
FRAGMENT | フラグメント | Musician
映画やCMの音楽からアイドルのリミックスやアキバ系イベントへの出演など、幅広い活動をみせるFragmentがニューアルバムをリリースする。テクノやエレクトロなど、多くの音楽を取り入れた雑食性をみせるが、ほとんどをサンプラーから生み出し、ルーツであるヒップホップマナーに則した音楽への姿勢にブレはない。“今”の音を取り入れたドープなブレイクビーツによる、ゴリゴリとした質感を持ったアルバムとなっている。
Text:大草朋宏
前作のセカンドアルバム『vital signs』がリリースされたのが昨年11月なので、まだ1年も経っていませんが、ファーストアルバム『walking in the soul』がリリースされたのは、さらに5年前の2005年ですよね。なぜ突然スピードアップしたのですか?
kussy(以下k):『vital signs』までは、他の仕事をやりながら音楽をやっていたんですが、そのタイミングで仕事を辞めて音楽一本に絞ったんですね。だから音楽に集中する時間ができたというのもあります。
じゃあ、「出来ちゃった」という感覚ですか?
k:そうですね。もう日記的にどんどん出来ちゃう。なんなら年明けくらいに、もう2枚ぐらい出すかもな勢いです(笑)。
『vital signs』の時は5年空いたということで、やはり練り込んだ集大成的な意味合いがあったのですか?
k:はい。ただ、5年ぶりだったので、肩に力が入っていたというか、狙いすぎちゃった部分があったんですよね。ヒップホップ、ロック、エレクトロニックと様々なシーンに顔突っ込んでいたので、どのジャンルの人にも受け入れられたいと思っちゃったんですね。周りからは「頭柔らかいですね」と言われたけど、自分達的にはいやらしさを感じてしまって。ただあのアルバム出したことで吹っ切れて、今はわがままに好き勝手やってやろうという状態です。
deii(以下d):あと、ここ1年でライヴをたくさんやっているというのが大きいですね。『vital signs』はライヴでやっても躍らせる曲ではなくて。だから最近の曲作りは、ダンスミュージックっぽい要素が多くて、結果的に今作『鋭ku尖ル』もそうなりましたね。
k:最近はフェスにも呼んでもらえることが増えたんですけど、そうすると、やはりテクノがすげぇと。

躍らせる力、ですか。
k:ありますね。僕は特別テクノが好きというわけではないけど、野外とかフェスで聴くと、「そりゃ、みんな踊るよな」と。自分も知らないうちにアガっちゃってて(笑)。
ということは、今回は割と普段から作っていた手元にある曲を入れていったという感じですか?
k:そうですね。ほとんど毎週末ライヴをやっているので、そのセットを組む過程で曲作りしているので、BPM140〜150くらいの速めの曲だったりしますね。
そうすると、この10ヶ月のおふたりの気分がストレートに込められているアルバムということになりますね。
k:それこそファーストアルバムを作ったときのような衝動に駆られたというか。とことん自分たちに向き合って、ストレスなく、遊び感覚で作ってしまいました!
曲はどのように作っていくのですか? 役割分担とかはありますか?
d:役割は特にないですけど、同じ安いサンプラーを持っているので、お互いそれで短いループを作って、聴かせ合っています。
k:もちろんひとりでも完結できちゃうんですけど、違う観点から聴いてもらって、壊したいんです。昔からイケメンとかオシャレな奴に対するコンプレックスがあって、なんか壊したくなるんですよね(笑)。Remixの感覚に近い。
d:それで、「俺が上物を崩していくから、おまえがドラムを組んでいって」と。

今作もサンプラーがほとんどですか?
k:98%くらいサンプラーですね。今は、素材がYouTubeなどからも取れますし、生活音なんかも使います。それをエディットしまくっています。パソコンも使わず、サンプラーの中でいじり倒します。それしかできないんですよね(笑)。
これからもサンプラーのみでずっといくつもりですか?
k:よく「ピアノが弾けたほうがよくない?」とかいわれるんですよ。でも、俺たちがそれをやっちゃったら、スゴく普通になってしまうのかなって。決して正しくない音楽理論のままで、サンプリングから起こるミラクルを楽しみたい。「そんなの鍵盤の一番端と端を押さえているような音だよ」って言われたりもするけど(笑)、サンプリングだからこそそれが可能なんです。サンプリングという手法やカルチャーにビビッときてしまったので、普段の生活でも「人間サンプラー」みたいなものですよ。とにかくどんな音楽でも、カルチャーでも、一度は自分に取り込んでみる。それがテクノでも、アイドルでも、アキバでも。
アキバ系もですか! スゴく幅広いですね。
k:なんでもやりたがりなんですけど、それが広く浅くではあるので居場所がないですね。
居場所のない感覚が強いのですか?
k:スゴく感じます(笑)。前はもうちょっと受け入れてほしい気持ちもあったけど、今は「まあ、いいか」と。むしろ、おいしくなったかなというところも、ちょっとはあります(笑)。


(左)『鋭 ku 尖 ル』(2011)、(右) 『vital signs』(2010)
でも、そのスタンスがFragmentの個性になっていると思います。
k:そうならいいですけど。一番居心地がいいのは、インディロックのシーンですね。あそこはやさしく迎えてくれる(笑)。ヒップホップのイベントでライブするとみんなポカーンとしてますね。
今作を聴いて、やっぱりヒップホップだなと感じました。そもそもこれだけラッパーをフィーチャーしているんですからね…。
k:結構面白いラッパーを使っていると思うんですけどね。環ROYともコラボしたけど、彼もよくヒップホップの世界に居場所がないと言ってますね。そういう人が好きなんです。
どこにも属さないと言えばカッコ良い(笑)。おふたりも、もともとはラップをやっていたんですよね?
k:恥ずかしい過去(笑)。完全に日本のヒップホップから影響を受けたんですけど、割と早い段階でラップはやめて、DJ KRUSHとかアブストラクトなものを聴き始めて、そこからメルツバウとか灰野敬二とか、スゴい方向にいってしまったんです。
今回のアルバムでは若いラッパーもフックアップしていますね。
k:YouTubeを観ていても、無名でもスゴいラッパーがたくさんいるんですよね。そういう人たちとうまく絡んでいったほうが今は面白い。ネームバリューとかはどうでもいい。
d:でも一度は直接ライヴを観に行きますね。
k:現場で直接会って酒飲んで乾杯すれば、どんな人かすぐわかりますから(笑)。
限定1000枚にした理由は?
k:売り方は試行錯誤中です。今作も、サードアルバムなのか、ミニアルバムなのか、いろいろな媒体の人から聞かれて、「ただの新作じゃダメですか?」って答えていたんです。配信とかもあるし、もうそういう単位はどうでもいいかなと。iTunes Storeでは曲単位で買えるし誰でもYouTubeにアップできる。今は正解がないので、毎回実験している感じですね。
そのあたりはレーベルオーナーとしての視点もありそうですね。
k:そうですね。他のアーティストで実験することはできないので、まずは率先して自分たちがやってみようと。これからも『術ノ穴』というレーベルの一アーティストとして、Fragmentはジャンルや文化をぶった切って、このカオスな状況を楽しみながら好き勝手に動いていくつもりです。
Information
Fragment最新アルバム『鋭 ku 尖 ル』は現在発売中。











