loading...

PUBLIC-IMAGE.ORG

Creators Dictionary for Realtime Culture

  • PUBLIC-IMAGE.STORE
  • PUBLIC-IMAGE.3D

DAITO MANABE | 真鍋大度 | Artist / Programmer

テクノロジーによって人体をハッキングするかのような大胆な発想や、LEDやレーザーなど光学的なアプローチから生まれる幻影的な作品などで、国内外から大きな注目を集めているクリエイター、真鍋大度。YouTubeなどでアップされるラディカルな実験、試作の数々が、音楽、パフォーマンス、映像、広告など、さまざまな分野のクリエイターたちを惹きつけ、その活動は全方位的な広がりを見せている。現在もYCAM 山口情報芸術センター石橋素氏ととも手がけた新作インスタレーション「particles」を展示中の真鍋に、彼の活動拠点であるアンカーズラボで話を聞かせてもらった。

Text:原田優輝

現在YCAMで展示中のインスタレーションについて教えてください。

新作インスタレーション「particles」と、顔の表情を電気信号で操作する「electric stimulus to face」、蓄光シートに紫外線レーザーを照射して、光学反応でポートレートを描く「fadeout photochromic」を展示しています。後の2作品は過去に作ったものですが、「electric stimulus to face」は36人バージョン、「fade out」では、青山学院大学理工学部化学・生命科学科機能物質化学阿部二朗研究室、伊藤光学工業株式会社、関東化学株式会社に協力してもらい、暗闇だけではなく、日中でもポートレートを描ける「フォロクロミック」という素材を導入した最新バージョンになっています。

新作「particles」はどういう作品なのですか?

八の字螺旋状のレールをLED内蔵のボールがたくさん通過していくのですが、LEDの点滅を外部から操作することで、光の粒子が空中に特定の形を作るという作品です。ボールが転がる速度は一定ですが、点滅のパターンを変えることで浮かび上がる像は変化します。空中に形を作るというアイデア自体は2年ぐらい前からあったのですが、なかなかやる機会がなくYCAMや文化庁のサポートでやっと実現できました。

作品のアイデアはどのようにして生まれたのですか?

最初にこれをやろうと思った頃に、ART+COMBMWのインスタレーションがスゴく話題になっていたんです。僕が企画を担当していた某巨大イベントの仕事でも、BMWのインスタレーションみたいなことをやりたいという話が出たのですが、同じことはしたくなかったので、色々なプランを考えました。その中に今回の原型となるアイデアもあったという感じですね。だから、JussiがBMWでやったコンセプトや、Julius Poppの「bit.code」などの作品にインスパイアされています。

技術面でポイントになったところを教えてください。

テクニカルなアイデアは、石橋さんと一緒に作ったプロトコルにフォーカスを当てて作った「command line wave」という作品や、アピチャッポン・ウィーラセタクンの作品サポートで開発した分割画像解析を用いた位置認識技術などに近いものがありました。あと、ニュージーランドのプロジェクションマッピングのプロジェクト「night lights」で、Kyle McDonald君と一緒になった際に、彼が作ったプロジェクターとカメラを使った3Dスキャンのソフトを見せてもらったり、DLPのプロジェクターのハックとハイスピードカメラで3Dスキャンを行う方法を教えてもらったのもきっかけですね。平面だけではなく、3次元の位置を解析できるのであれば、空中で何かできるなと考えるようになりました。

どうやって通信するか、位置を解析するかというチャレンジは、石橋さんと作る作品ではよく出てくるトピックなのですが、今回は試行錯誤を重ねた結果、相当トリッキーなものになりました。僕が最初に提案した方法は、レールにユニークな小さい凸凹を付けて、ボールに加速度センサーを内蔵して位置を取得するというものや、過去に実現したことのあるハイスピードカメラと赤外線LEDの点滅のタイミングを制御するやり方でしたが、石橋さんと柳沢君が選んだ手法はそれに比べて無茶苦茶オシャレでした。「なるほどー」と唸りましたね(笑)。そのトリックのおかげで、一つひとつのボールがどこを転がっているか常にホストマシンが把握できています。

今回の「particles」とは逆に、作品として発表したものが広告などに展開されることもありますよね。

例えば、「LED in the Mouth」や、センサーで音を生成するようなものがそうですね。僕らがやっている活動は、その辺を行ったり来たりしやすいところがあると思っています。例えば、今回の「particles」のように広告の案件が来たときに、色々なアプローチを考えていくなかで、作品のアイデアが生まれることも多いし、企業から新しい商品やセンサーなどを紹介してもらい、それを何かに使えないかと相談されることもありますね。


「Electric Stimulus to Face」をはじめ、試作段階のものをYouTubeなどで公開することで広がっていく作品も多そうですね。

YouTubeにアップする時は、完成された映像を出すよりも、一発撮りしただけのような余白が残った状態のものをアップすることが多いですね。アイデアを追加できる余地があった方がコラボの機会が増えると思います。顔の電気ネタもアップした当初は誰かにやってもらえることを想定していました(笑)。自分が作った映像をアップすると、ビュー数という形である程度フェアに評価してもらえる。自分たちの様に末端でコツコツ制作している人間にとって良い時代ですね。あと、YouTubeに映像をアップする理由として、時系列で自分たちの活動をアーカイブしておきたいという思いもあります。

そのアーカイブを後になって振り返ることも多いのですか?

新しい事を考える時に、以前のアイデアを組み合わせて何かを作るというパターンは多いです。時間とともに技術やアイデアが浸透することで、自分たちの興味がなくなっているものも多いのですが、そういったものを広告など違った形で使って頂けることもあります。僕らとしては今すぐにではなく、3年後に使われるようなネタを、今のうちから作っておかないといけないと思っているのですが、それはスゴく難しいことなので、とにかく手当たり次第、節操なく興味のあるところから作っている感じですね(笑)。

テクノロジーの進化の速度は、最近ますます早くなっている気がしますが、そうした状況が真鍋さんの制作に影響を与える部分はありますか?

例えばTwitterみたいなものが出てくることで、情報との関わり方が劇的に変化が起きるということがありますよね。そうなると、情報収集のやり方が大きく変わるので、こういったものには影響を受けていると言っていいでしょうね。一方で、例えばARなんかもそうですが、10年以上前からあった技術や概念が、ようやく時代に合うようになって普及し始めるということもあります。現在のインフラやプラットフォーム、デバイスなどによって、過去に考えられてきた抽象的な概念が次々と具体化して社会に落とし込まれている、というのが今の時代なのかなと。最近だと、iPhoneの登場で開かれたものが大きかった気がしますが、その辺からあまりついていけてないのかもしれないですね(笑)。あと、3Dスキャンや3Dプリンターは新しいものではないですが、安くなって初めて使えるようになるので、そういうところで影響というか普及による恩恵を受けていますね。新しい技術をツールとして使うことには特に抵抗がないので、面白そうだなと思ったら色々と試してみます。

時代の流れに柔軟に対応しつつも、制作のスタンスは一貫しているようですね。

ただ、以前は、音を生成するための装置を作るといったインターフェースに拠った考え方が強かった気がします。最近は、技術を使うとしても、みんなが見逃していたような使い方なども考えられるようになってきた気がします。それはスキルアップしたということではなく、石橋(素)さんやライゾマ(ティクス)との活動などを通して、そういう視点が少しずつ持てるようになってきたんだと思います。

共同作業によって新たに発見できることも多そうですね。

そうですね。(アンカーズ)ラボやライゾマのメンバーはもちろん、Zachary LiebermanをはじめとしたoFコミュニティや、Alvaro Cassinelliなどとのコラボの度に色々と発見があります。技術的なところだけではなく、”clear>clever”といったコラボのマナーを学ぶことも多いですね。


作品制作の上で、石橋さんをはじめとするチーム内での役割分担のようなものはありますか?

まず始めの段階では、アイデアをお互い小出しにしつつ、小さなアプリやデバイスを作って実現可能な目標設定はどんなものか探っていく感じです。例えば、「Pa++ern」の初期作業だと、「ミシンをハックしてTシャツ作りましょう!」というところから始まって、石橋さんはDSTと呼ばれる刺繍バイナリデータのフォーマットを解読したり、データを生成するためのクラスを作っていて、僕はライゾマのメンバーとWebを作りつつ、難解グラフィック生成言語の設計や実行環境を作っています。
「particles」の場合だと、レールの構造設計やボールの位置を取得する方法等、技術的にどうやって実現するかは後でテストすることにして、元々作っていた企画をブラッシュアップしてプランだけ先に作りました。今のラボとライゾマのメンバーだったら何とかなるだろうなと(笑)。石橋さんと柳沢(知明)君はプロトタイプを作ってレール上を移動するボールの位置検出方法を探していて、僕は最終的なアウトプットを確認するためにシミュレーターを作りながら、ライゾマ齋藤、坂本君とどういうレールの構造が良いか考えていきました。
また、「Fade out」では、蓄光とUVレーザーで何かやるというところまではすぐに決まったのですが、そこから先は良いアイデアが出ずに何日か色んな実験をしていました。あるタイミングでピンと閃いて、「暗いところから順番に描画していったらグラデーション作れそう」というアイデアを僕が出したら、次の日にはもう石橋さんがそれを完成させていました。それで、「音を付けるので階調の番号と位置情報をこっちのマシンに送ってください」とお願いして音を生成。これでシステムの大枠は大体完成なのですが、そこからは作品として成立させるためにひたすら微調整大会ですね。
この辺の役割分担は、アイデアを出した時点で誰がどういう部分を担当するか大体想像できていますが、基本的に音、映像、ソフトで、ハードやメカ部分は石橋さん、柳沢君、什器設計は齋藤、坂本君をはじめとしたメンバーに完全に任せています。

テクノロジーによって人体に介入していくような作品が多いですが、この辺りへの問題意識というのが常にあるのでしょうか?

人体に興味があるというよりは、筋電センサーや電気刺激装置で何ができるのかと考えているところが大きいですね。もともと自分がDJやバンドをやっていたこともあって、音を鳴らすためのセンサーについて考えることが多かったのかもしれないですね。身体とコンピューターといったテーマで問題意識を持って作っているアーティストとしては、Stelarcがいると思いますが、偉大過ぎてコメントできません(笑)。

真鍋さんの場合は、新しい楽器や演奏法を開発するような作業に近いのかもしれないですね。

そうですね。筋電センサーは、楽器や音楽デバイスの可能性を見つけるための最適なツールだと思っています。例えば、HIFANAとコラボレーションした時も、普段彼らはサンプラーのパッドを叩いて音を出しているのですが、それと同じことを筋電センサーでやろうとすると、反応が早すぎて逆に違和感を感じたりするんですね。筋肉が収縮し始める時のデータを使うと、手が動くよりも先に音が出せるんです。筋電センサーのデータでレーザーをコントロールして、ハイスピードカメラで撮影したことがあるのですが、こちらも手が動く前にレーザーが動き始めていて非常に興味深いですね。こういった実験は、時間解像度の限界に挑戦するような感覚があります。
「NIKE Music Shoe」でHIFANAと一緒にやったときに問題になったのは、曲げセンサーでした。お客さんが遊ぶ装置としては面白いけれど、タイミングがシビアな演奏には向かない。今思えば、レーテンシーの問題というよりは、曲げの閾値を触覚のフィードバックで提示してあげなかったのが原因だったかもしれない。
でも、筋電センサーに関しては、打楽器奏者やミュージシャンと一緒にやることで、まだまだ可能性があると思っています。もちろん、ダンサーに付けてできることもまだまだありますね。

音楽に限らず、映像、ファッション、パフォーマンスなど、さまざまな分野とコラボレーションする機会もますます増えていますね。

僕の作品は、実験としてやっている感覚が強いので、テーマ性というのはそんなに重要ではないのかもしれません。海外の作家と同じイベントに出て話をする機会も多いのですが、そういう時にも、自分の作品には、彼らのようなパーソナルなストーリーのようなものはあまりないなと感じます。だから、作品がサラッとしていて他の媒体に展開しやすいというのはあるかもしれない。「そんなものは作品と呼べない」とか「作品がバラバラだ」言われることもあります。そう言われたらそうなのかなとも思いますが、一方で作品として扱ってくれたり、一連の活動の中に共通項を見つけてくれる方もいるわけです。
 最近はミュージックビデオの仕事が増えているのですが、そこでもつくづく感じるのは、尺のある映像の中でストーリーを考えていくということが、自分はスゴく苦手だということ。だから、監督、映像ディレクターと組んで、その人のアイデアやストーリーを僕が裏方として実現するというやり方は良いと思うんですよね。裏方というと「またまた謙遜して」とか言われることもありますが、そういうつもりで言っているのではなく、裏方として誰かのアイデアを実現するというスタンスは自分に合ってると思うんですよね。ステージ仕事なんかでも、ディレクターのアイデアを実現するためにひたすら手を動かすと言うのは性に合っている感じがします。


例えば、「表情をコピーできるか」というテーマから始まった「Electric Stimulus to Face」などからは、深いテーマ性も読み取れるように思いますが。

このテーマは、照岡正樹さんが制作していた電気刺激装置と筋電センサーがなければ思い浮かんでいなかったと思います。初期衝動は、「センサーを付けて表情を解析して、誰かの顔にコピーできたら面白そうだ」という単純な好奇心です。照岡さんの、感情を伴わないと笑顔は作れないという話が面白くて、「表情のコピーはできるものとできないものがあるのか?」とか、「感情の入ってない作り笑顔だったら、外部からの電気刺激で作れるのか?」とか色んなことを考えさせられました。装置やソフトを開発して実験する作業は好きなんですが、テキストにするという作業は苦手で、この作品でもほとんど書いてないんですよね。
 この作品は、ライブや上映を20都市ぐらいで行いましたが、音楽、メディアアート、映像、ショートフィルムをはじめとしたフェス、その他でもMTVやDiscovery Channelなど、まぁなんでもかんでも呼ばれました。サンパウロでやった時には、新聞に「ジャパニーズ・コメディアン」と書かれていましたね(笑)。また、医療系の研究者から検死の仕事をしている方、そのほかバラエティやクイズ番組など色々なところから連絡をもらいました。
 例えば、僕の作品が医療の現場で使われることがあってもいいだろうし、演出装置になってもいいだろうし、作品のテーマやあり方は、キュレーターやお客さんが考えるという作品のカタチがあってもいいのかなと思っています。解釈の幅が広い方が面白いですよね。

今回のYCAMの展示以外に、何か今後の予定があれば教えてください。

演出・振付家MIKIKOさんの作品のシステム開発のサポートや、石橋さんと作っている新作があり、国内の美術館を巡回する予定です。海外だとバルセロナで行われるOFFFや、Sonar Festivalに出演するほか、Zachary Liebermanと一緒にやっている新しいプロジェクトをセビリア、ブラジルのフェスで発表する予定です。あと、ちょこちょこミュージックビデオの手伝いしているので、この記事が出る頃にはリリースされているものもあるかもしれません。

今後新たにやってみたいと考えていることはありますか?

近々だと、数珠つなぎVJingを、MaxJitterではなくopenFrameworksでやってみたいと思っています。また、2年くらい前に某雑誌でも書いたのですが、アイドルにたくさんセンサーをつけて、ストーキングするサイトみたいなものをやりたいんです(笑)。Webカメラやマイクをつけてしまうと、完全に普通のストーキングになってしまうけど、生体データや活動から取得できるデータをもとに、そのアイドルがいま何をしているのかを妄想できるようなものができないかなと。以前に、眼球の動きと瞬きをツイートし続けるという実験をやったことがあるのですが、そういう生体データ共有型のプロジェクトとして、アイドルのストーカーサイトをやってみたい。こういうアプローチは、医療や環境問題の現場ではすでに行われていますが、違ったベクトルでやってみても良いかなと。プライバシー、コピーライト、セキュリティ問題のギリギリを狙うようなサービスが良いですね。あと、ステージパフォーマンスのサポートを、ライゾマ、アンカーズラボでまたやりたいですね。石橋さんは海の上で何かやりたいと言って、何か企んでます(笑) 。


DICTIONARY

RELATED