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chloma | クロマ | Fashion Designer

「キャラクター」という存在が、膨大なリソースを持つある種のメディアとして機能することは、いまや当然のようになってしまったが、それをより洗練されたコードとしてモードに昇華しているブランドが、デザイナーの鈴木淳哉とデザイナー/パタンナーの佐久間麗子による「chloma」だ。昨今カオスラウンジとのコラボレーションでも注目を集め、今期より「JUNYASUZUKI」からブランド名を改めた彼らに話を聞いた。

Text:松井友里

まず、ファッションに興味を持ち始めたきっかけから教えてください。

鈴木:今美容師をやっている兄が、ストリートファッション好きで、その影響を大きく受けました。その後大学に入って、コミュニケーションがうまいわけでもなく、先頭に立つタイプでもなかった自分が、これまでとは違う1000人や1万人という規模の中での存在意義を考えた末に、ファッションというものにのめり込んでいきました。

佐久間:私は、昔原宿のセントラルアパートにあったジプシーアイなどのお店に服を作って卸したりしていた母の影響が強くて、幼い頃からファッションに興味を持ち、服を着ることを楽しんでいました。高校生の頃にはファッションの勉強を始めて、そこからは着ることよりも作ることに専念するようになりました。

鈴木さんは留学もされていましたよね?

鈴木:専門学校の2年生の頃にコンテストで賞をいただいて、その副賞でパリのオートクチュール組合学校というところに入学しました。いわゆる本場のファッションの現場の動き方や空気など、異国の地での生活で学ぶところは大きかったのですが、残念ながら学校のレベルはあまり高くなくて。その頃日本のファッション界で活躍している人というと、ミキオサカベの坂部三樹郎さんや、リトゥンアフターワーズの山縣良和さんなど、いわゆる「ヨーロッパ組」の人たちで、当然憧れを持っていたので、やっぱりそういう人たちのようになるには異国での成功というのが必須条件なのかなと思っていたんです。でもそれが達成できず、ある意味傷心の帰国だったんです。


そこから日本に戻ってすぐにブランドを立ち上げたのですか?

鈴木:留学する前からCANDYというお店で、留学のきっかけにもなった服を展示したりしていて、それ以来付き合いがあったので、帰国してから自分が作った服を置かせてもらうことになり、そこからスタートしていきました。

佐久間:私は鈴木がパリに行っている間、アパレルの流れを勉強したいと思い、就職して働いていました。鈴木が戻ってきて一緒に服を作るようになってからは、会社と並行して活動していましたが、だんだんと活動の幅も広がり、もっと力を注ぎたいという想いから会社を辞めました。

今期からブランド名を変えたのはなぜですか?

鈴木:「JUNYASUZUKI」というブランドスタート時は僕ひとりでしたが、佐久間と共に活動するようになり、今では彼女の存在がブランドを大きく支えているため、今後も2人でやっていこう、という意味を込めてブランド名を変えました。

制作における2人の役割分担を教えてください。

鈴木:僕がイメージを提案して、佐久間がそれを形にするというのが大まかな役割分担ですね。

佐久間:私は、鈴木の投げた言葉やイメージをどう変換して服に落とし込んでいくかを考え、具体的なアイデアを出しています。立体造形やディテールなどを作り、鈴木とキャッチボールをしながらデザインを詰め、最終的なパターンを仕上げます。また、鈴木が去年のあるインタビューでは「人が着ることをあまり考えていない」と話していたのですが、今回のコレクションからは、リアルに人に着てもらうことを意識するようになり、女性に着てほしいという思いも強くなっていたため、女の私自身が日常的に着るなら、という視点も取り入れるようになりました。

その変化には何か理由があるのですか?

鈴木:一番大きかったのが、ツイッターを通して様々な「生きている人間」の存在を認識できるようになったということですね。それまではいわゆる「ファッション」や「ファッション業界」と呼ばれる抽象的なものに対してアタックしていたんです。それはなぜかと言うと、それまでは現実の自分の空間の周りにいる人を認識できていなかったところがあったからで。帰国してブランドを始めた頃が、段々ツイッターの需要が伸びてきていた時期で、僕も帰国する前後くらいからアカウントを取ってツイートしていたのですが、家にこもって制作していることが多いので、ある意味そこが社会活動というか、「人を認識できる場」みたいになっていたんです。


カオスラウンジとのコラボレーションもツイッターがきっかけと伺いましたが。

鈴木:梅ラボさんが、「自分の作品の前でコスプレイヤーのうしじまいい肉さんが撮影してくれたらいいな」みたいなことをポロっとツイートした時に、それまで梅ラボさんに興味はありつつも全然面識はなかったんですけど、「その際の衣装を是非やりたいです」ってリプライを飛ばしたんです。そうしたらちょうどその時期に渋谷でやっていたJUNYASUZUKIの展示会を見に来てくれて、そこから一緒にやることになりました。カオスラウンジが頭角を表してとても勢いに乗っていた時期で、ファッションやアート関係の人たちが一気に注目してくれて、ツイッタ―のタイムライン上でも異なる分野がどんどんミックスされていく過程を体感できました。それまではいわゆるファッションの友達しかいなかったわけですけど、東京に住んでいる人のリアルな姿と顔を見る機会にもなったし、ファッション以外の生のカルチャーが見え始めた時期でした。

それまでアートの分野には興味があったのですか?

鈴木:カッコ良い画像があれば集めたりしていたくらいで、いわゆる現代アートの文脈みたいなものには明るくなかったですね。ただ、カオスラウンジはキャラクターを媒介にしたアートをやっているけれど、僕もキャラクターに対する執念のようなものはあります。とりあえず小学校1、2年生の頃は「けろけろけろっぴ」がマジで大好きでした。「幽☆遊☆白書」みたいな頭身の高いキャラクターの漫画も好きではあったけれど、やっぱり一番好きなのは「マキバオー」とか「ラッキーマン」とか「SDガンダム」で、小学生のときは思考のほとんどをキャラクターに捧げていた記憶があります。今回のコレクションもそういったデフォルメされたキャラクターがシルエットのモチーフになっています。



今シーズン(11-12年秋冬)のコレクションのコンセプトなどを教えてください。

鈴木:今回イメージしていたのは、最近出たiPhoneアプリ用のファイナルファンタジー3(以下FF3)のキャラクターです。大人から子供までとても多くの人が遊んでいる国民的RPGなのに、キャラクターがスゴく子供じみていることに、遊びながら結構ビックリしたんです。日本で使われているアバターやキャラクターって、このFF3みたいにスゴくデフォルメされているものが多いんですよね。そこで、日本人が自分を投影した分身としてキャラクターを認識するためには、これくらい幼児的にデフォルメされているものというのが、バランスとしてちょうどいいのかなと思ったんです。

「日本人」というものがデフォルメされた2頭身のキャラクターと重なるということですか。

鈴木:そうですね、日本人が自分の精神を投入して違和感がない像としてのキャラクターということです。最近のRPGなどのキャラクターは特にリアルで、没入するというよりは他者としての役割が決められている様に感じるのですが、逆にアプリ版FF3の場合は、その役割があまり決められていないから、自分を没入させやすい。そこに2・3頭身のキャラクターが設定されているっていうのは結構重大なことのような気がしていて。だからそういうものをシルエットに反映させれば、多くの人に似合う服ができるのかな、と思ったんです。また、今回はスタイルを作ることよりも、リアルに着られるものを作りたいという気持ちがありました。その思いが最も詰まっているのが「ネンドロイドコート」です。これは「攻殻機動隊」のタチコマや、フィギュアの「ねんどろいど」をイメージして作っているのですが、それは僕のイメージの中に、アニメなどに登場するいわゆる「メカ少女」という像があるからなんです。JUNYASUZUKI時代はその「メカ」部分だけを作っていた節があったのですが、そうするとファッションマニアの人しか着てくれなかったりして、カワイイ女の子とメカが組み合わさった「メカ少女」という像からは離れてしまっていたんです。だから今回は、僕がメカ少女から受ける印象を、同じ様に人に与えるためにはどうしたらいいかということを深く考えました。


西洋のモードとの差異を強く意識することはありますか?

鈴木:向こうのモードはメチャクチャカッコ良いと思っていますし、それに対するカウンターというよりは単純に「周りが日本人ばかりの中で作ってるんだから、その人たちに向けて作ってみたい」という気持ちが今は大きいですね。また、「日本人」という括りよりも、もっと具体的に身近にいて、僕たちの服を着てくれる人のイメージというものが大きいです。今回コートにメルトンぽい素材を選んだ理由としても、友人が冬にそういう素材のコートを毎日着ていたということがあったりもします。

具体的な形に落とし込んでいく過程で、ポイントになった部分を教えてください。

佐久間:今回はまず、「卵」という言葉を鈴木からもらっていました。JUNYASUZUKI時代の服というのは、基本的にウエストを絞り、肩と腰を強調するようなシルエットでしたが、今回「卵」という言葉から想像できる通り、丸みのあるシルエットを意識し、肩の位置を落としたり、お腹を膨らませたりと今までとは大きく身体へのアプローチを変化させました。リアルに着られる服の中でどう自分達らしい立体表現を取り入れるかを一番に考え、丸く膨らんでいても奥行きのある立体表現で陰影を出したり、腕周りや裾のラインはシャープに仕上げたりと、柔らかい印象になりすぎないようにコントラストをつけて、バランスを取りました。

キャラクターというモチーフが、直接的な形ではなく、記号的な要素としてパターンやフォルムに散りばめられていて、アニメ/キャラクターのカルチャーを共通項として持つ人には、直感的にアクセスしやすいのではないかと感じました。

鈴木:アニメとファッションの繋がりを考えたときに、今のところ世の中に出てきているのは、キャラクターをプリントしたものや猫耳を付けて遊んでみた、というような表面的なものが多いと思うんですけど、そういうものは本当の意味でファッションと繋がっている気がしなくて。もっと消化されたものが作りたかったんですね。今回の「ネンドロイドコート」は、形に頼っている部分もあるのですが、アニメという言葉を使わなくてもしっかり消化できるものにしたつもりだし、素材的にも人を選ばずに着てもらえるものになっています。複雑化したファッション文脈の中だけで消費されるものにはしたくなかったんです。

今後chlomaとしてどのような活動をしていきたいと考えていますか?

鈴木:展示会でこんなに注文が入ったのは初めてなので、とりあえず頑張って作ろうかなと(笑)。あと、「人と寄り添うメカ」というイメージを今後継続してもっと提案していきたいと思っています。今みんなiPhoneでツイッターとかをやるように、メカを通して人の存在やストーリーを感じたりもしますよね。だから、必ずしもメカが冷たいイメージではなくなっていて、人格や温もりが透けて見えるメカという感覚を、人が着るものとして表現できればと思っています。また、人間とテクノロジーの関係の物語は、3.11の震災に伴う原発事故によって新しい局面を迎えてしまいました。日本人の生活に届けるものを提案していく上で、このテーマは長い時間をかけて考えていかなければならないとも感じています。


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