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Go-qualia | ゴークオリア | Musician

注目のネットレーベル、分解系レコーズを主宰する一方、ALTEMA RECORDSほか様々なネットレーベルから作品をリリースしているエレクトロニック・ミュージック・クリエイター、Go-qualia。アニメやゲームをモチーフにした楽曲制作やリミックスでニコニコ動画視聴者にも知られる彼が、初のCDアルバム『Puella Magi』をなんとworld’s end girlfriend主宰のレーベル、Virgin Babylon Recordsよりリリース。メロディとリズムを緻密に編み上げたエモーショナルなトラック・メイクに定評がある彼が「魔法少女」をテーマに、配信からCDのフィジカル・リリースに矛先を向けたファンタスティックな表現は果たしてどのように広がるのだろうか?

Text:小野田雄


Go-qualiaさんはアニメやゲームの要素を素材に、あるいはインスピレーション・ソースとして音楽制作を行ってきたということですが、音楽とアニメ/ゲームはご自分のなかでどのようにリンクしているのですか?

もともとの音楽制作は、オリジナルやリミックスを作っては、ネット上にアップするようになったのが最初ですね。ただ、反響はほとんどなかったし、そのうち更新が面倒臭くなって、放置していたんです。その一方で、アニメとか同人音楽は自分の趣味として日常的なものではあったんですけど、以前は自分がやってる音楽とは仕事とプライベートを分ける、みたいな感覚で全く別物として考えていて。で、ある時期、オリジナルを作る意味が分からなくなって、音楽作りをやめようと思っていたんですけど、ニコニコ動画にハマってるうちに、自分が好きなアニメと音楽を重ねたらどうなるんだろう? と思って、自分でも遊びでリミックスやエディット、カットアップを作るようになったんです。ただ、そのうちにシルバニアンファミリーズさんとか、そういう手法に長けた人の曲を聴いているうちに「ここまではできないし、自分のテリトリーじゃないな」ってことで、リミックスやエディット、カットアップの手法をオリジナルに反映させる方向に向かった感じですね。

では、ご自分のなかで以前は分かれていた音楽とアニメ/ゲームが今はオリジナルトラックに自然に反映されている、と。

ミュージシャンって、自分の好きなものの影響が音楽に表れるものじゃないですか。人によってはそれが映画だったり、本だったりするんでしょうけど、僕の場合、その選択肢のなかにアニメがあるというだけで、自分としてはそれが普通だし、むしろ今の若い世代にとって、そういう感覚は当たり前のことになってきているんじゃないかなって。もちろん、ここまでやってきて、CD出して、インタビューを受けるようになったのは、アニメや同人音楽から受けた影響が大きいし、それがなければ、Myspaceでずっとくすぶっていたとは思うので、そのことは忘れずに、アニメや友達がやっている同人音楽から受けた影響をオリジナルにフィードバックさせて、誰もいないテリトリーを耕している感じですね。

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それから音楽クリエイターであると同時に日本の代表的なネットレーベル、分解系レコーズの主宰者でもいらっしゃいますが、ネットレーベルの発想は同人音楽のシーンを通じて出会ったのですか?

僕にとってのネットレーベルは同人音楽と関係なく、 sutemosなどをはじめとする海外のエレクトロニカ系ネットレーベルをチェックするようになったのが最初なんです。クリエイティヴ・コモンズとして自分の音源をサイトにアップしているスウェーデンのMosaikというアーティストがスゴく好きで、あんな感じでレーベルをやりたいなと思っていたんです。そんななか、Yakoさんから「ネットレーベルやりませんか?」っていう話をもちかけられて、「自分一人ではできなかったことも一緒にやってくれる人がいたらできるかな」ってことで、僕の発案で「分解系」という名前を付けて、レーベルを始めたんです。そして、「まずはオリジナル音源を一発目に出しましょう」ということで、Myspaceなどにアップしていた曲とか今まで作った曲を作り直すようになったこともオリジナルを意識するようになった大きなきっかけですね。

インターネット上には、例えば、好きなアーティストやジャンルなどをキーワードとして、ゆるやかなコミュニティが無数にあると思いますが、ネットレーベルを通じて作品を発信する際に特定のコミュニティに触発されたり、意識したりすることはありますか?

ネットと現実、どっちもおろそかになったらダメというか。そして、ネットにも色んなコミュニティがありますけど、音楽を作る際はコミュニティを意識せず、自分のなかだけ、個人単位で音楽に変換することをずっと心がけていますね。すべては個人対個人のやりとりなんですよね。その無数のつながりがコミュニティに見えるだけ、それがたまたま分解系だったりするだけで、個人が基本であることはずっと変わらないと思います。今回のアルバムをVirgin Babylonからリリースすることになったのも、その個人と個人のやりとりで成立しているというか、レーベルを主宰するworld’s end girlfriendの前田(勝彦)さんが僕らのやっているイベント、「Out of Dots」を知ってくれて、「アルバムを出しませんか?」と突然メールをくれたことが発端だったんです。以前はもちろんそういう声をかけられたことがなかったし、「どうせ興味ないだろ?」って感じだったというか、デモを作ってレーベルに送ったり、自分のプロフィールを考えるってこともやったことはあるんですけど、それはホント空しい作業だったりして。だから、好き勝手やろうっていうスタンスでここまでやってきたんですけど、その様が前田さんにはぐっと来たのかもしれないですね。

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分解系でのCDリリースは考えなかったのですか?

全くなかったですね。Maltine RecordsがすでにCDを出しているし、その後に出しても真似になってしまう。あと、そこまで売れないだろうなとも思っていたので、ネットレーベルというスタンスをずっと続けていこう、と。それにCDを出しても、iTunesに入れてしまえば、ダウンロード音源と一緒になるわけだし、わざわざコストがかかることを何でやるの?って(笑)。今回のリリースに関しては、完全に僕個人のCDを出しましょうっていうお話だったし、僕がやりたいようにやった結果をそのまま出したいということだったので、分解系とは別にリリースすることを決めました。そして、出すにあたって、分解系という名前を使うのも、分解系とVirgin Babylonが共同で告知したりするのも、まぁ、レーベル主宰者の職権乱用みたいなことです(笑)。

大局的に、現在の音楽産業では、CDというフォーマットは配信によって淘汰されつつありますが、CDというフォーマットについてどのようなに思われます?

いや、むしろ、CDがまだなくなってなくてよかったなと思ってますね(笑)。なんだかんだアナログのフォーマットもまだ残っていますし、CDのリリースも少なくはなってもなくなることはないと思っているんですけど、僕自身、声優さんのアルバムとかアニメのサントラ、アニソンなんかはCDで買っていますからね。というのも、配信だと音源はmp3が中心なのに対して、CDだったら音質のいいwavで保存出来る。そして、アートワークを手に取れることが自分にとってはデカいし、フィジカルなフォーマットがなくなってしまうのはちょっとな、と思うんですよね。

今回のアルバムにしてもCDは80分という収録時間の制約があるわけですが、配信の場合、収録時間の制約がなく、作品完成からリリースまでのタイムラグもCDと比べて短かったりしますよね。

実は今回のアルバムを作るにあたって、できた曲を20曲送った後にYakoさんから「CDの最大収録時間は80分ですよ」って言われるまでCDのフォーマットを無視してしまっていたっていう(笑)。だから、Virgin Babylonから出すCDと分解系から出す配信作品を分けて、配信作品はVirgin Babylonから出すアルバムと地続きなもの、アルバムが一端終わったと見せかけてまだ続いているということにしました(笑)。そして、その2作品のトータリティを考えて、同じ素材を使って別の曲を作ったり、サンプル・フレーズも同じネタを別の曲に入り込んでいたりっていうことを意識しましたね。

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ちなみにもともとはロック・リスナーだったとか?

真剣に音楽を聴き始めたのはオルタナティヴ・ロックですね。当然、ヴィジュアルも関係するんですけど、音そのものから沸き立つものを意識して聴くようになって、サブポップみたいなインディーズ・レーベルや、ソニック・ユースもメジャー以前の作品まで手を伸ばしたり、そういう感じでどんどん深く掘っていってよく分からないところにいって。その一方で全く違うチャンネルでブラック・ドッグとかLFOエイフェックス・ツインの『Ambient Works』とか、そういうテクノも聴くようになって、ケン・イシイさんがヨーロッパから作品を出した時、「あ、音だけだから日本人はいけるんだな」って思ったことをきっかけに、シンセを買って曲を作り始めたんです。ただ、「シンセだけで曲を作れるほどの才能がないな」ってことで、サンプラーを買い足したり。そういう流れがひとつになったのはパソコンで曲を作るようになってからですね。

テクノも聴かれていたということですが、Go-qualiaさんの作品はダンス・ミュージックというより、むしろ、リスニングに寄った作風が特徴的ですよね。

ミニマルとかハウスはダンス・ミュージックとしてハマった時期もあって、家でいくらゴリゴリのテクノをかけても、箱じゃないと味わえないものは絶対あるし、クラブには行ってました。ただ、ここ最近は体力的にしんどくてクラブにも行かなくなったし(笑)、自分の嗜好も変わって、今は音楽の感情的な部分、エモいところに惹かれて、例えば、ギターのノイズでアガっていく感じを波形で表現するとか、オーケストラの盛り上がりをサンプリングで作り出すとか、そういう感じで音楽を作るようになったんです。そして、僕は機材やソフトウェアにこだわらず、どちらかといえば、あるもので作り上げていくのが楽しいし、既存の音源をサンプリングせず、その元ネタも自分で作るんですけど、ビートも既存の4つ打ちフォーマットやジャンルにこだわらず、流れを意識して、ノンビートの曲も入れたり、聞き慣れない音を入れたりしながら、きれいに作り上げていくというよりは、どちらかといえば、汚すというか、崩しながら作り上げていくんです。


今回のアルバムのテーマは「魔法少女」ということですが、エモーショナルなメロディやトラックの起伏が作品全体に流れるストーリーに沿うように進んでいく作りになっていますよね。このテーマはどのように着想されたものなんですか?

アニメ『魔法少女まどかマギカ』を観ていて、それまでの魔法少女ものとは違う角度から刺さったんですね。で、これはどういうことなんだろうと自分のなかで考えたんです。普通、魔法少女ものって、変身するのが当たり前なこととして受け入れて観るものだと思うんですけど、『まどかマギカ』は魔法少女になるまでの過程が物語になっていて、つまり、自分のなかでのお約束が覆された感覚が衝撃的だったんですね。

なるほど。

僕はネットレーベルのALTEMA RECORDSからリリースした前のアルバム『Fantasia For Child In Me』でゲームの『ファイナルファンタジー』みたいなファンタジーを意識しながら作品を作ったんですけど、「そういえば、魔法少女もファンタジーじゃん」って思ったんですよね。あと、『まどかマギカ』のデザインと設定を担当した(アニメーション作家ユニット)劇団イヌカレーさんの世界観がエモくて、「これ、スゴいエレクトロニカだろう」と思ったんです。で、今回、CDというパッケージで作品をリリースするにあたって、そういう感覚の集大成的な作品を作りたいなって。ただし、既存の魔法少女ものに沿った作品を作るのは違うなと思ったので、そのコンセプトやストーリーも自分で掲げた上で作ることにしたんです。

そのコンセプトやストーリーに沿って作品が展開していく感覚は、一般的な音楽イディオムとは明らかに異なっていて、新鮮な響きが感じられる作品ですよね。

たとえば、ゲーテの戯曲『ファウスト』をもとにシューベルトが作曲したように、音楽家だって、色んな形で進化しているんだから、現代だったら、魔法少女をテーマに曲を作るのも自然なことなんじゃないかって。ただ、アニメのために作られるサウンドトラックやアニメへのリスペクトで作られる同人音楽はあっても、ミュージシャン側の方からアプローチする今回のような作品は、意外に少ない気がするんです。みんなもっとやればいいのにって思うんですけどね。

Go-qualia「Requiem」

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