
RYO HIRANO | ひらのりょう | Animator
妖怪やお化け、人間と動物のハイブリッドなど、怪奇的とも言えるテーマやモチーフを、シンプルなタッチによる愛らしいキャラクターや、ボーイ・ミーツ・ガール的なストーリー展開とともに描く新鋭アニメーション作家、ひらのりょう。民間伝承などをインスピレーションソースに、自らの思想や日々の生活などを反映させながら、映画的カタルシスを持ち併せた独自の物語世界を創り出す彼に、これまでに手がけた作品を紹介してもらいながら、創作の源泉やバックグラウンドなどを探る。
Text:原田優輝
映像制作を始めるようになったきっかけを教えてください。
はじめて映像を作ったのは大学1年生の夏休みです。多摩美の情報デザイン学科というところにいて、そこはひとつの分野にとらわれずに、幅広く色んなことをやる学科だったのですが、僕は予備校にも通わずに運良く入れたので、基礎が何もない状態で…。でも、アニメーションなら一枚絵としてのクオリティをごまかせるんじゃないかと思って、試しに作ってみたのがきっかけです。学校の課題には、写真やプログラミングなど色々なものがあったのですが、どれもあまり上手くいかず、アニメーションなら根性次第でなんとかなるじゃないかなと思ったんです(笑)。
アニメーション制作のノウハウは大学で学ぶことができたのですか?
課題とかはちょくちょくあって、簡単な動画ソフトの使い方なども教えてもらえました。ただ、自分としては「とにかく絵を並べれば動く」くらいの感じで考えていたところがありました(笑)。最初に作ったのは「udara udara」という作品です。とにかく何か作らないとダメだと思い、音も自作して完成させたアニメーションです。その後、大学2年の終わりに、「蟻人間物語」というアニメーションを作りました。これは学校の課題で、生き物をテーマにした作品というお題があったのですが、僕はもともとアリが好きだったので、アリの生態を調べて、それをもとに作っていきました。

「蟻人間物語」
この作品のテーマを教えてください。
論文などを調べてみると、蟻があれだけ働いたり、巣を守ったりするのは、女王アリに対する愛情からではなく、DNAを残していくための行動だというようなことが書いてあったんですね。そういう動物の社会性に興味を持って、アリを人間に置き換えた作品を作ってみました。今見てみると、作品自体はそんなに面白くないと思うんですけど(笑)、大量に描いた絵が7分という尺のアニメーションになったことには達成感がありました。その後にオリジナル作品として作ったのが、「深夜動物園」という作品です。この作品では、自分が見た動物園に忍び込むという夢をもとに、人間と動物の境界をテーマにしました。
「蟻人間物語」にも共通することだと思いますが、人間と他の生物の融合というのがひとつのテーマとしてあるのですか?
「深夜動物園」を作っていた時は、ちょうど日野日出志さんの怪奇漫画を読み始めた頃だったのですが、そういうものからの影響が強いのかもしれません。もともと怪奇的なものが好きというのが根本にはありますね。水木しげるさんとかガロ系の作家、他では、ロシアのアニメーション作家、イゴール・コヴァリョフなども好きです。たとえ肉体が変化したとしても、根本的に変わらないものに興味があるんだと思います。例えばそのなかには、Boy Meets Girl的な恋愛の要素もあって、「深夜動物園」は、肉体が変化しても「好きなものは好きだ!」というような気持ちを表現したロマンチックな作品なんです。その辺のテーマは、この作品以降もっと追求していきたいなと思うようになりました。

「深夜動物園」
怪奇的なものを志向しながらも、ひらのさんの作品のタッチは、必ずしもおどろおどろしいものではないですよね。
そうですね。スゴくグロイものを作りたいという思いはあるんです。でも、アニメーションで描き込むのが大変だからということもあり、あまりやりすぎない感じで描いているのですが、結果的になぜか可愛らしくなってしまうところがあるんですよね(笑)。
ストーリーの作り方についてもお聞きしたいのですが、毎回事前にシナリオなどは書いたりするのですか?
最初と最後のシーンだけ決めておいて、あとは作りながらつなげていくということが多いかもしれないですね。そこに制作期間中に自分の生活に起きたことなんかが反映されていきます。例えば、「河童の腕」という作品は、以前に河童の研究本に書いてあった河童の腕の話をもとに、落書きのような1ページのマンガを描いたことがあって、それをもとにストーリーを広げていこうと思って作り始めたのですが、その最中に僕の友人が亡くなってしまったんです。それを期に、それまでやろうとしていたことが大きく変わっていきました。純粋に河童を描きたいというところからスタートしたのですが、私生活に起こったことがきっかけで、自分の生活をもっと密接に作品につなげていこうと思うようになったんです。作品の中では、僕が高校時代にニュージーランドに留学していたときに母親が送ってくれた手紙をそのまま使ったりもしています。
「河童の腕」
「ichigwankoku」
お話を聞いていると、過去の研究書などの文献が、作品のインスピレーションソースになることが多いようですね。
そうですね。例えば、「ichigwankoku」という作品は、古典落語に「一眼国」という一つ目お化けを捕まえにいく男の話があるのですが、その後日談をイメージして作っています。このときも事前に妖怪研究本などで、一つ目お化けや三つ目お化けなどについて調べましたね。また、この作品は、写真を使ったアニメーションになっているのですが、これを期にコラージュ的な作品も作るようになりました。
実写で作品を作りたいと思うことはありますか?
いつか撮りたいとは思っています。実は、個人的には、アニメーションよりもドキュメンタリーとかを見る方が好だったりするんです。でも、自分が作っているような作品の題材は、実写だとなかなか厳しいと思うんですよね(笑)。アニメーションだと、自分で好きなように絵をコントロールできるし、話がブッ飛んでいても実写よりは受け入れてもらえるところがあると思うんです。自分が出したいと思うものを違和感なく自分のドキュメンタリーとして表現できる媒体が、今のところはアニメーションなんです。

Omodaka「ひえつき節」Music Video
オリジナル作品とは別に、クライアントワークなどもやられているのですか?
先日、スペースシャワーTVのステーションIDを作りました。あと、ちょうどいまOMODAKAさんの「ひえつき節」という曲のミュージックビデオを作っている最中です。ミュージックビデオでは、以前に七尾旅人さんの「検索少年」の映像を作って、ミュージックビデオコンテストに出したこともあります。これは友達と一緒にシナリオを考えて、僕がビデオコンテを作り、それを実写で撮影しました。
オリジナル作品では、先日「イメージフォーラム・フェスティバル」で上映された「ホリデイ」が最新作になるのですか?
そうですね。今まで作ったアニメーションの中では一番長い15分くらいの作品になっています。以前に半分だけ作っていたものを、去年の夏に卒業制作のために完成させました。テーマは、これまでと同じように恋愛や身体なのですが、自分の中では、夏休みの思い出の集大成みたいな感じで作りました。男と女とイモリが出てくる作品なのですが、これを作っているときに、ワイドショーのニュースで、亡くなってしまった韓国スター、パク・ヨンハのファンのおばちゃんが、その日に降っていた雨を「パク・ヨンハの雨なんです」と号泣しながら言っていて、それがスゴく印象に残ったんです。それをきっかけに、死んだ人が循環して雨になるということが作品のテーマになりました。ストーリー自体は、失踪した女の子を助けるためにがんばる男の話です。

「ホリデイ」
今後はどのようなスタンスで活動していこうと考えていますか?
作品は色々作っていきたいと思っているのですが、オリジナル作品だけだと生活していくのも難しいですし、ずっとひとりでやっていくことに限界があるような気もしています。ただ、だからといって、どこかに就職してやっていくのがいいのかもわからないし、まだこの後のことは全然固まっていないというのが正直なところですね。とにかく幸せになりたいとは思っているんですけど(笑)。
最後に、今後の予定などについて教えてください。
7月14日から国分寺のアートスペース、mograg garageで個展をやる予定です。展覧会でただ映像だけを見せても面白くないと思うので、音や原画なども混ぜていこうと考えています。アニメーションの中に自分の生活を結びつけていこうと思いながら日々作品を作っているので、今回も、自分自身とアニメーションをつなげられるような展示にできたらと思っています。

Space Shower TV「CANVAS」





