
Film『ビューティフル・ルーザーズ』 | ビューティフル・ルーザーズ Review
グラフィティ、スケートボード、サーフィン、パンクなどに影響を受けた若者たちによって、90年代初頭に興されたストリートカルチャー・ムーブメントを体系的に提示したグループ展『ビューティフル・ルーザーズ』。04年にシンシナティでスタートし、その後サンフランシスコ、ボルチモア、イタリア・ミラノを巡回するなど、世界的な注目を集めたこの展覧会でディレクターを務めたアーロン・ローズが、同名のドキュメンタリー映画を完成させた。一時代を築いた“美しき落伍者たち”の素顔と軌跡が記録された貴重な作品だ。
Text:原田優輝
92年にニューヨーク・イーストヴィレッジにオープンした小さな手作りギャラリー「アレッジド」。ギャラリー経験はおろか、専門的なアート教育を受けたこともなかったアーロン・ローズによって設立されたこのギャラリーはやがて、マーク・ゴンザレス、マイク・ミルズ、バリー・マッギー、ハーモニー・コリンを始めとする若きアーティストたちのたまり場となる。
彼らもまた正統なアート教育を受けていないアウトサイダー(ルーザーズ)たち。だが、既存のアート文脈とは大きく異なるD.I.Y.精神にあふれた彼らの創造性は、90年代という時代の波に後押しされ、それ以降のアートを取り巻くすべての状況を覆すほどの大きな革命を起こすことになる。
次々と世界的成功を収めていく仲間たちを尻目に、次第に運営が危ぶまれていくアレッジド・ギャラリー。そんな葛藤を抱えながらも、仲間たちとともに成長してきたアーロン・ローズが監督を務めた本作では、注目度の高まりとともに訪れる「コマーシャリズム」という名の宿命が、アーティストたちを取り囲んでいく当時の様子が淡々と映し出される。そこで浮き彫りにされるのは、押し寄せる商業主義の波に迎合せず、かといってストイックに拒絶するでもない、何にも縛られずにただひたすら自分たちの表現を続けようとする彼らの自由なアティテュードだ。
特に後半、来日した彼らの東京でのドキュメント映像には、色々と考えさせられることも多いはずだ。
90年代カルチャーを牽引し、設立からちょうど10年後の02年、その役割を終えたアレジッド・ギャラリー。90年代における「ファクトリー」とも言えるこの“聖地”から、世界中の都市に広がり、根付いていったストリート・カルチャーは、これからどこに向かおうとしているのだろうか?
「何かを考えているなら、各々の方法でそれを表現するのが義務なんだ」というハーモニー・コリンの言葉が心に響く。
『ビューティフル・ルーザーズ』は、8/2よりシネマライズ、ライズXほかにてロードショー。
監督を務めたアーロン・ローズと出演アーティスト、スティーブン・パワーズ(a.k.a.エスポ)のインタビューが、INTERVIEWページにて近日公開予定!!

Information
『ビューティフル・ルーザーズ』
監督:アーロン・ローズ
共同監督:ヨシア・レナード
音楽:マニー・マーク
出演アーティスト:トーマス・キャンベル、ジョー・ジャクソン、クリス・ジョハンソン、マーガレット・キルガレン、ハーモニー・コリン、ジェフ・マクフェトリッジ、バリー・マッギー、マイク・ミルズ、エド・テンプルトン、スティーヴン・パワーズ、シェパード・フェイレイほか
配給:ファントム・フィルム
2007 / アメリカ











