
YUIMA NAKAZATO | ユイマナカザト | Fashion Designer
22時半という遅い時間のスタートにも関わらず、東京で初めて発表するYUIMA NAKAZATOのショーには、海外からも含め、多くのジャーナリストやエディター、スタイリストが詰めかけた。三角錐のようなメタルを能の舞台に見立てたというランウェイを、モデルは同じ動きで粛々と歩く。「同じ作業をモデル全員が淡々とすることで、未来の人間像を表したかった。儀式のようなショーにしたかった」と、デザイナーの中里唯馬。胸のふくらみやコルセット、ハイヒールなど、ジェンダーを超えた新しいクリエイションを発表した彼に話を聞いた。
Text:小柳美佳
今シーズン(2011年春夏シーズン)のコレクションは、ジェンダーレスが大きなテーマだと思うのですが、その考えは昔からあったのですか?
男性として、より自由にファッションを楽しみたいという考えはもともとありました。高校生の時はメンズよりもウィメンズのファッション誌を見ている方が面白いと思っていました。それは、ウィメンズウェアが持つ造形的に自由なことや、装飾性、身体美に強い興味があったからだと思います。どうしてこういう要素がメンズファッションにないのだろうかと昔から考えていました。振り返ってみると、小学生の頃から服装における男女の差に疑問があったんです。両親が柔軟な考え方をも持っていたこともって、男の子はこうあるべきというルールがなかった。しかし社会に一歩出ると、男女がはっきりとわけられている。年齢が上がるにつれてジェンダーについての疑問は強くなるのですが、社会性を意識して自分の考えをファッション通じて表現することができなかった。高校生のときに見たアントワープ王立アカデミーの新聞記事を見て、その自由な発想に衝撃を受け、ここなら自分の考えをより追求できると思いました。
アントワープ王立芸術アカデミーでは、ウィメンズウェアを勉強されたんですよね。
はい。やはりメンズよりもウィメンズのファッションに興味があったので、アントワープではコルセットなどの歴史衣装やその時代背景、文化まで学びました。日本と比べて情報が少ない分、より自分自身を見つめることができ、ウィメンズファッションと自分との関係性を追求できたことがよかったと思います。女性への服を作り続けていたのですが、デザインの最終的なプロセスは想像で補わないとならない部分があるという壁に行き着き、自分のわかる範囲で服を作りたいと思い、今はメンズウェアで表現しようと思っています。メンズだと100%自分の感覚でわかるので、たとえ今までにない価値観を提示してたとしても、着たいか着たくないかが自分の肌感覚でわかるというか。


YUIMA NAKAZATO 2011 S/S Collection
もともとファッションには興味があったのですか?
芸術家である両親の影響もあり、既成の物が少ない環境で育ったということもあって、物を生み出すという発想へ自然と意識が向かい、その意識が自分の着るものを考えるきっかけにはなっていると思います。自分にとってファッションは、自分自身が着る、身にまとうというリアルな感覚が根元にあり、発想していきます。昔から古着をリメイクして着たり、自分が何を着るかというのが自己表現でした。今回のコレクションでは男女の身体の差をなくすことで、ファッションがどう変わるのかを追求したかった。例えば、今回のコレクションで発表したコルセットやハイヒールに象徴されるように、女性を象徴する装飾性を自分の観点から男性の服に落とし込みたかった。男性の服は機能性が重視される傾向にあり、着ていて不自由なることはないんです。でも今回はあえて拘束感や身体美を追求することで、今までにない新しい男性像を表現できたと思います。男性の女装に対して寛容な文化が日本らしさでもあり、西洋のジェンダーレスとは異なる新しい感覚を用いて、ジェンダーを再定義する必要があった。男性の社会的な価値観も変わってきているので、ファッションも変わらないと。
ファッションはどう変わるべきだと?
男性として生まれた以上、男性の視点からジェンダーや様々な衣服の疑問に対して答えを自分なりに出していきたい。そんなデザイナーのリアルな着ることへの肌感覚を多くの人とシェアしていきたいんです。着たときに疑問が生じるかもしれませんし、既成の形をしていないことが多いので、着る人が着方を考えなければいけないかもしれません。“着る”という行為をより考えながら服を着るということは、「どうやって着るのか?」という想像力を必要とします。でも、その想像力こそが今の時代に大切なキーワードなのではないかと思います。


YUIMA NAKAZATO 2011 S/S Collection
男性のファッションの幅を広げる役割を持つプレタポルテの一方で、中里さんはオートクチュールも手掛けられていますよね?
デザイナーと、着る人が直接コミュニケーションを取ることで生まれる服作りは、学ぶことがとても多いんです。例えば、1年前にステージ衣裳を手掛けたファーギーは、彼女のスタイリストがたまたま僕の作品をネットで見てコンタクトを取ってきたのですが、ひとつのプロジェクトのために外部から人を集めてチームを作り、約1ヶ月みっちり製作に費やしました。量産する物作りとはまったく違うプロセスで服が作られていきます。アメリカ人の求めるセクシーさを追求し、価値観の違いを越えようと努めました。またUAさんがフジロックフェスティバルに出る際の衣装作りは、彼女のもとに4ヶ月間毎週通って、彼女の歌詞の内容や精神的な部分を深く理解するように努め、その部分をデザインに活かすようにしました。そのようなパーソナルな内面を反映させるようなモノづくりは、今後も続けていきたいと思っています。


(左) METAL GARMENT FOR LADY GAGA by YUIMA NAKAZATO、(右) BLACK EYD PEAS / FERGIE WORLD TOUR COSTUME
ファーギーの例があるように、現在は、ネットを通じて世界中に発信できる時代です。今回東京でショーを発表したのも、そのような理由が含まれていますか?
今までは海外での発表にこだわっていました。でも、活動のベースは東京なので、パリで発表するには輸送費や渡航費がかかってしまう。だったらその分クオリティを上げて、ショー形式で見せた方がいいだろうと結論付けました。ネットが発達している時代性も手伝い、クオリティが高ければチャンスがたくさんある。これからは、インドや中国などからも新しい人がどんどん出てくるだろうし、ファッションの流れが変わると思います。

YUIMA NAKAZATO GRADUATE COLLECTION of ROYAL ACADEMY OF ANTWERP
情報が瞬時に世界中に伝わる現在だからこそ、クリエイションで日本を意識するということはありますか?
日本人としてのアイデンティティを主張しすぎると、他の国の人との間に隔たりが生まれてしまうことに、アントワープの学生時代に気がつきました。自分の作る服に関しては、日本人というアイデンティティを表現するのに、日本らしいモチーフを使う必要はないと思っています。国籍を感じさせないボーダレスなデザインの方が、今後より求められていくと思います。
実際に海外のメディアにも多数取り上げられ、今後さまざまなプロジェクトに発展しそうとのことですが、今後の目標は何ですか?
今後、アジアのファッションシーンの発展とともに、日本人デザイナーの需要も高まっていくと思います。ヨーロッパでよりビジネスの幅を広げていきたいと思っています。


YUIMA NAKAZATO 2010-11 A/W Collection












