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KYO MACHIKO | 今日マチ子 | Cartoonist, Illustrator

幻想的なタッチで描かれる一枚絵の漫画『センネン画報』を自身のブログ上で連載するなど、注目を集める漫画家・今日マチ子。叙情的と称されることが多い彼女だが、紙メディアを作品発表の場とする漫画家が大半を占めるなか、早くからWeb、展示など形式を問わず作品を発表するアグレッシヴな姿勢を見せてきた。そんな新しい時代感覚を持つ彼女に、自身の表現方法やメディアに対する考え方、そして、PUBLIC-IMAGE.ORGでまもなくスタートする松田青子氏との共同連載「青い鳥」を控えるこの時期に話を聞いた。

Text:石井龍


まず始めに『センネン画報』を描き始めた経緯を教えて下さい。

『センネン画報』は、「ブログで漫画を描きたい」と思ったのがきっかけです。ブログで連載する場合、最小の更新頻度は一日一枚ですので、その結果あのような作品になったのかなと思います。最初の頃はスタイルが確立されておらず、とりあえず自分の思いつく物語を毎日描いていたんです。それが描き続けるうちに洗練され、読者が何を求めているかということや、この形式で自分に合う表現方法というのが分ってきて、台詞がなくても絵で語れる叙情的な漫画に辿り着いたんです。実は最初から今のスタイルを目指していた、というわけではないですよ。

コマ割りや世界観、表現方法にしても特徴的なものが多いなと感じました。

私は少女漫画のような不定形なコマ割りができないのです。また、漫画マニアというほどの漫画読みでもないので、子ども時代に読んだ『ドラえもん』などのオーソドックスな漫画のコマ割りが染み付いているのだと思います。絵にしても、描き込みすぎると具体的になってしまうので、わざとシンプルにしています。普通の漫画なら問題ないのですが、『センネン画報』に限っては、キャラクターも含め、個性をつけすぎないことを大前提にしているので、読者が自分とキャラクターを重ね合わせやすいようにしています。それに、簡単な世界観だけを提示して、あとは好きなように読者それぞれが遊べるくらいの欠陥がある方が作品として愛されるのかなと思うんです。

(左)みかこさん1巻カバーイラスト、(右)みかこさん(1)P75 #17「音漏れ」ⓒ今日マチ子/講談社

例えば『みかこさん』は『センネン画報』と同じコマ割りだったり、『100番目の羊』では最後のページが絵日記を模しているというように、何かしら『センネン画報』と親和性がありますが、反対に『COCOON』はストーリーや台詞などが明確に打ち出されています。『センネン画報』と他の作品では、制作するうえでの意識の違いはありますか?

『センネン画報』は誰も(編集)担当がいない自分だけの世界ですので、人の目を気にせず実験的なことを試みているんです。他の作品は担当が付いて、読者さんもいるので、色々なこと配慮しながらやる必要がありますからね。『100番めの羊』は分量の関係でそういう日記形式になっていまして(笑)、『COCOON』は、結論を出すところであえて言葉にしなかったり、読み取り方が何通りもできるよう、『センネン画報』とはまた違う意味で遊んでほしいという意識で描きました。どちらかというと『センネン画報』は自己表現に近いのですが、基本的には読者がいてその人を驚かせたり、感動させたりしなければならないので、自己表現というよりも職人の仕事に近いイメージですね。

漫画家としては異例の連載数だと思います。作品発表のスパンについてはどうお考えですか?

あまりストックができない体質なので、パっと思いついたことをすぐにアウトプットしないと、自分でそのアイデアがつまらなく思えてしまい、それを放棄するということが多いんです。寝かせておくというよりも、「来週締め切りですよ」と言われてから考えて出す方が自分には合っています。まだキャリアの始めなので、とにかく数をこなして、練習するほうが良いと思うので、なるべく期間をおかず、アイデアに合った媒体で発表するというイメージですね。

一見自分の表現を突き詰めているようにも思えるのですが、常に読者を意識するという姿勢が印象的です。

自分の漫画がある意味で個性派すぎてしまい、人に受け入れてもらいにくいなと思った時に、松任谷由実さんや松本隆さんの歌を聴き直すんです。大衆に受け入れられ、普遍性を持って評価されているものとしておふたりの音楽を聴きます。

(左)100番めの羊、(右)COCOON

そのような大衆性はどこまで意識しますか?

漫画はアートとは違うので、みんなが読んでくれてこそ意味があると考えています。なかには読者が少なくても良い漫画もあるのですが、多くの人がその漫画を支持することで、作品が力を持つこともあるのでそれはすごく意識していますね。そういう意味では、ある程度は人気が出たほうが良いかなと思うのですが、そこまで人気がでなくてもある一定数の読者がついてくれるような作品にしたいと思っています。私の創作活動の原点は、大学の頃にミニコミ誌を発表していたという部分にあるので、基本的にメディアに載る表現方法が好きなんです。ただ絵を描いて自己満足になるよりは、簡単なものでも良いので、自分で作って誰かに喜んでもらいたい、多少なりとも観客のいるところでプレイしたいという気持ちはあります。

完全に自己満足の作品を作りたいと思わないですか?

ここは注目してほしい、ここはこう伝えたいという読者を意識した感覚は必ずあるので、完全に自己満足の作品…自分のために描くという事自体が難しいですよね。『センネン画報』でさえ、この意味不明さを楽しんでもらいたいと思っているので、誰にも理解されなくても良いという感じではないですね。自由に感じてもらう隙間を作るということにしても、遠くまでいきすぎてもダメ。勝手にやっているようだけど、入ってみるとピンとくる路地裏のお店というイメージでしょうか。もちろん、自分らしさを発揮するのは大切で、迎合しすぎるとどこにでもあるような作品になってしまいますし、ある程度のサービスは作る側にとっても喜びだと思うので、つかず離れず良い距離感で読者さんとはお付き合いしていきたいですね。

マチ子さんの作品は、いわゆる”漫画”というよりも”イラストの集合体”のようにも思えます。

たとえ一瞬の出来事でも、物語であることは意識しているので、いちおう漫画のつもりで描いています。イラストとはまた違うのですが、『センネン画報』に関しては、一枚で見た時のデザイン的なバランスは気にしていて、『みかこさん』のようにページ数の少ない短編でもページすべての原稿を並べた時のバランスは常に考えています。そういう意味での全体感やリズム感、絵的な配慮というのは重視しますね。

「新次元 マンガ表現の現在」2010年 水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景。撮影:加藤健 写真提供:水戸芸術館現代美術センター

最近では、漫画=アートという動きも見られますが、マチ子さん自身、最近では水戸芸術館での展示にも参加されたように漫画をアートだと捉えていますか?

その質問は少し難しいですね。ただ、あの時の展示は個人的に成功したと思います。すでに漫画は漫画として完成されているので、単純にアートという評価を与えるのはすこしおごっているかも知れませんね。むしろ現代アートとマンガ表現の進化の共通点や影響などを読み解く必要があると思います。本来漫画は紙の上で完結されているものだと思うので、それを立体空間に出す時は、空間に合わせた配慮が必要で、むしろ漫画家にインスタレーションをやらせるくらいの意識が必要かもとは思いますね。すべてではありませんが、海外の方が漫画をアートとして捉えようとしている感じがします。海外の漫画を読む機会はあまりないのですが、たまに海外に行った時に漫画を買って読んだりすると、やはり日本でいう漫画とは若干ニュアンスが違うような気がしますね。漫画におけるストーリーの面白さというよりもグラフィック的に優れている、美術的な鑑賞方法にも耐えうるレベルの作品が、海外でアートとして評価される漫画なのかもしれません。

「紙」「Web」「展示」と、マチ子さんは作品を発表する場所を変えることへの抵抗がないように思えます。

今日マチ子:あまりこだわったことはないですね。物語や世界観が表現できればコマを割っていない漫画や絵、ゲームでも良いのではとよく思うんです。一人では到底無理なのですが、いつか映像作品にも挑戦してみたいと思っています。作品を発表する際のスタンスとして、形にはこだわらずフィクションを伝えられればいいので、中身をかんがえたらあとはフリーペーパーやブログ、Twitterなり、そのときに自分で簡単に使いこなせるメディアにあわせていきます。いまのところTwitterには猫の写真をひたすらアップしているのですが(笑)、あれもひとつのフィクションのようになれば良いなと思っています。

「新次元 マンガ表現の現在」2010年 水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景。撮影:加藤健 写真提供:水戸芸術館現代美術センター

メディアの移行に沿って作品発表をする漫画家は稀ですよね。

漫画を電子書籍で出すという方はたくさんいるのですが、メディア自体にあわせて変化していくのは珍しいかもしれませんね。それに私は電子書籍化するのであれば、別に書籍にする必要はないのではと思いますし、TwitterはTwitterならではの表現をすればいいのであって、わざわざ漫画を載せる必要はない。メディアに合わせた物語を提示していけばと良いのだと思います。色々な媒体に顔を出せる存在であり、なおかつ重鎮、巨匠でもあるという意味でしりあがり寿さんをすごく尊敬していて。大作家になった現在でも新しいことを試みる心意気はすごいと思いますし、わたしも毎回良い作品を生み出しつつ、あまり落ち着きすぎないで自分の成長を促すような漫画を発表していくというキャリアの重ね方をしたいですね。

最後に、これからPUBLIC-IMAGE.ORGでスタートする連載「青い鳥」についてもお話下さい。

今回の連載は、いわゆる名所絵はがきのような本を作りたいと思ったのがきっかけで、外国人の方が呼んでも面白いもの、文字が読めなくても面白いものを意識して作っていきます。私の場合、叙情的なのは良いのですが、若干しっとりしすぎるきらいがあるので、一緒にやる松田青子さんの文章で軽みが出ると良いかなと思っています。

PUBLIC/IMAGE.3Dにて開催されたエキシビション「PREVIOUS/NEXT」での展示




Release Information
七夕委員 -星に願いを篇-
作家:今日マチ子
リリース日:November.21.2010
レーベル:Fuji Television
仕様:App for iPhone/iPad








『COCOON』/秋田書店 書き下ろしポストカード&ポスター
作家:今日マチ子
リリース日:September.12.2010
※画像下2枚はPUBLIC/IMAGE.3Dのみの限定販売になります。







『センネン画報 その2』発売記念 限定ポストカード
作家:今日マチ子
リリース日:June.22.2010
※画像下2枚はPUBLIC/IMAGE.3Dのみの限定販売になります。






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