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KOHEI YAMAO | 山尾光平 | Artist

2001年から、ライブペイントデュオDOPPELのメンバーとして精力的に活動し、国内のライブペイントシーンの発展に大きく貢献してきたBAKIBAKIこと山尾光平。2006年に京都から東京に拠点を移し、個人名義での作品展示なども積極的に行ってきた彼はいま、今年5月の東京での展示を皮切りに全国各地を巡回する「ANCIENT FUTURE」展を継続的に行っている最中だ。特定の場所にとらわれず、自分自身がメディアとなり、動き続けることでコミュニケーションの輪を広げていく活動スタイルは、今後の新しいクリエイター像を示す興味深いモデルケースと言えるだろう。活動10年目を迎え、力強く活動を続ける山尾に、インタビューを行った。

Text:原田優輝


絵を描くようになったのはいつ頃からですか?

子供の頃から絵を描くのは好きで、学校の机にマンガをコピーして描いたりしていましたね。その後も描くことはずっと続けていて、高校卒業後に京都の美大に入りました。その頃には、将来絵で食べていきたいと思うようになっていたのですが、アートのこととかはよくわからず、当時自分の遊び場はクラブで、周りにDJやバンドの友人が多かったこともあり、そういう場所で絵を描くようになりました。

その頃からライブペイントをやるようになったのですね。

そうですね。雑誌でライブペイントの記事に触れたり、実際のパフォーマンスを現場で見て、絵も音楽のように見せられるんだということを感じたんです。それで、同じ大学に通っていた大山康太郎と一緒に、2001年にDOPPELを結成し、ライブペイントにフォーカスした活動をするようになりました。当時はまだクラブで絵を描くこと自体が珍しかったので、それだけで面白がられたところがあったし、リアクションはとても良くて、クライアントワークなども徐々に増えていきました。また、当時流行っていたMixiを通して、全国各地で同時多発的にライブペイントをやっている連中がいることもわかり、色々な場所に行って彼らと一緒に絵を描いたり、自分でもライブペイント中心のクラブイベントを始めたりして、徐々に緩やかなネットワークができていきました。



ライブで絵を描くということは、普通絵を描くこととはやはりだいぶ感覚が違うのですか?

極端な話、いま僕はライブペイントでしか絵が描けなくなってきているんです(笑)。自分のペインターとしてのキャリアは、丸ごとライブペイントのようなものなので、逆に家で一人で描くことに慣れていないし、クラブとかでたくさん人がいて、音楽やお酒がある空間じゃないと、なかなかキャンバスに向き合えない。例えば、同じ3、4時間をかけて描くにしても、クラブなどの現場と、家では全然密度が違うんです。自分にとってはライブペイントの方がはるかに効率がいい。それにライブの場合、そこにある色々なエネルギーを吸収して、絵にぶつけることができる。もちろんそれは自分の絵だけれど、色々な力を借りて描いているところがあるんです。

ライブペイントをする上で大切にしていることを教えて下さい。

自分の成長とともにライブペイントに対する意識もコロコロ変わっていますが、一貫して感じていることは、何を描くかということよりも、どのような姿勢で絵と向き合っているかということの方が重要だということ。ライブペイントを見ている人がグッとくるところというのは、キャンバスに真剣に向き合っている姿勢や、描いている様そのものだったりすると思うんです。例えば、ひとつのスタイルがマンネリ化している状態で、自分の中でもワクワクがないままに描いていると、それがお客さんにも伝わってしまうと思うので、常に自分のなかでも新しさや発見が得られるようなものをやっていこうと思っています。


 

2007年からは個人名義で作品の展示などもするようになりましたが、そのきっかけは?

コンビで活動していれば誰もが一度は考えると思うのですが、自分ひとりでやったらどうなるんだろうということを意識するようになったんです。それまで京都に住んでいたのですが、2006年に東京に引っ越したんですね。その頃相方はまだ関西にいたので、拠点が西と東に分かれたこともあり、もう少し自立してやっていこうという意識が強まっていた時期でもありました。それで、2007年に初個展をすることになり、アイドルをモチーフにした作品やキャラクターなどを色々描いて展示したんです。その時は、自分がずっとやってきたライブペイントにフォーカスするのではなく、僕個人の作家性みたいなものを強く意識していましたね。

初個展を終えた後は、どのようなことを感じましたか?

世の中との距離を感じましたね(笑)。自分としては、これを発表したら世の中が変わるくらいの気持ちで出したのですが、結局何も変わらないんですよね。当時は個展などをする度に、その距離感をもどかしく感じていました。20代の頃は、そうした壁にパッションだけでバンバンぶつかっていく感じでした。でも、そこで自分を出し切ったからこそ、世の中との距離感や間合いみたいなものを客観的に見られるようになったと思います。いまはもう少し自然に、全力で投げた球をしっかり的に当てていくということを意識してやれるようになった気はします。

東京に移ったことで何か変化はありましたか?

東京に来て最初に感じたのは、一日に会う人の量が全然違うということでした。人の名前が覚えられないみたいな(笑)。ひとつの場所で、ゆっくり自分の時間でものを作るというよりも、色んな場所に動きながら活動していくというスタイルになっていきましたね。


現在全国を巡回中の個展「ANCIENT FUTURE」も、まさにそのような活動スタイルが反映されたものですね。

そうですね。ひとつの場所で多くの人たちに作品を見てもらうということには限界があると思うので、それなら自分が動いていこうという発想です。巡回展ということを意識して、ロールのキャンバスなど持ち運びしやすいもので作っていたりします。これまでは展示場所もある程度絞っていたところがありましたが、いまは自然な流れのなかで絵を見せられる環境があれば、どんどんやっていこうと思っています。ライブペイントと同じで、色々な環境で多くの人たちに見られることでプラスされるものがあると思うので、展示の過程自体をさらしながらやっていくのもいいのかなと。

9月5日から大阪GALAXY GALLERYで開催される展示で、すでに7ヶ所目になりますね。

特に着地点を決めず、展示場所が決まれば次をやるという形で続けています。これまで、個展を控えている時期とそうじゃない時期で、自分のテンションがだいぶ変わってしまうところがあったんです。個展がない時期は、日常にも緊張感がなくなってしまうんですね。それなら、これまでの個展のように一極集中でやるのではなく、ずっと展示をやり続けている状態で、通常業務も並行してやってみようと思ったんです。


今回展示されている作品は、ライブペイントで描かれた絵がもとになっているそうですね。

ライブペイントで描いたものを、ブラッシュアップして作品に仕上げています。今回の作品は、自分でこういうものを描こうと思って描いたというよりは、「出現したもの」「召喚したもの」という感覚があるんです。いかにあどけなく、楽な状態で描けるかというところからスタートして、そこで生まれた流れのようなものを汲み取って、それらをパズルのように組み合わせたり、彫刻のように掘り起こしたりしながら、絵を浮かび上がらせていくような感覚で作っていきましたね。

ライブだからこそ生まれ得た絵とも言えそうですね。

そう思います。ライブペイントというのは、自分の初期衝動のようなものをいかにキャンバスにぶつけられるかというところが勝負だったりするんです。今回の展示作品は、ゲームのキャラクターっぽいと言われることも多いのですが、日本のマンガやRPG、フランスのバンド・デシネなど自分が影響を受けてきたものと、DOPPELなどのライブペイントを通して得たスキルが合わさって、無意識的にこういう作品が生まれているのだと思います。今回の展示では、そうして一晩で生まれたものを、どこまで肉付けしていけるかというところも自分の中のテーマにしています。


巡回を重ねていくことで、展示にも奥行きが加わっていきそうですね。

そうですね。展示作品は基本的には変わらないのですが、巡回の間にライブペイントで描いた新しい作品が加わったり、展示を見てくれた人の感想が新しい絵やTwitterで配信している作品の物語に反映されたりしています。また、例えば、京都では、掛け軸をイメージしたキャンバスを職人さんに仕立ててもらうなど、パッケージの仕方も展示場所によって変わっています。色々なコラボレーションをしながら、「塊魂」のように巻き込んで、大きくしていく感覚ですね(笑)。こういう考え方ができるようになってから、展示に対する意識が良い意味で軽くなりました。箱に依存するのではなく、自分がメディアになって、動きながら、色んな場所で多くの人たちと話しながら発信していくことが、自分には一番向いているんだと実感することができたし、最近は、そうやって動いていくことが、自分の仕事だと思ってやっていますね。

絵を描くことと同じくらい、絵を通したコミュニケーションという部分にも比重を置かれているようですね。

そうですね。絵があるからコミュニケーションができているわけですけど、そもそも本当はそのコミュニケーションがしたいがために、ツールとして絵を使っているのかなと思うことすらあります(笑)。それくらい、絵を描いていて良かったと思える瞬間は、コミュニケーションを通して得られることが多いんです。


今回は山尾光平名義で作品を発表していますが、BAKIBAKI名義との使い分けはあるのですか?

自分のライフワークとして、「バキバキ」というパターンをメインにした作品を10年くらい描き続けていて、そのような時はBAKIBAKI名義でやっているのですが、今回のようにキャラクターなどを描いていくスタイルの時は個人名義で発表していこうかなと思っています。BAKIBAKIとして描いているモチーフは自分のトレードマークでもあるし、これが柱としてあるからこそ、他のモチーフやテーマの作品を色々作っていけるところがあります。最近は、BAKIBAKIの方は、絵そのものを見せるというよりも、もう少しグラフィックデザイン的に、もしくは呪術やおまじない的に、空間や洋服、プロダクトなどに落としこんでいくことで活きてくるモチーフなのかなと考えるようになりました。だから、同じで絵でも、それぞれの目的はだいぶ違うところにありますね。

10年にわたり活動を続けてきたいま、日本のライブペイントやストリートアートのシーンについて思うことはありますか?

それは自分の中でもずっと考えてきた問題で、正直憂いているところもあります。シーンが小さいがゆえに、どうしても仲が良すぎるところがあるんです。僕自身そんなに好戦的な人間ではないですが(笑)、「絵に勝敗なんてない」という考え方が強すぎて、高め合いがなかなかできていなくて、悪い意味で丸く収まっちゃっているところがあるように感じています。個人的には、例えば、ライブペイントバトルのようなイベントなどをして、もっとお互いに高め合っていけたらいいなと思っています。そういう器づくりに力を入れていかないといけない段階に来ていると思うんです。日本のライブペイントというのはかなり異質なものです。海外で「ストリートアート」と言えば、基本的にそれはグラフィティカルチャーのことで、日本のようにクラブでライブペイントをするという文化はない。そういう意味で日本はとても特殊だし、アーティストのスキルもスゴく高い。だからこそ、ライブペイントバトルなどをやって国内のシーンを盛り上げつつ、それを海外にも紹介していけたらなと思っています。


最近は、ストリートアート界隈に限らず、ライブペイントをするアーティストたちが増えてきているように思います。

そうですね。ライブペイントには、色んなものを内包できる可能性があると思っています。例えば、漫画家や、現代美術のアーティスト、グラフィティライターなどが一堂に会するような異種格闘技戦的なライブペイントのイベントがやれたらいいなというのが、以前からぼんやりと夢描いていたビジョンなんです。まだ実現はできていないですが、徐々にそこに近づいてきているようには思います。僕は子供の頃、漫画家になりたいという漠然とした夢がありました。いま絵に携わっているそれぞれの人たちに、そういう初期衝動が何かしらあったと思うんです。そこから、それぞれの職種に分かれていったわけですが、ライブペイントという舞台に、みんながまた集まってこれたら最高だなと。今後は、そういうプラットフォーム作りも含めて、活動していけたらなと思っています。


Infromation
山尾光平巡回展「ANCIENT FUTURE 7th Stage」は、9月5日〜19日まで、大阪・Galaxy Galleryで開催される。



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