
ZACHARY LIEBERMAN | ザッカリー・リバーマン | Media Artist
ニューヨークを中心に活動するZachary Liebermanはニューメディア・アートの世界において10年間のキャリアを持つアーティスト。ライブラリ「openFrameworks」(oF)の開発者として世界的な知名度を持つ彼は、芸術家であるとともにプログラマであり、またパーソンズで教授を務めるかたわら、世界中のoFワークショップに招かれる教育者であり、クリエイティブカンパニーyesyesnoにおいてコマーシャルワークを手掛けるクリエイターである。徹底したオープンソース志向もザッカリーのクリエイティビティの根底にあるものだ。そんな彼の素顔は好奇心にあふれた気さくな人物で、一度会えば誰でも彼のことを好きになってしまう魅力に満ちたシャイな青年。YCAM 山口情報芸術センターにおける展示「The EyeWriter」で日本を訪れたザッカリーにインタビューを行った。
Text:齋藤あきこ(A4A)
もともとザッカリーさんは画家で、ファインアートがバックグラウンドにあるんですよね。この世界に入ったきっかけは?
2000年くらいに就職することになったんだけど、当時アメリカで経済崩壊があって、全然仕事が見つからなかったんだ。みんなy2kとか.com、スタートアップとかについて話している頃だった。友達がみんなWebデザイナーになったので僕もやってみようと思って、面接に行って「Macでデザインができる」ってまるっきり嘘をついたんだよ。あわてて50ドルの教則本を買って、ランチ時間に読んでIllustratorとPhotoshopを覚えた。あの頃はみんな暇で時間があったからね。
現在34歳のザッカリーさんは、日本でいえばナナロク世代にあたります。デザインとプログラムに魅せられたきっかけは何だったんでしょうか?
その頃、Flashで面白いことをしている中村勇吾やジョシュア・デイヴィス、エリック・ナッツキらの作品を見て、プログラムでアニメーションを作ることができることに興味を惹かれたんだ。さらに興味深かったのが、彼らがプログラムのチュートリアルやリソース、アイデアやコードをシェアしてるところ。それでグラフィックデザインをもっときちんと勉強しようと思って、ゴラン・レヴィンの生徒になった。以来ゴランといろんなプロジェクトを一緒にやっているよ。(※ゴラン・レヴィンは、リアクティブエクスプレッション(反応表現)をテーマとするアーティスト/プログラマー。ジョン前田に師事した人物で、ザッカリーはジョン前田に大きな繋がりを感じている)
ザッカリーさんが手掛けるプロジェクトは多岐に渡っていますよね。
僕の作品に共通するテーマは「ドローイング」。それは僕のバックグラウンドにペインティングがあるから。水彩やインクの色、ペインティングのマジックへの愛が根底にあるんだよ。
お気に入りのプロジェクトを教えて下さい。
「drawn」だね。これはその場で紙に描いた絵が、スクリーン上で動き出すという魔法のようなパフォーマンス。これを誰でも体験して楽しめるものにするため、インスタレーション版を制作したんだ。インスタレーション版は日本の音楽家、パードン木村氏との共同プロジェクトだよ。
パードンさんを選んだきっかけは?
NYの音楽家、アキ・オンダに「コラボレーションできそうな日本の音楽家はいない?」と聞いたら、CDの山を持ってきてくれて、一番気に入ったのが彼だった。インスタレーション版はヨーロッパと日本をツアーし、東京のICCでも展示された。僕にとってパフォーマンスは誰かを旅に導くものだけど、インスタレーションはみんながパフォーマーになって楽しめるものという認識だね。
今回YCAMで展示されている「The EyeWriter」は、ザッカリーさんの他に、oFの開発者であるテオ・ワトソン、クリス・サグリュ、エヴァン・ロス、ジェームズ・パウダリーらがTEMPT1のために創り上げた作品ですね。
スゴく評価されたプロジェクトだった。全然違うラインのリサーチがひとつの目的につながったのが、とてもポジティブでハッピーな出来事だったよ。素晴らしいグループと一緒に仕事ができたのはいい経験だったね。
「The EyeWriter」に限らず、ザッカリーさんはさまざまなアーティストと共同で制作することが多いですね、
実は、ひとりで働くのは好きじゃないんだ(笑)。部屋に閉じこもって作業するのが好きなアーティストもいるけど、僕はみんなで実験したりする雰囲気が好きなんだ。日本では真鍋大度やアンカーズラボと一緒にプロジェクトをすることが多いね。日本で驚くのは、みんなシャワーも浴びないくらい忙しく働くこと(笑)。すごくインスパイアされたよ。

「The EyeWriter」 Zach Lieberman, James Powderly, Tony Quan, Evan Roth, Chris Sugrue, Theo Watson
全身麻痺になったグラフィティ・ライターTEMPT1のためにプレイステーションのカメラをハッキングし、目の動きだけでグラフィティを描くデバイスを制作。ビルの壁面に、目の動きだけで描き上げた光のグラフィティを映し出し、その模様をUstreamでTEMPT1の病室にストリーミング中継した。 アルス・エレクトロニカのインタラクティブ・アート部門において最優秀賞のゴールデン・ニカを、文化庁メディア芸術祭のアート部門においても優秀賞を受賞した。
スクリーンを飛び出したインタラクティブな作品へトレンドが移るにつれ、デザインされたプログラミング作品への関心が高まっています。「インタラクティブ」であることの定義は何だと思いますか?
UCLAのErkki Huhtamoがこう言っていたんだ。「メディアアートがそのルーツとバックグラウンドに歴史的なコンテキストを持っているのに対し、インタラクティブ・アートとはフィードバック・ループである」と。つまり、インタラクティブ・アートとは、鑑賞者に何かを投げかけてそれが返ってくるループを創り上げることだね。ループは質問を投げかけることで成立しているのだけど、そのほとんどが「あなたはそこに存在するか? いまどんな動きをしているのか?」というような基本的な質問だ。僕は、これからのインタラクティブ・アートは人々に向けて、もっと良質でチャレンジングな難しい質問を投げかけなくてはならない、と思っているんだ。
質問を投げかけるというのは具体的にはどういうことなのでしょうか?
僕の大好きな作品に、友人Zach Gageが創り上げた「Lose/Lose」(2009)という作品がある。これはネットからパソコンにダウンロードして遊ぶビデオゲームなんだ。一見何の変哲もないインベーダーゲームなんだけど、実は敵のエイリアンはユーザーのパソコンのデータになっている。ユーザーがエイリアンを撃ち落とすと、自分のパソコンのデータが勝手に消去されてしまう。この作品は、鑑賞者にスゴく居心地の悪い質問を投げかけてくる。これはエクストリームな例だけどね。
processingやoFなどのツールが登場することにより、初心者にもプログラムを用いたアート作品が作りやすくなっている環境にはなっていますが、いまだデザイナーと開発者の間には大きなギャップがあるような気がします。
プログラミングの面白いところは、クリエイティブなシステムを作ること。だから、プログラミングはデザインでもあると言える。それに、特にWebの世界でのデザインは今、オブジェクトよりもシステムにフォーカスしている。CSSのスタイルを作ることはシステムそのものだからね。そういう意味ではスゴく似ているよね。
YCAM 山口情報芸術センター企画展「The EyeWriter」は、12月25日まで開催。会場ではエキソニモ、セミトラによる”The EyeWriter”も展示されている。

「The EyeWriter」 Zach Lieberman, James Powderly, Tony Quan, Evan Roth, Chris Sugrue, Theo Watson
写真提供:山口情報芸術センター[YCAM]、撮影:丸尾隆一(YCAM)














