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beautiful people | ビューティフルピープル | Fashion Designer

2007年のデビュー以来、ユーモアとシリアス、大人と子供、男性と女性、オーセンティックとイミテーションなど、相反するキーワードを巧みに共存させながら、トラッドをベースにしたベーシックで心地良い洋服に落し込み、人気を集めてきたビューティフルピープル。デザイナーの熊切秀典がしばしば口にする「普通」である服作りの先にあるのは、性別、年齢、趣味・趣向などを超えた普遍性の獲得だ。8月末に青山に初の路面店がオープンするなど、確実に歩みを進めている同ブランドのデザイナー、熊切秀典に話を聞いた。

Text:原田優輝

ファッションに興味を持ったのはいつ頃からですか?

もともと母親がニットの先生をしたり、紡績会社と一緒に編地の開発をするような仕事をしていたこともあり、家に「流行通信」や「ハイファッション」などの雑誌があって、それを小学校高学年くらいから見始めたのが最初の入り口でした。でも、自分でオシャレをすることはそんなに得意ではなくて、中学生になると音楽の方に興味を持つようになり、それからはバンドでギターをずっとやっていました。ファッションに関しては、自分が着たいと思うものは、人目を意識するようなものというよりも、着心地の良いベーシックなものがほとんどでした。その一方で、雑誌などを通して(コムデ)ギャルソンのようなブランドがあるということも知り、徐々に興味を持つようになっていきました。

自分が普段着る服と、雑誌などで見るモードの世界がリンクすることはなかったのですか?

そうですね。(モードの世界は)表現のひとつとして見ていたところがあって、自分が着るものではなく、ちょっと違う世界のものだと捉えていたところがありました。高校くらいになると、グランジが流行って、カッコつけないことがカッコ良いという空気感もあり、僕も古着屋で買ったネルシャツを腰にまいたりしていましたね(笑)。

服作りをしてみようと思ったきっかけは?

大学受験に落ちた時に、母親が文化服装学院の入学案内を渡しくれたのがきっかけです。最初の頃は大したビジョンもなかったのですが、1年生の夏休み明け頃から「パンツのパターンってどうなっているんだろう?」というようなことを考えていくことがスゴく楽しくなってきて、引きこまれていくようになりました。1年生の時に山本耀司さんが学校に講演に来てくれたことも大きかったですね。そこで女性の背中のラインと型紙の線の関係などについて話してくれたのですが、耀司さんの存在も含めて、とても衝撃を受けました。当時はヨウジヤマモトやギャルソンなど、複雑な構造の服も多く、そういうものを見ながら、パターンの面白さにのめり込んでいきました。

卒業後もしばらくパタンナーとして活動していたそうですね。

はい。最初にいた会社ではパターンをやりつつ、たまにデザインもしていました。その後入ったギャルソンでは、メンズウェアのパタンナーをやりました。最初にいた会社は、基本となるパターンをデザイナーがどんどん壊していくような作り方をするので、その壊されたものを、パタンナーとしてどう服にしていくのかということを考えながらやっていましたね。一方でギャルソンでは、シャツならシャツで決められた型紙というものがあって、毎回そのパターンを使って、素材を変えながら出していくような作り方でした。毎回トレンドに合わせてパターンも使い捨てされていく場合が多いので、こういう作り方はとても勉強になったし、パタンナーとして面白いキャリアが築けたんじゃないかなと思っています。いまもパターンはうちのブランドのベースにあるもので、常にそれを意識しながらやっています。


ビューティフルピープルを立ち上げるまでの経緯を教えて下さい。

ギャルソンでしばらく働いているうちに、そろそろ自分でやってみようと思うようになり独立をしたのですが、しばらくは外注のパタンナーとして仕事をしていました。そして、3年程経ってから、普段の仕事と並行して、仲間と一緒に今のブランドを始めました。最初のシーズンは、シルクのミリタリーウェアや、デニムの傷を100万針もの刺繍ですべて表現したパンツなどを作りました。自分たちとしては満足ができるものが作れたし、絶対売れるだろうと思ったのですが、一部のバイヤーさんが面白がってくれたくらいで、まったく売れませんでした(笑)。でも、自分の中に手応えはあったので、基本的にはその時にやったことを継続していきながら、今に至るという感じです。

その継続してきたことというのがブランドの核になる部分だと思いますが、具体的にはどんなことを大切にしているのですか?

第一は「気持ち良さ」です。これは自分の好みでもあるのですが、着心地の良いものが昔から好きだったし、寝具とかもスゴく大事にするところがあるんです。その気持ち良さによって変わるものというのがあって、それを伝えていきたいというのはありますね。気持ち良さというのは、着た時や触った時だけではなく、風合い、モチーフ、見た目などすべての面で前提としてありますね。その上に、その時々でやりたいテーマやコンセプトなどが乗ってくる感じです。

シーズンテーマやコンセプトはどのように決まっていくことが多いのですか?

僕は普通の人と同じ感覚で生きているつもりでいて、当たり前の生活の中で当たり前のことをするなかで何ができるかということを考えながらやっています。以前に「オーディナリーピープル」(=普通の人)というテーマでコレクションをやったこともあるくらい、その感覚は大切にしています。普通の人の感覚でも、美しいストーリーになり得るというところを表現していきたいんです。自分が作ったものを「普通」だと思って出せる強みというのもあると思うんです。デザイナーというのは、どうしてもそこに自分の色を出したりして、普通ではないものにしていきがちですが、僕はあえて「普通」にそれができたというところにこだわりたいんです。

それはアウトプットが「普通」ということですか?

そうですね。普通であることを大事にしているとはいえ、発想のきっかけ自体は普通じゃないところから始まることも多いんです(笑)。ただ、それを最終的には普通なものに落とし込んでいくようにしています。もしかすると、自分の中で普通だと思えるところに持っていけないと、恥ずかしいと思ってしまうところがあるのかもしれないですが(笑)。自分の中に恥ずかしさや気負いがない状態で、自然体のものを出していきたいんです。それは何もやらないということではなくて、スッと普通のものを出せる感覚という感じです。

先ほども話に出ましたが、多くの作り手は、最初のアイデアを膨らませたり、色々な要素を付け加えていくことで、そのデザイナーやブランドとしての個性を表現しようとすると思うのですが、熊切さんの作業はむしろそうしたある種のエゴを削ぎ落していく行為のようにも見えます。

それが自分の仕事だと思ってやっています。そうすることでより多くの人に伝わるんじゃないかと思っているし、作っていく段階でも周りのスタッフの意見や要求をスゴく聞くんです(笑)。みんなにとって満たされるものにしたいと考えているから、やっていくうちにベーシックなものになっていくのだと思います。お客さんの意見もなるべく取り入れたいと思っていて、うちの服のサイズのレンジが広いのも、きっかけはお客さんからの要望だったりします。もの作りをしている側である僕らがもっとしっかり固めて提案する方が正しいとは思うのですが、サイズレンジを広げていくようになった頃から、逆にお客さんの要望に合わせて色んなものを用意して、それを自由に楽しんでもらうというやり方もアリだなと思うようになっていきました。



その過程で、デザイナーである熊切さんの存在は見えなくなってもいいと?

そう思っています。ただ、ブランドとしての個性は絶対必要です。ちょっと変な考え方ですが、いま僕らが目指しているような作り方が普通にできるようになった時にこそ、ブランドが最も個性的に見えるんじゃないかなと思っているんです。個人の趣味・趣向のようなところを超越した普遍的なものを作りたいという思いが昔からあるんです。ただ、「普遍的」と言ってしまうとちょっとカッコ良すぎるので(笑)、それを「普通」と言い換えているところがあるのかもしれません。

ショーではTwitterや3Dをはじめ、旬のテクノロジーなども取り入れていますね。プレゼンテーションについてはどのように考えていますか?

コレクションに関しては、その時々で自分たちが興味のあることをやっている感じです。遊び心を入れつつ、自分たちなりの実験をして、それをお客さんにも体験してもらえればと思っています。自分たちが楽しいと思ってやっているので、お客さんもそれを楽しんでくれるだろうと(笑)。都合の良い考え方ですが、そこは信じてやるしないので、まずは自分たちが楽しいと思えることをやっているという感じですね。


8月末には青山に路面店もオープンしましたね。

このお店はブランドのひとつの発表の場であり、お客さんとの接点にもなる空間として考えています。例えば、コレクションを作っている過程でできた商品にはならなかったものを、ストア限定アイテムとしてリリースしていくことなども考えています。ストアのデザインは、ワンダーウォールの片山正通さんにお願いをしたのですが、ブランドの考えやコンセプトなどを伝えた上で、完全にお任せしたところ、1万本の白い造花に囲まれた空間をデザインしてくれました。最初に見た時は、カワイイのか怖いのかわからない不思議な感覚があり、うまく感想が言えなかったのですが、そういうところを片山さんも目指していたようで、とても面白いと感じました。うちの洋服には相反する要素が融合されているところがあると感じたようで、そこからこういう空間を作ってくれたみたいです。

そうした相反する要素を入れていくことは、ご自身でも意識しているのですか?

そうですね。作家の(スコット・)フィッツジェラルドが、「相反するものを同時に満たせるものがある」という意味の言葉を残しているのですが、そういうことを意識しているところはありますね。


大人と子供が洋服を共有できる「キッズシリーズ」も、ある意味対極にある要素を共存させたひとつの形だと思いますが、このシリーズのように、定番として出し続けているものも多くありますね。

そうですね。自分たちの職人としての成長というのを意識しているところが大きいかもしれません。例えば、うちは毎回同じ型紙をもとに、それを少しずつ変えて出すようなこともしているのですが、それはお客さんにはほとんどわからない部分だと思うんです。でも、パターンの一部を2ミリだけ変えていくようなもの作りは大切だと思うし、それは同じものを作り続けているからこそできることでもある。お客さんにはちょっと悪いのですが、今シーズン買ったうちの服よりも、5年後に買ううちの服の方が、品質は良くなっているはずなんです。もちろん、その時々で最高のものを出しているつもりではいますが、自分たちもまだ成長している段階という意識が強いんです。

最後に、次回のコレクションの構想などがあれば教えて下さい。

次回は、「ギンギラギンにさりげなく」をテーマにしようと思っています。震災以降、防災頭巾の素材などに興味を持つようになり、そこから発想したテーマです。スタッフたちにもお願いをして、参考になる資料を色々集めてもらい、それらをビューティフルピープルとして恥ずかしくないものにどう落としこんでいくかというところを、実際に作りながら固めていっている段階です。「ギンギラギン」だけではなく、「さりげなく」というところが肝なので、その辺を僕の方で調整しながら、制作しているところです。


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