で5チャンネルで作り直すことにしました。その辺りのこだわりは、まさに空間作りという感じでしたね。

小池:自分が知っているやり方とはまったく違ったのでスゴく新鮮でしたし、実写畑のプロの方たちがこの作品のために技術を出し合ってくれたのはとてもありがたかったですね。そういう現場に立ち会えたことはスゴく刺激になりました。

REDLINE

石井:いままで実写をやってきたスタッフが多く、長編アニメは初めてという人たちだったので、みんな自分の直感を信じるしかない状況だったと思います(笑)。やり慣れていないから力の抜きどころもわからないままやりすぎちゃったりして、そういう違和感みたいなものも、この映画には合っていたんじゃないかなと。

小池:本当に妥協がないんですよね。各パートをそれぞれのプロフェッショナルの人たちが突き詰めてやってくれました。それぞれにこだわりがあって、そのポイントが違うんですよ(笑)。そのなかで、みんなが納得できたら次に進むという感じでやっていきました。

最後に、本作の見所を教えてください。

小池:スピーディでダイナミックな作品になっているので、ぜひ劇場の迫力のある音響で見てもらいたいですね。

石井:いい感じで低音が効いていますし、あまり映画音楽にはないような4つ打ちの曲ばかり使っていますから、劇場でリズムを取りながら楽しんでもらいたいですね。あとはなんといっても、「この絵が動くんだ!」という単純な衝撃をぜひ味わってほしいと思います。

小池:あと、色んな国の子供たちに見てほしいというのがありますね。設定や作風はある意味無国籍な感じだと思いますが、後で調べてみると、実は日本のアニメーションだったということが分かってもらえるような感じがいいなと。

石井:どの国の人が見ても違和感なく入っていける作品になっていると思います。世界中の子供たちにオシッコを漏らしてほしいですね(笑)。

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REDLINE

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