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Film『落下の王国』 | 落下の王国 レビュー

「外見と中身の違う映画を作りたい」と話すターセム監督。『落下の王国』における“外見”とは、ターセム監督が“26年の構想”を経て、世界遺産13箇所・26ヵ国以上”で“CGを使わずにロケ”をした映像美である。

Text:須永貴子


象が海を泳ぐシーンは、16年前にターセムがコークのCMで同様のシーンを撮影したインド・ニコバル諸島で。その他、中国・万里の長城、カンボジア・アンコール・ワット、ナミビア・ナミブ砂漠、フィジー諸島などを舞台に、冒険譚が繰り広げられる。石岡瑛子による衣装デザインも、もちろん映像美に拍車をかけている。
その冒険譚とは、映画の撮影中の事故でケガをしたスタントマンが、入院仲間の少女に話して聞かせる6人の勇者の物語。悪の総督オウディアスに復讐するために、6人が世界各地を旅する映像が繋げられていく。

リアルとファンタジーの二層構造になっている本作は、祈る時に交差する10本の指のように、2つの世界が見事に溶け合っている。その理由としては、役者が2つの世界でキャラクターを演じ分けていること。そして、スタントマンが少女に物語を聞かせるのは、彼のある目的のために少女を操るためなのだが、その場しのぎであるがゆえに、語り手と聞き手の心理状態が物語に影響を及ぼしていくこと大きい。そして、リアルとファンタジーが結びついた瞬間、その2つの世界とも、予想外の結末を迎えることになる。
 
“自暴自棄の青年が少女と出会って立ち直る物語”も“6人の勇者の復讐の物語”も、一元的な物語としては映画として成立するが、それはよくある話。それを映像力でスタイリッシュに魅せるのは、ミュージックビデオやテレビCM出身の監督の得意技だが、ターセムは2つの物語が溶け合うケミストリーを生み出した。それこそが、この作品の“中身”なのだ。

落下の王国
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