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Film『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 | ゼア・ウィル・ビー・ブラッド Review

20世紀初頭のカリフォルニアを舞台に、「アメリカン・ドリーム」に溺れた狂気の石油王の生涯が描かれた『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』。『ブギーナイツ』(97)、『マグノリア』(99)などで若くして注目を集めた俊英ポール・トーマス・アンダーソン、本作で『マイ・レフトフット』以来2度目となるアカデミー賞主演男優賞を受賞した名優ダニエル・デイ=ルイス、劇中を支配する緊張感あふれるオリジナル・スコアを手掛けたジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)など、各分野の才能が集結したスケール感あふれる大作がまもなく公開される。

Text:原田優輝


エンドロールにもクレジットされているように今は亡きロバート・アルトマン監督に捧げられたポール・トーマス・アンダーソンの最新作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』だが、ここで繰り広げられるのは、彼の評価を高めた前述2作のような「ロバート・アルトマン」的群像劇とは、大きく趣きを異にする物語だ。
登場人物のセリフを一切排除し、ジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)が鳴らす不協和音のみが、本作の底知れぬ不気味さと恐ろしさを象徴する冒頭の20分間で不穏に幕を開ける本作では、一人の男の強欲と狂気が骨太な一大叙情詩という古典的なスタイルで紡がれている。


一攫千金を夢見る山師ダニエル・プレインビューが、息子のH.W.とともに石油が眠るアメリカ西部の小さな町「リトル・ボストン」を訪れ、やがて巨万の富と権力を手にする。しかし、ある日、息子H.W.が、採掘現場で爆発炎上の大事故に巻き込まれ、聴力を失ってしまうことに。頂点を極めたプレインビューは、地元牧師イーライ・サンデーとの確執や息子への絶望とともに人間不信に陥り、破滅への道を辿っていくー。


登場人物たちの感情が、まるで今にも地底から沸き出んとするドス黒い石油のように、沸点すれすれの極限状態で推移していく緊張感のある物語のなかで、最も興味深いのは、プレインビューと彼の存在を疎ましく思う“ナルシスティック”な牧師イーライとの対比だ。
「神」に仕える牧師と「富」を信奉する山師が、地位や名声を妄信し、その「虚栄心」はいつしか相手への「復讐心」へと変わり、ふたりを破滅的なカタルシスへと導いていく。


欲望にまみれた男たちの凋落を描くアンダーソン監督の手腕は、この映画を単なる教訓じみた作品に終わらせず、その背後にある欲望に突き動かされる人間たちのある種の「強度」を露にし、それに対する畏敬の念すら誘う演出にこそ、発揮されているように感じられる。



ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
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