
takcom | タクコム | Motion Graphic Creator
音楽とシンクロしたミニマルで抽象的なモチーフが、まるで生き物のように有機的な運動を繰り返し、ひとつの宇宙空間を形成する映像作品。takcomこと土屋貴史は、その独自の世界観で、国内外からにわかに注目を集めている映像クリエイターだ。アプリケーションソフトが拡げてくれる表現の可能性と、作り手としての個性の均衡点を慎重に計りながら、音楽が持つ快楽性を、純粋な映像表現としてビジュアライズしようとする彼に話を聞いた。
Text:原田優輝
映像制作を始めたきっかけは?
大学受験の時に、普通の大学に行くのもつまらないと思い、先生に美大を受けたいと相談したんです。でも、すでに高三の夏だったので、今からだと遅いけど映像科なら入れるかもしれないという話になり、流されるままに映像をやるようになったのがきっかけです。
映像にはもともと興味があったのですか?
映画は好きでよく見ていました。ただ、自分で作るという意識はなかったですね。SFをよく見ていて、定番物だと「未来世紀ブラジル」「2001年宇宙の旅」なんかが好きでした。モンティ・パイソンもスゴく好きでしたね。映画以外の映像を意識したのは、U2やピンク・フロイドのツアーの映像を見てからです。
美大に進んでからは、どのような映像を作るようになったのですか?
当時は映画制作にも興味があったのですが、結構中途半端なことをやろうとしていた気がします(笑)。でも、卒業間際に、その頃作っていた実験映像的な作品を松本俊夫先生に見てもらう機会があって、そこで気に入ってもらえて、励ましの言葉も頂けました。それは、自分が映像を続けていく上で大きな出来事でしたね。
aus「With Rain」
大学卒業後はどのような仕事をされていたのですか?
大学卒業後、大手アニメーション制作会社に入りました。ただ、あまり肌に合わなくて、1年経つ前にやめてしまいました。その後は、主にCMなどのCGを作っている制作会社に入りました。そんな時期が併せて4年くらいあり、そこで技術的な部分は色々学ぶことができました。ただ、やっぱり大人数が関わっているものですし、たとえ自分が面白いと思えないものだとしても、作らなくてはいけないんですよね。当時は、そういう仕事をしつつ、並行して自分の作品も作っていたのですが、ネットにそれらの作品をアップすると、海外の人からを中心に、リアクションが結構もらえたんですね。そういうことをきっかけにして、ひとりでやってみようかなと思うようになり、2年前に独立をしました。
独立してからは、順調に仕事をすることができましたか?
まぁ仕事はこないですよね(笑)。でも、海外のアーティストからミュージックビデオ制作の依頼があったり、自分の作品をそのままCMで使ってくれたりと、海外からの仕事がちょくちょくあり、それでなんとかやり繰りしていました。あと、スペースシャワーTVさんからもコンスタントに仕事を紹介してもらえていたので、1年目はそれで乗り切ったという感じでしたね。
Spaceshower TV「MV Blocks Filler AM&PM」
ターニングポイントになった仕事はありますか?
決定的なターニングポイントというのはありません。でも、その時々に作った作品が、毎回次に繋がっているとは思います。例えば、自分の弟がausという名義で音楽をやっているのですが、彼の曲に合わせた映像を作ると、それを見てくれた人が自分のミュージックビデオでもやってくれと発注してくれたり、1本1本の作品が何かしら繋がっていますね。
海外からのオファーも多そうですね。
そんなに多いというわけでもないのですが、単純に日本にコネがなかったというのがあると思います(笑)。海外の人は、作品に対してダイレクトに反応してくれることが多いんですね。ネットで僕の作品を見て、メールでオファーされるというパターンがほとんどなのですが、日本の場合は、作品を見ただけで知らない人に仕事を頼むということが、あまり多くはないのかなと。あと、自分がやっているような映像は、シナリオがなくても成立するから、国内外あまり関係なくできるというのもあると思います。


Vital「Saying」
海外の仕事でも、日本で制作することが多いのですか?
はい。今のところそんなに大きな仕事をやっているわけでもないので、メールでのやり取りだけで完結することが多いです。こないだのVital「Saying」のミュージックビデオでも、撮影は向こうのチームに任せました。
先ほども少し話されていたように、takcomさんの作品は、ストーリー性よりも、抽象的なイメージや世界観を重視しているところがありそうですね。
自分自身、だんだんメッセージ性の強い表現を受け付けなくなってきている部分があるんです。例えば、映画の場合、取り上げているテーマというのが、良い作品かどうかの基準として大きいですが、自分としては、もっと純粋に映像表現だけで評価してもらえるようなものを作っていきたい。ピュアな音楽の気持ち良さを映像で表現したいんです。そういう意味では、曲のテーマやコンセプトは大切にしています。例えば、Caelum「Apoptosis」の時は、「細胞の自然死」という楽曲のテーマがあったので、それを地球的な規模の映像で描写できないかなと思いながら作りました。

Caelum「Apoptosis」
作品を作る上で大切にしていることを教えて下さい。
実写でもCGでもアニメーションでもないような、ひと言では説明がしにくいような表現をしたいと思っています。すでに映像の技術というのは完成されてしまっている部分が大きいと思うんです。だからこそ、未完成なものだったり、プログラミングから派生するような映像なんかに興味がありますね。
takcomさんの作品は、ミニマルで先鋭的な表現であると同時に、アナログ的な要素やノイズなどが混ぜられていることが多い気がします。
技術的な部分も関係してくると思いますが、キレイに作り込まれた映像よりも、手作り感が少し感じられるものの方が、観る人に引っかかるんじゃないかと思うんです。最近のミュージックビデオは、アーティスト本人を出せば成立してしまうものも多いですが、僕としては、それをなくした時に、5分近くの映像を人に観てもらえるかどうかという部分を追求したい。そうなった時に、やはり作り手が少し見えてくるような要素があった方がいいのかなと。

AU「Ida Walked Away」
モーショングラフィック自体が生命を持っているかのように有機的な動きをみせますが、これらはプログラミングで動かしているのですか?
CINEMA 4Dというプログラミング的な要素も持っている3DCGソフトを使ったりしています。自分でプログラミングが書けるわけではないので、こういうソフトの恩恵は最大限活かしています(笑)。ただ、表現の幅を無限にすれば何でもできてしまうからこそ、それをどこまで抑制してシンプルにしていくかということは、自分の中のポイントにしている部分ですね。
そうした制御のさじ加減が、これからさらに重要になってくる気がします。
そうですね。僕が普段使っているアプリケーション自体は、基本的には他の人と同じものばかりです。だからこそ、上手い人なら絶対にやらないような使い方というのは常に考えて、実験しています。そこでどれだけ実験ができるかによって、最終的なアウトプットも変わってくると思うんです。たとえば、SJQ 「Pico」のミュージックビデオでは、シェーダーの使い方がメチャクチャだったり、テクスチャの貼り方もあえて少しズラしたりしています。また、場合によっては、制作の過程で偶然生まれたものをそのまま生かすということもありますね。
SJQ(Samurai Jazz Quintet)「Pico」
最近手がけた仕事についても教えてください。
スペースシャワーTVのSTATION IDで、細金卓矢くんと一緒に映像を作りました。三角コーンをベースにした模型を作り、それを撮影、加工した作品です。あと、Easeback中島(賢二)さんのディレクションで、SONY「XB」のモーション等を担当しました。また、サンディエゴのAccent Creativeからのコミッションで、ダブステップをテーマにしたアパレルのWebスポットを制作しました。僕が出演したスウェーデンのドキュメンタリー映画「PRESS PAUSE PLAY」もSXSWを皮切りに公開になります。オリジナル作品は最近作れていないのですが、いくつか進めているものがあるので、今年中にはリリースできればと思っています。あと、ヒムロヨシテルさんというアーティストのライブVJを月1くらいのペースで続けています。VJと言ってもクラブイベントのVJという感じではなく、アーティストの世界観を元に事前に作りこんだものを、その場の即興を加えながら、ライブで出していくというやり方ですね。
最後に、今後やってみたい表現などがあれば教えてください。
日本は、欧米に比べて、モーショングラフィックの表現がまだまだ少ないと感じているので、クライアントワークなどでも、もっとそういう表現を定着させていけたらいいなと思っています。日本の場合は、どちらかというと手描きアニメーションなどの方が強いですが、もっと色んな要素がミックスされた良い意味で中途半端な表現が増えてもいい。日本だからこそ、もっとそういうものが出していけるんじゃないかと思うんです。
Spaceshower TV「V.L.C」
Animated Spot for Dataset Clothing












