loading...

PUBLIC-IMAGE.ORG

Creators Dictionary for Realtime Culture

  • PUBLIC-IMAGE.STORE
  • PUBLIC-IMAGE.3D

KAZUAKI SEKI | 関 和亮 | Video Director

先日発表された第14回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で、見事優秀賞に輝いたサカナクション「アルクアラウンド」のミュージックビデオ。楽曲の歌詞を立体オブジェにし、さまざまな手法を駆使しながら長回しで収めるという気が遠くなるような撮影の末に完成させたのは、Perfumeの映像やCDジャケットのアートディレクションでも知られる関和亮だ。毎回斬新な発想で観る者を驚かせる彼の作品は、どのように生み出されているのだろうか? 映像、グラフィックデザイン、さらに写真まで手がける注目のクリエイターに話を聞いた。

Text:原田優輝


映像制作に興味を持ったきっかけを教えてください。

映画は昔から好きで、中学生の時に家にHi8のカメラがあったので、友達10人くらいを集めて戦争映画のパロディとかを作っていました。それが原点と言えば原点です。高校生になると、ミュージックビデオに興味を持つようになりました。音楽が好きだったこともあり、漠然と自分でも作ってみたいと思うようになりました。

当時印象に残っているミュージックビデオなどはありますか?

最初に衝撃を受けたのは、ビースティ・ボーイズの「サボタージュ」のPVですね。刑事もののテレビドラマのパロディで、ビースティ・ボーイズのメンバーが犯人を捕まえたりするんですけど、こういうセンスはスゴいなと思ったのを覚えています。ヒップホップと全然関係のないドラマのパロディをPVにしてしまうのがカッコイイなと。

関和亮

NICO Touches the Walls「Diver」Music Video

高校卒業後はすぐに映像の勉強を始めたのですか?

いえ、卒業後は理系の大学に進学しました。でも、映像の仕事に就きたいという思いは持っていましたね。色々あって大学はすぐに辞めてしまい、その後映像の専門学校に入りました。その頃に、たまたまバイト先の店長さんの知り合いに映画監督がいらっしゃって、その方を紹介してもらい、専門学校に行きながら、プロの撮影現場に行っていました。ミュージックビデオをやりたいという思いが強くあったので、その思いを現場の周りの人に話したところ、ミュージックビデオの現場に連れていってもらったんです。それが、現在僕が在籍しているトリプル・オーの仕事だったんです。

トリプル・オーに入った当初は、どんな仕事をしていたのですか?

しばらくはミュージックビデオのADをやっていました。当時はノンリニア編集の出始めで、家庭用のパソコンでも映像編集ができるようになってきた時期だったので、タイトルを自分で作って入れたりということもちょこちょこやっていました。また、うちの会社は映像だけではなく、デザインの仕事もあった事もあり、スチール撮影現場のアシスタントなどもやるようになっていきました。

その後映像ディレクターを務めるようになるのはいつ頃からなのですか?

仕事を始めて5、6年くらい経ってからですね。24歳くらいのときに一度ミュージックビデオを撮る機会があったのですが、自分的には全然満足できなくて…。その後1年くらい経ってから、ようやくちょこちょこ撮るようになっていきました。自分で何となくやれるようになってきたかなと思えるまでには、10年くらいかかりましたね。

ターニングポイントになった仕事などがあれば教えてください。

Perfumeの仕事を始めたタイミングですね。ある程度自分に任せてもらえた作品で、それをまとめられたというのは自信になりました。もともと別の仕事でつながりのあった人から、「女の子3人組のアイドルなんだけどやらないか?」という声をかけてもらって、何も資料を見ずに直感でやると答えたんです。それまでは3ピースのバンドや歌手などの仕事が多かったので、3人の女の子というのが自分には新しいステージに思えたんですね。

Perfumeの仕事では、最初からグラフィックなども担当されていたのですか?

もともとはCDジャケットのアートワークを担当したんです。その時にいいものを作ることができたので、今度は映像をやらせてほしいと話したんです。その頃は、僕が映像を主にやっているということをクライアントさんは知らなかったんです(笑)。その次にジャケットと映像を両方やって、それも気に入って頂けて、そこから継続的にやるようになりました。1組のアーティストとこれだけ長く関われるというのは貴重な機会だと思っています。

いまや関さんが作る世界観がPerfumeのイメージを形作る大きな要素になっていると思いますが、アートディレクションの方向性などはどのように考えていたのですか?

明確にこうしたいということよりも、他とは違う女の子像を作っていきたいという思いがありました。ただ可愛くしたり、派手にしても、そういう女の子のアイドルはたくさんいるわけで、そこで勝負してもしようがないなと。音楽性も面白かったし、単純にカワイイというよりは、カッコイイ方向に持っていこうという意識はありました。

メンバーの3人とは毎回どのようなやり取りをしているのですか?

初期の頃は、こちらが提案するものをやってもらうということが多かったですね。その後しばらくしてからは、ある程度楽曲ができた段階でメンバーみんなで集まって、次はどういうことをやりたいかという打ち合わせをしています。最近だと、まず本人たちに意見を聞いて、それを拾って僕が形にしていくということが多いです。彼女たちの人気が出てくるにつれて、ミュージックビデオもYouTubeやWebでスゴく盛り上がるようになりました。Perfumeの場合、CDを聴くだけじゃなく、彼女たちの踊りなど視覚的にも楽しめるところがたくさんあるので、毎回面白いことをやっているねと思われるようなものを作っていこうという意識はありますね。

関和亮

「不自然なガール」(初回盤)

関和亮

Perfume「VOICE」(初回盤)

ミュージックビデオを作っていく際のプロセスを教えてください。

やはりまずは楽曲を聴いて、そこに入っている音から何をピックアップできるかを考えていきます。打ち込みの音ひとつ取っても色んな音色があって、たとえば光がパンと光っているようなイメージの音があるときは、ミュージックビデオでも電球を使おうとか、そうやってイメージを広げていきます。あとは普段何気なく過ごしているときに、単純な興味から「こういうことをやったらどうなるんだろう?」ということが色々あるので、そういう自分が単純に見てみたいと思ったことをやってみることもあります(笑)。

関さんの作品は、現場で撮影してみるまでどう転ぶかわからないような設定が多い気がします(笑)。出演するミュージシャン側のハードルも高そうですね。

もちろん、まったく算段なくやることはないのですが、色んなことを(ミュージシャンに)チャレンジしてもらいたいというのはありますね。前に撮ったPerfumeの「VOICE」でも、メンバーが色んなものにトライして、クリアしていくような作品を作りました。本人たちから、何かにチャレンジしたいという意見が出ていたこともあり、そういう姿勢をミュージックビデオの中で表現してあげたかったんです。

先日メディア芸術祭エンターテインメント部門で優秀賞を受賞したサカナクション「アルクアラウンド」も撮影は相当大変だったのではないですか?

この時は正直イヤな汗をかきましたね(笑)。それこそ現場に行ってみないと分からなという部分が大きかったので、色々アイデアを用意して現場に持って行きました。そこでできることできないことを精査しながら、カタチにしていきました。とにかく最初から最後まで一連で繋がっていることによって面白くなるというのがあったので、とにかく一周したいという気持ちを強く持ってやりました。

事前の検証もかなり重ねたのですか?

そうですね。ミュージシャンには現場にお昼頃に入ってもらったのですが、結局夜中の12時までスタッフのテストで終わってしまって…。夜中になってやっとメンバーに入ってもらったのですが、最初にカメラを回してみたときにあまりにもうまくいかなかったので、かなりドキドキしましたね(笑)。でも、一周できればなんとかなるというのがあったので、メンバーやレコード会社の方、スタッフのみんなに助けて頂きながらカタチにすることができました。

関和亮

サカナクション「アルクアラウンド」Music Video

この作品では、事前に楽曲の歌詞を立体オブジェにしていますが、そうしたセットも関さんの映像において重要な要素だと思います。

今なら合成でできてしまうようなこともたくさんあるのですが、やっぱり合成だと難しいこともあるんです。設定上、モノと人物が切り離せないときはセットにしています。セットがあることでリアリティが出るし、そこに人物が絡むことで起こる不思議さや面白さがあるんです。もちろんコストがかかってしまうので、その時の状況など色々兼ね合いはあるのですが。あと、セットを作るとスゴくイメージがわくんですよね。「ここにこういうものがあるなら、こういうことができるだろう」という感じで膨らみが出てくる。そういう意味では、アイデアを形にしていく大きな要素になっているかもしれないですね。

その他にミュージックビデオを作る上で大切にしていることはありますか?

例えば、夜の森で撮影したavengers in sci-fi「Delight Slight Lightspeed」では、最初に「光」というシンプルなキーワードがありました。暗い森でコンサート用の照明を当てたら単純に綺麗なじゃないかというところをスタートにして、そこから「光が動いたらどうなるか」とか、どんどんイメージを膨らませていくんです。サカナクションの時は、「歌詞を見せたい」というところから始まっているのですが、そういう短いセンテンスのテーマをまず作るということは大切にしています。

ご自身で写真も撮影されていますが、写真はいつ頃から撮るようになったのですか?

もともと父が写真好きで、フィルムの現像室みを趣味で家に作っていたこともあり、子供の頃から写真は身近なものでした。高校を卒業して東京に出てくるときに、父が使っていたカメラをもらい、それからは自分でも趣味で撮るようになりました。トリプルオーに入って、仕事で人物撮影が多くなってきたときに、自分で撮るようになり、そこで人を撮る面白さに目覚めたという感じですね。

関和亮

太田莉菜

関和亮

immi

映像、スチール、デザインと一人何役もこなすメリットはありますか?

音楽の話で言うと、やはりCDジャケットとミュージックビデオのリンクを意識せずにできるというのは大きいと思います。例えば、ミュージックビデオだけの仕事の場合、CDジャケットのイメージを意識しないといけない時もあるので、そういうことを考えずに作れるというのは大きな利点だと思います。

今後やっていきたいことなどがあれば教えてください。

これからは映像ディレクターも映像を作っているだけじゃダメなんじゃないかと感じています。ただミュージックビデオを作って終わり、というのがスゴくもったいない気がするんです。今はアウトプットできるメディアがたくさんあるので、それをもっと利用していった方が面白いと思うんです。世界的にもそういう動きはありますが、ミュージックビデオという枠だけで終わらないものはもっと色々作れるんじゃないかなと。もちろんミュージックビデオの場合は、ミュージシャンの意向などもあるのですが、場合によっては、映像が先にあって、それをもとにミュージシャンに音楽をつけてもらうということもアリだと思うし、そういうものが成立する時代になっていると思うんです。

関和亮

PUFFY「R.G.W.」Music Video

DICTIONARY

RELATED