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Daisy Balloon | デイジーバルーン | Balloon Artist

やがて朽ち果ててしまう花に通ずるバルーンが持つ脆さや儚さを、写真というメディアに定着させ、美しくも妖しい独自の世界観を表現してきたデイジーバルーン。国際大会にも出場する実力を持つバルーンアーティストである細貝里枝と、ヴィジュアル・コミュニケーションを生業とするアートディレクターである河田孝志のコラボレーションによって、多くの人がバルーンに抱くイメージを覆してきた異色のユニットだ。バルーンドレスを身にまとうモデルを撮影した写真作品などで、すでに国内外から高い評価を得ている彼らは、どのような関係性で作品作りに取り組んでいるのだろうか? 昨年待望の作品集もリリースされたふたりにインタビューを行った。

Text:原田優輝



デイジーバルーン名義で活動するようになるまでの経緯を教えて下さい。

細貝:もともとは私個人のプロジェクトとして2002年にスタートし、デコレーションの仕事をしたり、バルーンのイベントに出たりしていました。その後2008年に、私のWebサイトを作ることになり、その時に河田がアートディレクションを担当したことがきっかけで、ユニットとして活動するようになりました。

細貝さんがバルーンを始めるようになったきっかけは?

細貝:私は花屋に務めていたのですが、そこが珍しいところで、バルーンを作るセクションがあったんです。例えば、ウエディングの時に、花だけではなくバルーンを使って入り口にアーチの装飾を作ったりしていて、そこでひと通りバルーンの技術を身に付けることができました。

仕事としてバルーンを作っていた頃から、現在のような創作活動をするようになるまでには、どんないきさつがあったのですか?

細貝:デイジーバルーン名義で活動するようになってからもしばらくは、あくまでも仕事としてバルーンを作っていました。その後2004年に日本でバルーンの大会があって、そこに出品したことが、現在のような活動をするきっかけになりました。バルーンを作る人を大まかに分けると、丸いバルーンを使う「デコレーター」と、私のように細長いバルーンを使う「ツイスター」がいるのですが、その大会は日本で初めて開催されたツイスターのコンテストで、そこで優勝することができたんです。その翌年にはアメリカで行われた世界大会にも出たりしたのですが、そうすると自分の中で課題が生まれてくるんですね。その辺りから、「次はこういう見せ方できるんじゃないか?」というようなことをどんどん試していくようになりました。

バルーン作りのどんなところに魅力を感じましたか?

細貝:自分が作ったバルーンを子供にあげたりするような仕事もしていたのですが、何よりもまずはコミュニケーションツールとしての魅力がありましたね。その場でダイレクトに喜びが伝わっていく満足感のようなものを感じていました。その部分は今ももちろんあるのですが、コンテスト等に出すようになってからは、まだ誰もやったことがないことを切り開いていく楽しさというのも感じるようになりました。バルーンというのはまだ歴史が浅くて、開発されてない部分がスゴくあるんです。

その後、河田さんが参加されるようになったということですが、細貝さんの作品を初めて見た時にはどんなことを感じましたか?

河田:「なんだこれは?」と思いましたね(笑)。そこから色々作品を見ていくと、バルーンでドレスを作ったりしていることなどがわかり、どんどん興味が出てきました。それまでは、バルーンというものを大道芸の領域としてしか見ていなかったのですが、作品の写真を見た時に、本来のWebサイト制作という仕事を通り越して、発想がどんどん広がってしまって、一緒に何かやりたいと思うようになりました。

細貝:私はバルーンを作ることはできるのですが、基本的にはそこで止まってしまうんです。だから、河田が入り、見せ方の部分までしっかりできるようになったことは大きかったですね。見せ方をひとつ変えるだけでこんなに変わるんだと。

河田:普段デザイン業界で仕事をしていると、本当にデザインが周りにあふれているんですね。その中から何かの要素を取り入れて、自分のアイデンティティやオリジナリティを表現していくという作業を多くのデザイナーはやっていると思うのですが、デイジーバルーンでやっていることは全然違うことなんです。いままで自分の中にはなかった概念や可能性を考えていくための視点が必要で、それは開発に近い領域なんですね。最初は仕事としてアートディレクションを手がけていた感じだったのですが、仕事だけでは超えられない領域があるということがすぐにわかり、その先の可能性を考えながら、一緒に作っていくようになりました。

ターニングポイントになった出来事やプロジェクトなどはありますか?

河田:自分たちでテストシュートを始めたことですね。彼女が作っていたバルーンドレスを使って、バルーンが生地のようになびいているようなイメージのもと、テストシュートをしました。念入りにスタッフィングをして、事前に僕が手描きのコンテを作り、それをもとに彼女がバルーンを作ったのですが、おおまかなイメージこそあるものの、写真で撮影したときの具体的なビジュアルは、その場で見るまで全くわからないんですね(笑)。そうした不安を抱えながらいざ撮影をしてみると、最初はイメージと全然違って…。でも、そこに撮影スタッフの意見が加わっていくことで新しい要素が加わっていくんです。その行程にスゴく可能性を感じましたね。

イメージを形にしていく際に大切にしていることがあれば教えて下さい。

細貝:私の方はどちらかというと職人的な作業になってくるので、河田の作ったイメージやラインを表現するための技術的な部分をいつも考えていますね。

河田:作業については完全に分業制で、僕がコンテを渡して雰囲気を伝えると、あとは彼女が部屋に閉じこもって作り続けるんです。その後出来上がったものに対して、意見を言っていくという流れです。形になってみないと何もわからないところが難しいところなのですが、もし僕までバルーンを作れるようになってしまったら、逆にアートディレクションの発想が浮かばなくなってしまうような気がするんです。自分が少しでもできるようになると、作業を手伝ってしまったり、イメージを考える段階で何ができて何ができないかを自分でジャッジをしてしまう。そうすると新しいものが生まれない気がするので、極力僕はバルーンには触らないようにしています。

細貝:どこが私の限界なのかというのを知らないからこそ、限界を超えていけるような要望が出てくると思うんです。それに対して、ブツブツ言いながら私が作っていくという感じですね(笑)。

河田:それでも撮影の段階では、僕らふたりの間ではある程度やれることやれないことの共有ができているんですね。一方で撮影スタッフにはそれがわからない。だからこそ、そこで新しい意見が出てきて、可能性がさらに広がっていくんだと思っています。

バルーンドレスを作るようになったきっかけを教えて下さい。

細貝:最初のきっかけは、私がベルギーにコンペティションで行った時に、フランス人がやっていたバルーンドレスのセミナーです。それを見て、帰国後自分でも試してみたんです。実際にやってみると、人にバルーンを着せることはスゴく面白いのですが、時間が経つとしぼんでいってしまうんですね。人がバルーンを着ている時の美しさを留めておきたいという思いがあって、それが写真や映像に残していくということだったんです。

時間的な制限を持つバルーンは、もともと細貝さんが携わっていた花に通じるものがありますね。

細貝:そうなんです。フラワーアレンジメントや華道などがあるように、私も個人的には、バルーンの技術をどんどん継承していきたいと思っています。あと、バルーンはいくらがんばっても1週間から10日くらいしかもたないので、最近はドライフラワーじゃないですが、保存する技術や方法も考えていきたいなと思っています。

河田:それで最近は、バルーンブローチというものも作っています。これは一般の人がバルーンを身に付けるという発想から生まれたプロダクトです。こういう方向性も今後はもっと追求していきたいなと思っています。例えば、作品展示の依頼があった時に、写真以外の方法だとどうしても難しいんですね。以前に表参道にあるGYREで内装を手がけた時には、10日間で3回もバルーンを入れ替えました。

細貝:手伝ってくれた人たちも含め、ここでもある意味限界を超えることができました(笑)。

河田:これはこれでとても良い展示になったのですが、例えば海外で展示をするとなると、もう少し簡単に持っていけるプロダクト的な要素がないと厳しいと思うので、その辺りを今後は開発していきたいと思っています。

仕事の依頼なども結構多そうですね。

河田:ディスプレイの話などはありますが、その時々といった感じですね。テストシュートをしてサイトに作品をアップし始めた頃は、海外からとにかく展示をしないかという感じのコンタクトが多かったのですが、ある程度落ち着いてくると、声をかけてくれる人たちも、バルーンで何ができるかという部分をもっと考えてくれるようになるんですね。最近は、僕らだけではなく一緒にその可能性から考えてくれるクライアントから声をかけてもらえることが多くなりましたね。


最後に、今後の展望などがあれば教えて下さい。

河田:昨年作品集を作れたことは僕らのなかでひとつの区切りになったので、今年は次の段階として、ストーリー性のある展示を複数に分けて展開していけないかなと考えているところです。作品集の中にも「Forest Apple Bear」というストーリー性のある作品が収録されているのですが、そういうものを3回くらいのシーズンに分けて展示をしていけたらなと。あとは、教育という部分を意識したワークショップなども今後は打ち出していきたいですね。

細貝:いまは月1くらいペースで子供向けのワークショップをしていて、大人向けの教室も月に数回やっています。特に子供向けのワークショップでは、みんなの想像力を引き出したいと思っているので、私がふくらませたバルーンをたくさん持っていって、それを好きなようにつないでもらうというようなことをしています。最初にひねり方やつなぎ方を教えた上で、「生き物」などをテーマに自由に作ってもらうと、私が想像する以上のものを見せてくれるんですね。こうしたワークショップでは、私自身が子供たちから教えてもらうことも多くて、いつもとても楽しみにしています。

河田:バルーンのワークショップをすると、それだけで大人でも笑顔が生まれるんです。自分が手を動かすことで、バルーンが子供の触るものだという概念が一気に崩されて、新しい感覚を得ることができる。今後はさらに、そうした純粋な驚きや喜びだけではない、その次の可能性を作っていけるようなワークショップも提案していきたいと考えています。



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