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Davit MEURSAULT | ダヴィット モルソー | Fashion Designer

ダヴィット モルソーは、架空の同名デザイナーが洋服をデザインしたらこういうスタイルになるであろう、というコンセプトで2005年にスタートしたファッションブランドだ。「無機質の中に、核となる理由のある服」をテーマに、毎シーズン新しい提案を盛り込みながらクリエイションを続けている。たとえばベーシックに見える一着も、よく見ると細かいディテールにまでこだわっているなど、派手さはないが、特殊な加工や縫製などのテクニックを駆使した服作りが特徴だ。2010-11年秋冬シーズンにはレディスラインの「ダヴィット モルソー ファム」の立ち上げと共にランウェイデビューも果たし、さらなる活躍の場を広げている。今回、架空のデザイナー「ダヴィット モルソー」の裏に隠れている一人のデザイナーに、ブランドのコンセプトからクリエイションについてまで話を聞いた。

Text:安藤沙羅


まず「ダヴィット モルソー」のスタイルについて教えてください。何かシグニチャーとなるものはありますか?

どんな人間にも欠点があるように、洋服にも間違いや欠点を入れたかったんです。例えば、ユニクロの服を10年間着た人たちが集まれば、それはもはやユニクロの服ではなくなりますよね。人によっては穴が開いてしまうかもしれない。その時点で着ない人もいれば、それを個性として受け入れて着続ける人もいる。ものの見方には良いことも悪いこともあって、最終的には良いことに変わるということを伝えたいと思っています。そのためにはどういうことができるかなという実験ですね。ボタンやベルトループが裏返しについていたり、カットソーに穴が開いていたり。欠点も個性に変われば受け入れられるのではないかというメッセージです。

発表方法を展示会からショー形式に変えたきっかけは?

もう少し色んな人に知ってもらうきっかけがほしかったんです。架空のデザイナーということもありますし。型数も増えたし、新しい風を吹き込みたいという思いがあり、ショーで見せていくことにしました。今後ずっと(ショーを)続けていくかはまだわかりません。本来、服=着心地であるべきなのに、ショーをすることで”見てくれ”ばかりを重視しそうになるのが怖い、ということもあって。数え切れないほどのブランドであふれる世の中だし、正直誰でも洋服を作れちゃう時代だと思うんです。工場の人たちが助けてくれるし、極端にいえばボタンとネームを変えるだけでそのブランドになってしまいますから。でも、ダヴィット モルソーはそういうブランドにはなりたくないんです。もう少し着ている人の内面も見てもらえたり、性格までも好きになってもらえるような服を作ることが目標ですね。

そのためにどのような工夫をしているのですか?

「どうして作ったのですか?」と聞かれた時に答えられる服作りですね。これはこういう理由でこうしましたと、一点一点ちゃんと答えられること、それが僕の責任だと思っています。それが答えられないなら作らないほうがいい。買ってくれた人が「そうか、そういう服なんだ」と安心して着られる服であることが重要だと思っています。

2011 A/W Collection

2011 A/W Collection

そもそも、なぜ架空のデザイナーを作り出したのですか?

僕自身デザイナーなので批判するつもりはありませんが、「デザイナーって実はそんなに大したことをしているわけではないのかも」と疑問に思うことが多かったんです。実際に僕も周りのスタッフに支えられているところが大きいですしね。エンドユーザーが着てくれることを考えていないようなデザイナーにはなりたくない。結局誰がデザイナーかなんていうことは問題ではないのかもしれないなと考えていたところに、ダヴィット モルソーという架空の人物を思いついたんです。いろいろと細かく設定があるのですが、人生のひと山を越えてきたダヴィットは、フランスに移民したアルジェリア人。父はバイオリン職人のアラン、母はコレット。何かクリエイティブなもの作りをしようと考えた結果、シンプルで日常になじむ服をデザインしようとブランドを始めたというわけです。

架空のデザイナーというひとつのフィルターが入ることで、服作りの方法や考え方は変わりましたか?

そうですね、まったく違う自分になれるので。ダヴィットは大変な人生を送ってきたので、それが自分に起きたことと想定するのは面白いですね。だから純粋に自分から出てくるクリエイションとは少し違うかもしれません。極端な話ですが、たとえばこの架空のフィルターがあると、極悪人にすらなることができる。僕の中に秘められた側面を出すことで、意外と純粋にもの作りができたりしますね。

インスピレーション源はどんなところにあるのですか?

タイトルは言えないのですが、常に戻ってくる一冊の小説があるんです。殺人や死刑などがキーワードにあるので暗くてヘビーな話なのですが、文章の一行一行の中に色んなジャブがあって、人間らしくて僕はスゴく爽快な気持ちになるんです。それ以外のインスピレーションソースは、日常から拾うことが多いですね。

2011S/S Collection

2011S/S Collection

2011年春夏シーズンのテーマを教えてください。

「Another View?」と題して、人も正面から見るのと横から見るので表情が違うように、物事の側面を表現したコレクションです。意地悪だと思っていた人に優しくされると「優しいな」と感じたり、逆にいつもは優しい人にちょっと意地悪をされると、「なんて意地悪な人なんだ」と思ってしまったり、どんなことにも角度を変えると違う見え方がありますよね。そういうことを踏まえて、いろんな方向から見てみよう、というようなことを裏テーマにしました。リバーシブルだったり、アシンメトリーだったり、いろんな見え方がある服作りを目指しました。

では、今シーズン(2011-12年秋冬)はどのような服が揃ったのでしょうか?

こんな世の中なので、空に飛んで行きたい気分になったんです。地上は歩いていたら車も飛び出してくるし、色んなものにぶつかるけれど、空に飛んでいけたら自由だったりするかなと思って。別に日常に不自由を感じているわけではありませんが(笑)、ゴチャゴチャしすぎている気がしていたんです。ぼーっとしたり考えたりする時に、どこでそれをやったら雑音がないかなと考えていたら、空の真ん中なんかがいいなと。ダヴィット モルソーは、ミリタリーテイストがベースにあるので、空軍のアイテムを取り入れてみました。ヘリコプターの柄など、空にあるものもモチーフに使っています。


ダヴィット モルソーの基本スタイルであるミリタリーウエアの魅力を教えてください。

ミリタリーウエアは機能的でありながら個性もある。同じアイテムでも表情が違ったり、その中でキラッと輝くテクニックがあったりして、そういった個性を見つけるのが面白いんです。裏の始末がカッコ良いアイテムがあってもサイズが合わないから、と他で買おうとすると、また始末が違ったりするんですよ。服としてミリタリーウエアを見ていると、僕はイタリア軍が一番洒落ていると思いますね。陸軍も海軍も、ひとつひとつ全部無駄に洒落てるんですよ。アメリカ軍は無骨で大味ですね。

デザインをする時は、ミリタリーテイストをどのように取り入れていますか?

違う軍や時代の機能をミックスすることが多いですね。調べてもわからない機能がたくさんあって面白いんですよ。軍隊の人もわからなかったり、意外と意味がなかったりもするんです。そういう作業が楽しいですね。そういうことを考える時間がもっとあればいいのですが。

2009 AW Collection

2009 AW Collection

期中展を含めて年に4回もコレクションがあるとそうはいきませんよね。

年に4回もテーマを考えなければいけないので。でも、たとえば人生のテーマを掲げたとしたら、そんなにコロコロは変わりませんよね(笑)。敬うことも年に4回もないでしょうし。それが3年続いたら12個ぐらい何かしらに感情移入しなきゃいけないということになる。そこがジレンマですよね。何かにオマージュを捧げるコレクションというのが、その次のシーズンになったら違う人へのオマージュになってしまうような。誰かにオマージュを捧げることって、一生引きずっちゃうぐらいの気持ちがなければできないと思うんですよ。昨日まで赤が好きだったのが、数ヶ月後には青ということは僕にはないですね。きっと1年間ぐらいマイブームとして赤が好きだったりすると思います。メンズだったら特に、ネイビーが好きだったらずっとネイビーが好きで、気づけばネイビーがスゴく似合う人間になってしまっていたりするでしょう? それってワンシーズンじゃ築き上げられないと思うんです。でも洋服が好きだし、作ることも好きなので、そこ以外で僕にしかできないことがあると信じているから続けていられるんですけれど。

では、毎回テーマをひねり出している感じですか?

僕がテーマにしたいものって、意外とその辺に転がっていることが多いなと気づいたんです。長年培ってきて大切にしていることではなくて、日常的に道端に落ちているようなものですね。だから割とスムーズですよ。そして、そこから服に落とし込むとなると早いです。逆算型なので、テーマを決めたらモデルがランウェイを歩いているシーンや会場を思い浮かべるところから始めて、服、生地、プリントを決めていくという風に進めています。

2011S/S Collection

2011S/S Collection

でも、ショーとなると、スタイリストや演出、ヘアメイクなどいろいろな方たちの手が加わりますよね。

色んなブレーンを入れ込むということですよね。まるで自分が可愛がってきた子供を、最後の最後で違う人たちの手によってその子のカラーを決められてしまうような。デザイナーの半年間の作業を知らない人たちが最後にまとめ上げてしまうことに、ショーを始めた当初は動揺することもありました。もともと一人で、しかも逆算方式でやってきていたので。僕の中で完成されている画があって、そこに向かって作っているのにもかかわらず、最終的に崩されてしまうわけですから。たとえばデザイン画もコーディネイトして描いていて、パタンナーともそのつもりで打ち合わせているのに、ショーのために参加したメンバーがまったく違うものを提案してきたりする。でも、僕が知らなかった感覚や思いつかなかったアイデアもあるので、そこが新鮮なんですよ。前回は長瀬(哲朗)さんにショーのスタイリングをお願いしたのですが、新たな発見が多くて面白かったですね。

デザイナーの思いも汲みつつ客観的に服を見ることは、もしかしたら背景を知らないからこそできることなのかもしれませんね。

そう思います。デザイナーは単品で作るのがいいんでしょうね。からあげ、ハンバーグ、ソーセージ、ポテトサラダ、食べたいものすべて作ったらそれらを手放す。するとそれを弁当箱にバランスよくおいしそうに並べてくれる。だから、デザイナーは弁当箱の状態を想像しないほうがいいのかもしれません。でも、きっとデザイナーというのは「こうなったらカッコ良いだろうな」と、完成された弁当箱を想像してニヤッと笑ったりしているものだと思うんですよ(笑)。その画を最後まで大事に持っていると、「崩された!」と衝撃を受けてしまうわけで。プロ対プロの仕事なので、たとえばデザイナーが「このコーディネイトでいきたい」と見せてきたら、スタイリストならそれはあえて外しますよね。プロとして、それ以上のものを見せてやろうとがんばるはずですから。僕が経験したショーではこれは思いつかないな、という新たな発見が楽しかったし、勉強にもなりました。でも、もし「ああやっぱり自分でやればよかった」と思うならば、自分の感覚で勝負した方がいいでしょうね。さっきも言いましたが、ショーだけがすべてではないと思っているので。どこまでブランドのイメージアップを図れるかというところでのひとつの表現方法ですね。大きな展示会場で、服を間近で見られるような空間にモデルがいるインスタレーションなんかもきっと面白いと思うんです。そういった見せ方のバリエーションも考えていきたいと思っています。

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