
CZAR | ツァー | Artist
SFや、80年代アメリカのイラストレーションを彷彿させるような独特で強烈なインパクトを与えるグラフィックやコラージュ作品、アクセサリーやぬいぐるみなどを制作する女性クリエイター・CZAR。個人活動をする傍ら、ファッションブランドへのグラフィック提供やコラボレーションにも数多く携わる彼女のクリエイションの源は一体どこからきているのか? 女性として、クリエイターとして、もの作りをしながら生きていくことについて話を聞いた。
Text:小島直子
現在のような活動をはじめたきっかけを教えて下さい。
高校を卒業してから東京へ来たのですが、10代だからまだフワフワした状態ながら、社会のシステムやいろんなことに疑問を感じて、このまま日本で働くことに不安を覚えたんです。それで、もともともの作りをしていたこともあって、ロンドンの美術大学へ通って、そこで学んでから行動しようと思ったんです。グラフィックデザインを専攻したのですが、最初の一年間はグラフィック以外にもいろいろなことをやることができました。その後はグラフィックデザインのコースで本格的に三年間学びました。でも、ロンドンの大学といっても、普通に学校に通うだけでは、日本の大学にいるのと変わらないと思ったので、他にも活動をしようと、前から好きだったギャラリー兼ブックカフェに「働かせてくれ!」と言いに行ったんです。そうしたら、イタリア人のオーナーが、「じゃあ明日から来て、何でも売っていいよ」と言ってくれて。そこでバイトをしながら色々なものを作って、売り始めたのがきっかけです。
そこではどういうもの作っていたのですか?
自分が日々描き溜めているイラストを繋ぎ合わせたものを作ったり、友達がコピー機を持っていたので、それを使わせてもらって本やジンを作ったりしていました。あとは、ドクロのブローチやピアス、指輪、学校のシルクスクリーンを利用して作ったTシャツとかですね。
お客さんの反応はいかがでしたか?
面白いと言ってくれたり、興味持って話を聞きたがってくれる人もいました。店番しながら作品を買ってくれた人と会話をしたり、そういうやりとりが楽しかったです。自分は言葉で表現することや、人に気持ちを伝えるのが上手くできなかったので、ものを作ることで気持ちを表現したり、コミュニケーションを取りたくて作っていました。
CZARさんの作品は、イラストやコラージュ作品から、アクセサリーなどの立体作品まで、いろいろな要素を繋ぎ合わせるコラージュ感覚が感じられます。コラージュという行為に何かこだわりがあるのですか?
私の作品は、写真を使ったコラージュのイメージが強いと思うんですが、もともとはずっと絵を描いているので、実は絵の方が多いんです。でも、自分の大事な部分なので、あえてあまり外に出さないようにしています。絵を描くことは自分にとって精神安定の意味もあるんです。それを外に出しても上手く説明できないし、そもそも出すものじゃないので。そういう意味で、スゴくセルフ・プロデュースがヘタクソなんですよ(笑)。コラージュは分かりやすいものだから、単純にそれが外に出る機会が多いというだけで、そんなに特別でもないんです。私にとってコラージュとは、世の中に溢れている色々なものをかき集めて整理する行為に近いですね。頭の中の散らかりを押さえる行為というか。小学校の頃に、おじいちゃんと一緒に広告を切って、おばちゃんの顔にバナナをくっつけたり(笑)、そういう遊びをしていたから、ベースはそこにあるのかなと思います。ウォーミングアップとか、テンションを上げる行為でもありますね。

Diary 2010~2011

Collague -SEE BASE- SPECIAL BOX 2010
コラージュに使っているモチーフも独特ですが、何からインスパイアされているのですか? 影響を受けたものを教えて下さい。
小学校の頃、理科でやる植物のスケッチがすごく好きでした。あと、お寺や神社の感じが好きで、そういった小さい頃に好きだった感覚は大事にしていて、今も影響を受けていると思います。あとは黒人の音楽がすごく好きです。ファンキーで土着的でソウルのあるもの。ズシッとくる間の感覚とか、そういうものを表現できたらいいなと思います。
ロンドンに残って活動を続けようとは思わなかったのですか?
日本で働いたことがないということがちょっと不安だったので、一度日本で就職してみてから判断しようと思ったんです。学校が終わって、ヨーロッパを旅行したり、色々な人にあったり、半年間ほどブラブラしていて、ロンドンに残ろうかなとも思ったのですが、また行きたくなったらロンドンでも他の国でも行けばいいやと思って。でも、日本へ帰ってからもまた一年くらいダラダラしていて(笑)。もうお金もやばいなってことになって就職しました。その頃から就職しながらも、JOHN LAWRENCE SULLIVANのお仕事の話をちょこちょこもらったりするようになりました。最初はアートディレクターの南貴之さんという方に仕事を繋いでもらっていたので、デザイナーの柳川嵐さんには会ったことがなかったんですが、ある時中目黒の飲み屋で初めて嵐さんに会った時に「お前いいな!」と気に入ってくれて(笑)。そういうきっかけをくれた南さんにとても感謝しています。
JOHN LAWRENCE SULLIVANのアートプロジェクト「THE SULLIVANS」のコレクションには、昨年のスタート時から参加されていますね。先日、PUBLIC/IMAGE.3Dで行われた「THE SULLIVANS ART EXHIBITION」に出品された作品は、どういうテーマで作られたのですか?
最近、気になっている「瞑想」と、ピラミッド社会のシステムへの疑問を落とし込みたく、「LSDをやるより瞑想した方がぶっ飛べるぜ」っていうテーマで作りました。ヒッピーの影響を受けたサリバンズという人物がピラミッドを作っていて、彼が瞑想して、ひらめいた絵という物語を勝手に作って、その人物になりきって想像を膨らまして制作しました。

「THE SULLIVANS ART EXHIBITION」2011

THE SULLIVANS 2011

THE SULLIVANS 2011
そのように設定やテーマを立てて制作することが多いのですか?
何も考えないで感覚的に作るものもあります。でも、いつも自分の中に色々なテーマがあって、例えば、3年くらい前にArticalizmというブランドへコラージュを提供した時は、これからの時代は「種子」がメチャクチャ大事なんじゃないかと思って、それをテーマにしました(笑)。そういったメッセージは何かしらいつも入れていますね。でも、説明的にはしたくないので、作品を見てもらって、その人なりに感じてもらえばそれでいいと思っています。
誰かとコラボレートする時はどのような姿勢で取り組まれていますか?
コラボレートする相手のことを考え、その人達の雰囲気を匂わさないとなと思いますね。「自分はこうだ!」という押しつけはできないです。サリバンの場合は、いつも「好きにやっていいよ」と言ってくれるので、スゴくやりやすいです。嵐さんは、自分の世界観がしっかりしていて、その上で自由を与えてくれるので、自分もしっかりやれる。逆に芯が見えない人に自由にやっていいと言われても、どこまでやっていいのかわからなくなる。「売れるもの」なんて言われたら、もうダメですね。
自分のクリエイションを大切にしようと思えば思うほど、難しい問題も出てくると思います。
例えば、「今これがアツい」となったときに、みんながそれにブワーっと集って、流行が終わったら一気に冷めてしまうのと同じように、周りが勝手に盛り上げて下火にしちゃうことがスゴく嫌です。作り手や作品ができた過程や背景を無視して、一面だけを見て、「カッコ良い」とか、「今っぽい」と言うような資本主義的な感じには違和感を感じます。日本へ戻って、お洋服のグラフィックを作る会社に就職した時も、流行に乗っかって、コピーしてでも売れるものを作れという姿勢が、作り手に対する侮辱のように感じてしまい、10ヶ月間ほどで辞めてしまいました。働いてみると、結局クリエイションじゃなくて消費だな、と。だから私は、食べられるだけ稼げればいい、気持ちが健康な方がいいやと思っています。

Articalizm 2009

「HEART BEAT」AFRA CD DESIGN,2009

「She's Acid / Must Move」FUNKINEVEN,EGLO RECORDS LONDON,2010
CZARさんは、結婚されていて、家庭を持ちながら作家として活動されていますが、そのことについては、どのように考えていますか?
その辺は難しいですね。働いていれば、それなりの保証も安定もありますが、私はその代償として自由を取っているので、不安はつきものです。自分次第ですけど、ちょっとでも芯がゆらぐと、ネガティブな方向にもすぐ傾いてしまうので、自分の芯だけはしっかり持とうと心がけています。そう思いながらいつも迷走、みたいな(笑)。でも、なんだかんだ言って、結局私は自分本位なのかなと考えてしまうこともあります。家族が一番大事なので、そちらの方に重きを置いていますね。大事な人や友達と話したり、笑ってご飯食べてのんびりダラダラ喋ってる時間の方が、本当は重要なんです。クリエイションはそこからの流れで、付属しているだけというか…。そういう感じかな。
CZARさんにとって、作品をつくって人に見せるということとは?
まず、人に「見せる」ことよりも「作る」ことの方が大事です。極端な話、山にこもって作品作りをしていてもいいって思う。世の中にはサンプリングやコピーをする人もいるから、自分が思いついたアイデアがまだしっかりとした形になるまでは、なるべく見せないようにはしています。自分が培ってきた大事な部分を壊さたくないという思いもありますからね。別に、コピーを否定しているわけではないですが、自分のアイデンティティを守ることは大事だと思うんです。もちろん、作ったものを人に見せることも大事なコミュニケーションの一部だと思っています。例えば、お母さんが喜んでくれそうなものを作ったり、友達がほしがっていたものを作ってプレゼントしたりということはよくあります。そういうことが私にできる唯一のことなので。結局、本当に安心できる人には全部見せますね。
今後の活動予定や、やりたいことなどを教えてください。
自分が好きなミュージシャンのレコードジャケットを作りたいですね。あとは、子供向けのワークショップをもっとやりたいです。まだ一回しかやっていないのですが、その時は子供と一緒に幼稚園に持っていけるエコバックを作りました。絵を描いたり、布を貼ったり、刺繍したりして、それを持って写真を撮ったりしました。子供が好きなので、一緒にいると楽なんです。あとは消費社会から離れたい。そんなこと言ったら仕事できないですけど(笑)。でも、私にできることであれば、ジャンルにこだわらず関係なく何でもやりたいという気持ちはスゴくあります。現時点では、一回東京から離れて、大自然の何にもないところに行きたいなと思っています。制作のためではなく、シンプルに戻るためというか、ただ日々の生活に感謝をして、ありがたいなと思える気持ちを確認したいからです。そういうところを大事にしていきたいですね。
















