
TAKUYA HOSOGANE | 細金卓矢 | Motion Graphics Director
音楽と完全にシンクロしたミニマルなモーションの展開や正方形のフォーマットなど、斬新な発想に満ちた映像作品として、ネット上を中心に大きな注目を集めた「Vanising Point」。この作品を手がけた細金卓矢は、その後もCG、アニメーション、VJ、実写などジャンルを問わず、様々な作品を発表し続けている。ここにきて、メキメキと頭角を現し始めている注目の若き映像作家を取材した。
Text:原田優輝
映像を作り始めたきっかけを教えて下さい。
高校生の頃にFlashを使い始めて、そこで作ったものをWebに公開していたら、そこから少しずつFlash関係の仕事が来るようになったのがそもそものきっかけです。当時は、PCのスペックが低かったこともあり、Affter Effectsなどよりも、Flashの方が手軽に作れるところがありました。でも、当時はFlashで動画を作りたいという気持ちがあったわけではないんです。もともとは、Web関係のことをやりたくて始めたのですが、徐々にアニメーション制作などに興味を持つようになり、映像の方に進んでいきました。高校を卒業するくらいになるとYouTubeなども出てきて、PCのスペックも上がってきたので、After Effectsや3Dソフトなどにも手を出すようになっていきました。
映像制作のどんな部分に面白みを感じたのですか?
音に合わせて絵を動かしていくということが単純に楽しい作業でした。それまでは、インタラクティブなものを作りたいという思いがあったのですが、必ずしもそういうものじゃなくても面白いものが作れるなと。今もそうですが、アニメーション単体で作ることよりも、音に合わせて映像を動かしていく方が面白いなと思っています。
Madrix (Cut and Paste Tokyo 2009 Theme:Natural selection)
高校卒業後はどのような活動をするようになったのですか?
大学に進んだのですが、美大などには行かず、普通の大学で映像とは全く関係のない経済を勉強していました。当時は、大学に行きながら、並行してFlashで作品を作ったり、携帯電話関連の仕事などをやっていました。結局、大学は中退したのですが、在学中にたまたまTwitterのタイムラインでBOWというWebなどの仕事をしている会社がスタッフを募集しているのを見て、それに応募して、働くようになりました。ちょうどBOWに入るか入らないかくらいのタイミングで、「cut & paste」という映像関連のイベントに参加して、そこで作品を発表したりもしましたね。
その後、ターニングポイントになった作品などはありますか?
「Vanishing Point」という作品を作ったのですが、これがネット上でかなりの再生数までいきました。もともとは、「BM98」という音ゲーの動画をユーザーが自分たちで作って公開しているコミュニティがあって、ある音楽家の人から、自分たちもそれを作ろうと誘われたのがきっかけでした。
「Vanishing Point」
この作品も音楽との同期性が強い作品ですが、制作の上で音楽がインスピレーションソースになることは多いのですか?
音楽がほとんどかもしれません。音をベースに、まず自分が一番作りたいところから作っていって、それを前後に伸ばしたり、外堀を埋めていくような感覚で広げていきます。だから、映像の頭から作り始めることはほとんどありません。そういう作り方をしているので、尺が長い映像になると、かなり大変です(笑)。僕はグラフィックデザインはやりませんが、例えるなら、1秒の映像を作るのが、ハガキサイズくらいのグラフィックを作る感覚なんじゃないかなと。手のひらサイズが1秒、A4サイズが5秒くらいで、とりあえずそれくらいで一段落みたいな感覚がありますね。
全体のストーリーを意識するのではなく、数秒単位の映像をつないでいく感覚が強いのですか?
ストーリーをまったく意識してないわけではないんです。例えば、3秒なり5秒なりの映像があって、それをただパッチワークしていくように寄せ集めて作っていくわけではなくて、そのつなぎ目をなるべく感じさせないようにしていきたいので、そのための流れというのは大切にしています。でも、理想を言えば、自分の作る映像が、Tumblrとかに数フレームだけ切り抜かれてアップされるようになるといいなと思っています。日本のアニメーターのように、「この動きが見たい!」と思われるような人になりたいですね。アニメの描けないアニメーターという感じですが……。ただ、その数フレームだけを作っていても仕事にはならないので、そういうものを積み重ねていくような感覚でやっています。
日本のアニメーションからも影響を受けているところがありそうですね。
具体的に自分の作品にどう生かされているのかと言われると難しいのですが、もともと日本のアニメーターの作画に憧れているところはあります。日本のアニメーターは、フレームを間引いて、そのなかでいかに人の目を騙すかという表現していて、その独特の省略化の手法が、ディズニーなどとは明らかに違い、そこが好きなんです。YouTubeなどでアニメの爆発シーンばかり集めた作画マッドの動画などがあって、そういうものはよく見ていますね。
「WIRED Design Conference Title」
最近注目しているアニメーターがいれば教えて下さい。
りょーちもさんが好きですね。もともとWeb系のアニメをやっていた方で、「ノエイン」の作画とかを手がけている人です。戦闘シーンなんかもやっているのですが、動きの魅せ方がスゴいんです。
Web系のアニメーションやFlashをやってきた人と、After Effectsなどのモーショングラフィックス系の制作をしてきた人では、感覚に違いがあると感じますか?
あると思います。昔はPCのスペックが低かったので、After Effectsなどを使うと、プレビューにスゴく時間がかかったんです。一方でFlashの場合は、待ち時間がないのでAfter Effectsなどを使うよりも試行錯誤する回数がはるかに多いんですね。そういう意味で、僕もFlashを使ってきたことで、モーションの訓練はされた気がします。逆に、After Effectsじゃないとできないようなフォトリアリスティックで綺麗な映像を、ある程度の尺で作るということはやってきていないのですが、そもそもそういうことをやろうとはあまり思っていないし、基本的には今できることを突き詰めていきたいなと思っています。
スペースシャワーTVの「CANVAS」のために映像作家のtakcomさんと一緒に作った作品は実写で撮られていましたね。
この時は、これまでにふたりがやっていない実写をあえてやろうという話になったんです。もともと僕の中でジオラマを作りたいというのがあったので、それを仕事に結びつけました。鉄道模型とかではありえないスペースコロニーのような風景を作りたいと思い、いろいろ試行錯誤した末に、最終的にこういう形になりました。もともとコンピュータで作ることにこだわっているわけでもなくて、単に実写の方が一般的にはお金がかかるので、多くの場合はコンピュータでやらざるを得ないというところがありますね。
Space Shower TV CANVAS「V.L.C」
Making of 「V.L.C」
最近手がけたお仕事についても教えて下さい。
最近はNHK「デザインあ」の仕事を結構やっています。コーナーとコーナーの間に差し込まれる5秒から30秒くらいの映像があるのですが、それを色んな人に協力してもらいながら、これまでに20本くらい作りました。あとは、オーストラリアの通信会社のプロモーションムービーを作ったりもしています。
「四畳半神話大系」のエンディングムービーを、川村真司さんとともに手がけていましたが、コラボレーションワークも多そうですね。
そうですね。「四畳半神話体系」の時は川村さんがディレクションで、それに対して僕から「こういうのどうですか?」と提案をしたりしながら落とし込んでいきました。逆に僕の方から誰かに声をかけて、自分にはできない部分をその人の裁量で作ってもらうという場合もあります。どちらにしろ、ひとりでやる時とは感覚も違うし、僕自身腰がスゴく重いタイプの人間なので、相手がいるとダラけないでやることもできるのがいいですね(笑)。
最後に今後やりたいことなどがあれば教えて下さい。
海外に呼ばれたいですね。以前に「cut & paste」の時にアメリカには行ったのですが、交通費さえ出ればどこにでも行きたいです(笑)。仕事に関しての願望のようなものは特になくて、与えられたミッションに対して面白い事をやっていければと思っています。例えば、「Vanising Point」の時は声をかけてもらったところからスタートして、たまたまその映像のフォーマットが正方形だったので、そこから色々と考えていった感じですし、時代が変わればミッションも変わってくるものだと思っています。それに対してどう返していくかというところに集中していけば、自然と新しい課題も降ってくるんだろうなという気持ちでやっています。
NHK「デザインあ」

「assimilation」
「四畳半神話大系」エンディングムービー














