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CHRISTIAN DADA | クリスチャン・ダダ | Fashion Designer

ダムタイプの作品「S/N」にインスパイアされ、「死」の象徴としての「骨」を身に付けたモデル達をランウェイに登場させたCHRISTIAN DADAの2012年春夏シーズンのコレクション。デザイナー・森川マサノリの内面をコンセプチュアルに表現するアート色の強いコレクションによって、デビュー後わずか数シーズンでその存在感をアピールし、つい先日、レディー・ガガの衣装を手がけるなど、その注目度はますます高まっている。着ること、買うことだけではないコミュニケーションのあり方を模索し、ファッションの可能性を拡張させる新鋭デザイナーに、インタビューを行った。

Text:原田優輝


ファッションに興味を持つようになったのはいつ頃からですか?

もともと祖父が刺繍や服飾資材のお店をやっていて、昔ながらのハンド刺繍などを面白いと思って見ていたんです。ただ、本格的にファッションに目覚めたのは中学になってからで、まずは着るところから入っていきました。次第に、制服の裏地に生地を縫いつけたりということをやり始めるようにもなりましたが、その頃はデザイナーになりたいということを思っていたわけではありませんでした。


デザイナーを意識するようになったきっかけは?

漠然とファッションの仕事に携わりたいと思い、大阪で服飾の専門学校に入り、デザインの勉強などもしたのですが、当時は「デザイナーはそんなに甘くない」という思いがどこかにありました。その後、東京に出てきて、まず企業に入って勉強しようという思いから某アパレル会社に入るのですが、当時は販売員として試験を受けたものの企画として抜擢されたことがひとつのきっかけになったのかなと思います。その時に自分でデザインしたものが工場生産などを通して仕上がった喜びなど、「デザイン」というものを意識し始めました。その後あるきっかけから海外に行く機会ができ、ロンドンでシャルル・アナスタズというデザイナーに師事して、そこで色々学ぶことができました。

ロンドンでの環境は日本とはだいぶ違うものでしたか?

日本で働いていたところが、大手ではなかったのですが事業部としてしっかりシステムが確立した会社だったこともあり、日本ぽくカチっとした感じだったんです。一方で、向こうはデザインに対しても抜け感があるというか、頭でっかちになりすぎないデザインが全体的に多いという印象を受けました。また、日本では刺繍や生地作りなどその他工芸的なアプローチが好まれて、そういったものに特化した方が評価もされやすい傾向なのですが、海外はその当時は特にもう少し美術的なものや造形的に面白いものが評価されたりしていました。その辺の根本的な違いもあると思います。

ロンドンにいる頃に、自分のブランドをやることも決めたのですか?

はい。約2年ほどシャルルのもとで働いていたのですが、その終わりの頃に自分でブランドをすることを決めて、帰国しました。とはいえ、ブランドを始めるには資金が必要じゃないですか。それで結局友人と共同でやる形になったのですが、そのブランドはいま自分がやっているようなことよりも考え方がマーケット寄りだったこともあり、2年くらい一緒にやった後、方向性が合わずに脱退しました。その後1年の間を置いて、いまのブランドを始めることになりました。


ブランド立ち上げ当時、明確なヴィジョンはありましたか?

明確なヴィジョンというより、むしろいまもそれを模索しているからこそ、デザイナーとしてやっていて楽しいというところがありますね。周りの人から見たCHRISTIAN DADAのイメージというのが僕の独自性でもあり、それにつながってくると思うのですが、自分自身それを模索しているところがあって。単純に人間として発展途上中の人間だと思っていますから。僕はいつも、自分がその時々に思ったことや、抱いてきたコンプレックスなど内面的な部分をコレクションで表現しているところがあるんです。

その辺りが森川さんにとってのファッションの存在意義にもなっていそうですね。

そうですね。もともと僕は自分のことがスゴく嫌いで、仲の良い人以外とは会話もできないタイプの人間だったのですが、そこから解放してくれたのもファッションだったんです。だから僕にとってファッションというのは、いまでも重要なコミュニケーションツールになっていて、自分の内面を表現して、人に考えてもらったり、見てもらったりすることが、僕にとってのファッションなのかなと思っています。


CHRISTIAN DADAのコレクションを見ると、商業ベースで展開される現在のファッションシステムから一定の距離を置こうとしているように感じます。

例えば、僕のショーを見ると、その後に「あれはないよね」とか「カッコ良かった」とかその場で色んな会話が生まれたり、その後もネットなど色んなところでコミュニケーションが生まれていくと思うんです。ファッションには、着ることや買うこと以外にもつながっていけるコミュニケーションの成立の仕方があると思うんです。だから僕はいつも、コレクションというのは、年に必ず2回ある貴重なコミュニケーションの場として捉えています。アートや音楽などには、こうしたスパンはないですからね。

ネットを通じたコミュニケーションの話も出ましたが、SNSの登場以降、ファッションのあり方も徐々に変わりつつあるような気がします。

個人個人が自分で発信できるシステムが整ってきていますよね。ボーダレス化が進み、インタラクティブにやっていける環境もできつつあるからこそ、これまでの制限を外したものがもっと出てきてもいいんじゃないかなと思っています。例えば、僕は学生時代にダミアン・ハーストマシュー・バーニーといったアーティストの作品に衝撃を受けたのですが、当時はあくまでも別ジャンルの話という考えがありました。でも、グローバル化がどんどん進み、ソフト寄りの考えが主流になってきた時に、そうしたものもスッと自分の中に入ってきて、消化できるようになった気がします。

前回のショーもダムタイプの作品「S/N」にインスパイアされたことがきっかけになっていますよね。

「S/N」は、作者の古橋悌二さん自体が同性愛者でありHIV患者だったので、それに対しての訴えがテーマになっている作品なのですが、今回のコレクションでは、概念的なアイコンとして「骨」というものを取り出しています。「S/N」という作品に対する具体的なオマージュを捧げたコレクションというよりは、この作品のために彼が残した言葉に触発されたところが大きかったですね。というのも古橋さんは、「作品を創る、それを評価する人がいてそれを好む人、嫌う人がいるというそういったコミュニケーション、またはシステムに僕は飽きてしまったんです」というようなことを言っていて、その考え方に触発されて、今回のような非商業的なものを出すことも今の時代には価値があると思ったんです。


アイコンとして実際にコレクションに登場した「骨」自体、既存のファッションの基準からすると、着られるものではないですよね。

そうですね。今回は、服を作るプロセスに実験的なアプローチを取り入れました。ファッションデザインにおける伝統的な作り方というのは、まず最初にテーマがあり、次にそれを洋服に落とし込んでいくためのアプローチを考えていくんですね。例えば、テーマが「骨」であれば、それを洋服のディテールの部分で表現したり、生地やプリントものを作ったりすると思います。でも、今回僕はそうした工程を一切飛ばして、自分が作りたい骨の造形、ルック自体をはじめにスケッチし、それをもとにコレクションを組み立てていきました。ショーが終わった後に、ジャーナリストなどから洋服への落し込みがなかったという声もありましたが、それをむしろ狙ってやったところがあるんです。

既存のファッションに対して問題提起していくという意識も強そうですね。

先ほどの工芸的なものが評価されているという話もそうですが、日本のファッションシステムは独特のものなので、それを同世代の人たちで塗り替えていけないかなという思いはありますね。現行のファッションシステムで、時代に合わないと思うものもあるんです。例えば、僕もやっているのですがオリジナルテキスタイルを作る場合、ミニマムロットが発生するので、型数の展開を増やして配分していかないと量産が難しかったりする。ただ、そうやって枠が決められてしまうと、デザインとして小さくなるというか、制限されてしまう部分がスゴくあるんじゃないのかなと。そうした矛盾を抱えたまま作っていくということが、いまの時代に合っているとは思えなくて。だから、デザイン軸としてはなるべく制限を減らしていきたいという思いもあります。

一方で、ブランドを継続させていくためには、コンセプチュアルな表現だけではなく、マーケットに対する意識も少なからず必要になってきますよね。


今回のショーは、特にプリミティブな表現をしたこともあり、メンズを外しました。というのも、今の僕の中では、レディスとメンズでは作る際の思考回路が全然違うんです。実際にレディスとメンズでテーマは分けていますし、メンズに関しては、その時の気分やサブテーマのようなものを入れています。コンセプチュアルに特化しすぎない表現といえば分かりやすいかもしれません。一方で、レディスについてはマーケット云々というよりは、自分の内面を正直に表現していく場として考えています。ブランドとしては、メンズで売上を伸ばしつつ、レディスでは表現を追求していくというバランスでこの2シーズンやってきています。ただ、次のフェーズとして、メンズ主体で、そういった考えを混ぜ合わせた実験的な表現もしていこうと思っています。

先日レディー・ガガが来日した際には、MTV出演時の衣装のデザインを担当されていましたね。

これまで特定のひとりのために服を作ったことはなかったので、自分の中で何かが解放された感じがありましたね(笑)。国内の僕らくらいの世代のファッションデザイナーは、御三家(コムデギャルソンヨウジヤマモトイッセイミヤケ)の影響が強すぎて、プレタポルテでいかに面白いことをするかという考え方がおそらく刷り込まれているのですが、この仕事はそういうこれまでの考えを取り払ってくれました。ひとりのファッションアイコンに自分がデザインした洋服を着てもらうことで、海外の人が見てくれたり、媒体に取り上げられて評価されたりもするし、そういう部分は本来オートクチュールが持っている要素ですよね。SNS以降の時代だからこそ、オートクチュールというものの可能性を感じるし、こうした発信の仕方も全然アリなんだなと感じましたね。

最後に、今後の予定や展望などがあれば聞かせて下さい。

つい先日、CHRISTIAN DADAのWebサイトをリニューアルしたのですが、今後はECもスタートさせる予定です。いまはまだ卸ベースですが、これからは直営店などの展開も視野に入れていきたいんです。物流システムがどこか崩壊してしまっているいま、なかなか自分の意志がお客さんに伝えにくい状況が生まれているし、それは今後さらに強まっていくんじゃないかと思うんです。そうなった時に、自分たち自身で売っていける場をもっと広げていく必要があるのかなと。また、クリエーションの部分では、プロダクトの精度をさらに高めていくことはもちろんですが、先ほども話したようにメンズでも実験的なことをやっていきたい。あと、アートプロジェクト的なことをやってみても面白いと思うし、例えばメディアアートの分野などジャンルが違う人たちでも、その時々で自分が面白いと思えるものがあれば、何か一緒に表現できればと考えています。



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