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QOSMO | コズモ | Design Engineering Office

去る2月27日、STUDIO COASTで開催されたイベント「I’ll Be Your Mirror」にトップバッターとして登場したボアダムスのライブは、異様な熱気と大きな驚きに包まれていた。いま話題のキネクトを用い、ステージ上のEYE氏のジェスチャによってドラム音が制御されるというシステムを導入したそのパフォーマンスは、ライブや音楽体験の未来を観客に感じさせるにじゅうぶんのものだった。このシステムを開発したのは、徳井直生澤井妙治アレキザンダー・リーダーという異なるバックグラウンドを持つ3名のクリエイターが集い、iPhoneアプリ開発から企業広告、研究プロジェクトまで、幅広い仕事を展開しているコズモだ。人間とテクノロジーの関係性に着目し、新たな価値観やライフスタイルを創り出そうとする彼らを取材した。

Text:原田優輝


3人の出会いについて教えてください。

徳井(以下T):僕は学生時代からコンピュータサイエンスを専攻し、人工知能の研究していました。もともと音楽も好きで趣味でやっていたので、人工知能の技術を作曲に応用するようなことを研究としてやっていて、その頃に澤井と出会いました。

澤井(以下S):僕はもともとギターを弾いたりしていたのですが、とあるインタビューを読んだことがきっかけで、自分にもできるんじゃないかと思い、パソコンを使って音楽を作るようになりました。徳井とは、MAX/MSPという音や映像で使うソフトのコミュニティで知り合いました。徳井と知り合ってからは、彼に電話すれば5分でほしいものを作ってくれるので、もう自分で難しいプログラムをやるのはやめようと(笑)。

T:僕はコンピュータ、プログラミング側から音楽にアプローチしていて、逆に澤井は音楽の方からテクノロジーに接していたので、バランスもちょうど良かったんです。僕は大学卒業後、ヨーロッパのコンピュータサイエンスの研究所に留学して、戻ってからは国内の研究所で研究を続けていたのですが、2009年にiPhoneなどが出てきて、個人でもそれなりに仕事ができるんじゃないかという感触が得られたので、澤井ともう一名に声をかけて、コズモをスタートしたんです。

S:その時に徳井に言われたのは、これまではプログラミングやアプリケーションはデスクトップ上で使うものだったけど、これからはそういうものを色々な環境に合わせて作っていけるんじゃないかということでした。


T:コズモを設立してすぐに、アメリカのMITメディアラボに行く機会があったんです。その時に、せっかくだからニューヨークに行って面白い人に会ってこようということになったのですが、別々の人からそれぞれアレックスの名前が出てきて。当時彼はニューヨーク大学でアートとテクノロジーの研究をしていたんです。

アレックス(以下A):私は2000年頃から東京の会社で、LINUX関連の仕事をしていたのですが、その後ニューヨークに留学で渡り、そこでふたりに出会いました。日本に戻ってから、自分で会社を作るかどうか少し迷ったのですが、ふたりに声をかけられて、力を合わせた方が色々できるだろうと思い、一緒にやることになりました。

T:僕はプログラミング、澤井は音、アレックスはデバイスに強いので、バランス的にもこの3人でやれるといいかなと思ったんです。


コズモ立ち上げ当初はどのようなビジョンがあったのですか?

T:コズモというネーミングは「Cosmos」という単語から来ています。「Cosmos」には、宇宙という意味があるし、花としての意味もある。例えば、iPhoneアプリなどは小さなデバイスの上で動くものですが、それによって世界に想像力を羽ばたかせることも思うんです。コズモを始めるにあたり、そういう思いがありました。

A:私は、ニューヨークに留学していた頃から、これからのパソコンは「ウェアラブル」なものになると考えるようになりました。iPhoneもそうですが、服の中や空間にテクノロジーが入っていくことで世の中が変わっていくんじゃないかと。そういうことを自分たちもやっていけたらいいなと考えていました。

S:最初はオリジナルの開発をメインでやっていこうと考えてました。でも、ちょうど立ち上げ時に、あるキャンペーンサイトのサウンド周りの生成システムのディレクションをやったのですが、頭の切れる人たちと一緒に、アイデアを現実に落とし込んでいく作業がとても面白かったんです。その時に広告のクリエイティブの面白さも実感し、それからは広告の仕事や研究プロジェクトなどもするようになりました。

T:研究所にいた頃は、お金にすることを考えずやっていたところがあって、それはそれで面白いんですけど、現実と乖離している感覚もあったんです。でも、会社としてやっていくからには、現実に落としこんでいくというところをしっかりやって、なるべく広い人に届けていきたいという思いがあるので、受託の仕事とオリジナルのプロジェクトをバランス良くやっていければいいなと思っています。

S:僕も音楽をやっていくなかで、ギターから機材、機材からPCという方向に傾いていったのですが、次第に謎な方向に進んでいって。ノイズをやるにしても、どれだけエグイことをやれるかという方向に行くのですが、「エクストリーム」というものを履き違えているんじゃないかという気がしてきて、徐々に疲れてきたんです。一方で、ひとつのコンセプトに基づいて、携帯電話やWebなどを通して音と関わっていくというアプローチはしっくりきたんです。それによって色んな人が楽しめるようなものを作っていけないかなと。

T:10年ほど前に2年くらいかけて、「SONASPHERE」という3D空間の中でオブジェクトを組み合わせて音を作るというソフトを作ったんです。マニアックな世界では結構ウケたのですが、その後iPhoneが出てきて、澤井のアイデアをもとに「9の1」というアプリを2日間くらいで作ったら、比べものにならないくらいスゴい勢いでダウンロードされて。ゲームの効果音が、現実世界で自分がジャンプする時にも鳴るというアプリなのですが、テレビなどでも紹介されて、多くの人に触れてもらえたんです。「SONASPHERE」でやっていた狭い世界とは違う何かがそこにはあって、その辺のバランスをもっと探っていきたいと改めて思えた象徴的な出来事でしたね。

先日開催されたイベント「I’ll Be Your Mirror」でのボアダムスのライブについても聞かせてください。

S:もともと8年くらい前から、ボアダムスのEYEさんと、加速度センサーを入れた光るボールを振って音を鳴らすという実験はしていたんです。当時から、本当は手に何も持たずにエフェクトがかけられたりしたらいいのにという話をしていて、それがキネクトによってできるようになったというのが最初のきっかけになりました。

T:キネクトが出てきた時に、これで何かできそうだねという話はしていたんです。そこでボアダムスと一緒に何かできたらいいねという話も出て、社内で実験などは少ししていました。それをEYEさんに話したら乗り気だったので、そこから具体的に作り込んでいくことになりました。

S:まず、キネクトを使っているということがお客さんにわからないようにやろうというのが最初にありました。最近のボアダムスのライブは、「ドラム」「サークル」というのがコアになっているので、それをテクノロジーで拡張するというイメージでした。具体的には、ドラマーひとりずつに音を割り振って、ドラマーにEYEさんが手をかざすと、そのドラム音だけにエフェクトがかかるというような仕組みでやってみることになりました。

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T:以前に僕がライブをしていた7,8年前というのは、ラップトップのライブが一般的になってきた時期だったのですが、ラップトップに向かって演奏していても、お客さんと対話している感じがないんですよね。それがイヤで、身体の動きを生かしたライブというのを模索したりしていました。今回のライブも、その流れの進化系なんです。

S:実際に実験をしてみると、EYEさんのジェスチャーに反応してエフェクトがかかっているというのが、端から見た時にわかりづらかったので、視覚的な要素として、急遽光を導入することになりました。その光も本番ではリハーサル通りに反応しなかったり、初めてのセットで時間のない中進めていたこともあり、色々大変でした。でも、ライブ後にメンバーからも新しいアイデアが出たし、キネクトを想定した曲を作ることにもなりそうなので、今後の可能性はスゴく感じましたね。

キネクトやiPhoneのような新しい技術やデバイスに対して、コズモとしてはどのようなスタンスで接していますか?

T:僕たちはひねくれ者なので、みんなが使わないようなパンクな使い方を考えることが多いですね。

S:個人的には、ホントにギークなものではなく、製品化されているくらいのものが好きです。キネクトにしても、これまでも同様の技術はあったけど、それを使うのに相当なお金がかかったり、単純に使いにくかったりという問題があったんです。でも、キネクトは世界中のギークが一斉に使うようになった。僕たちの目的は、キネクトをハックすることではなく、誰かがハックしたものがあれば、それをありがたく使わせてもらうというスタンスですね。

T:一歩引いて見ているところがあると思います。コズモを始める時にも話していたのですが、できるだけコンピュータを使わないでいいようなコンピュータの使い方ができるといいなと思っているんです。例えば、iPhoneなど新しいものが出てきた時に、一生懸命小さいスクリーンと向き合って使うというよりは、iPhoneを持って外に出て、それ自体をあまり見なくても自然に使えるようなものが作れたらなと。

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A:新しい技術が出た時に、それありきで何かをやるというのは、メディアアートの世界などでは多いけど、自分たちの場合は、アイデアやそれを実現したいという思いが先にあって、そこから技術を使って作り込んでいくというスタンスだと思います。個人的にも、まずコミュニケーションがベースにあって、どうすれば人間同士がもっと近づけるようになるかを考えて、場合によってはデバイスから作ってしまうくらいがいいなと。それができるのがうちの強みだとも思っています。

T:僕らは3人ともバックグラウンドがバラバラで、それぞれがひと通りのことはできるけど、商品に落とし込んでいくまでのマンパワーはない。だから、自分たちは”飛び道具”なんです。とにかくプロトタイプを色々作りながら、企業から何か話があったときなどに、それを提案していくというようなことが多いですね。

クライアントワークとオリジナルのプロジェクトの関係性はどのように考えていますか?

T:オリジナルで作るものに関しては、売れるものを作りたいという意識はそんなにありません。むしろ自分たちの思い入れ、思い込みで作っていきたい。だからこそ、バランスを取るためにも受注の仕事を並行してやっているという感じですね。

A:ただ昔に比べると、世界は広がっているように感じます。iPhoneアプリなどでも、面白いものさえ作れれば、国内外の多くの人達と関係が持てるし、色んな文化に影響を与えることができる。それはスゴク面白いし、どんどん発信したくなりますね。

S:いまはクライアントワークをやりながら、誰にも理解されないような個人的なプロジェクトをすることもできる。ひとつの方向のことだけではなく、色々なものを並行してやっていても不自然じゃない時代になっていると思います。例えば、わけのわからないブレイクコアの音楽を作っているヤツが、CMの仕事もしていたりする。デジタルだからこそ、そういう環境になっているんだと思います。

最近手がけた仕事についても教えてください。

T:iPhoneを使った新しいディスプレイシステムを開発しているところです。複数のiPhoneを特定のテーブルの上に置くと、ひとつの大きなディスプレイになり、絵や映像が見られるというシステムです。

A:今は研究用にプロトタイプを作っている段階ですが、その延長でみんなが使えるような形にしていけないかを検討しているところです。

T:SalyuさんのiPhoneアプリのミュージックビデオも制作しました。iPhoneのカメラを通した映像が楽曲と共に変化していく作品です。

A:あと、ホテルなどのインタラクティブな照明演出もやっていけたらと考えています。いまはまだ建築の世界ではそういうテクノロジーが普及していないので、どんどん提案しながら仕事の範囲を広げていけたらいいなと思っています。

S:それと、先の見えない不安の中にある震災後の日本で、自粛や節電などによって縮んでしまいがちな気持ちを解放し、可視化するためのツールとして、「TinyRiot」というiPhoneアプリを千房けん輔(エキソニモ)、林智彦、川村真司比嘉了たちと企画・制作しています。こちらは、6月末から7月頭頃に公開予定です。
 
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最後に、今後やっていきたいことがあれば教えてください。

S:去年、電通さんと日本ユニシスさんの研究プロジェクトの一環として、「Poi bot」というボットを作るお手伝いをしたんです。「Poi bot」のTwitterをフォローすると、そのユーザーの普段の発言を解析して、その人っぽいつぶやきをボットが生成してくれるんです。これを作った時に思ったのですが、例えば、僕が1年前に死んでいたとして、その後もこのボットが僕が言いそうなことをつぶやき続けていたとしたら、周りの人はどう感じるんだろうとか、奥田民生の歌詞50曲を解析して、それにもとづいてボットが作った歌詞を、奥田民生本人に歌ってもらったら、それに人はありがたみを感じるのかとか、そういうところにいまスゴく興味があるんです。

T:ネットワーク上には、僕らの生活のデータがどんどん溜まっていて、プライバシーの感覚も変わってきていますよね。それをボットというキャッチーな形で問題提起できたらという思いがありました。もともと人間とテクノロジーやコンピュータの関係性に興味があるんです。それが「Poi bot」のようなWebサービスになる場合もあるし、ライブパフォーマンスになることもあるのですが、作品を通して人間とテクノロジーやインターネットの関係性に問題提起をしていくというのが、3人が共通してやっていきたいと考えているところなんです。

A:プロトタイプとして今まで作ったものの製品化もしていきたいですね。自分たちでまずぶつけていくのか、別の会社を通すのかはこれからの課題ですが、なるべく人の手に届きやすい形にして、ソフトとハードの両面からみなさんができることを拡張していきたいと思っています。

 

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