
Film『メイプルソープとコレクター』 | メイプルソープとコレクター レビュー
1989年、42歳でエイズによって夭折した写真家ロバート・メイプルソープ。彼のとびきりハンサムなポートレートで始まる本作は、彼が“唯一愛した女性”パティ・スミスのインタビューへと移行する。彼女の口から語られるのは、メイプルソープとの親密な関係が終わってから彼らの前に現れた、“第3の男”の話。
Text:須永貴子
その男の名は、サム・ワグスタッフ。ニューヨークの名家に生まれ、アート・キュレーターとして活動していた彼と、駆け出しの写真家だったメイプルソープはとあるパーティで出会い、すぐに恋人となる。ふたりの年の差は25歳。奇遇にも、誕生日が同じ11月4日だった。
ワグスタッフはメイプルソープにカメラやスタジオを買い与えた。一方で、当時はまだ”芸術未満”の存在だった写真を、独自の審美眼で買い集め始める。1万8000点ものプライベート・コレクションから構成された写真展を企画・開催することで、写真そのものの価値を押し上げてしまった。お膳立てが整った中、アートシーンに紹介されたメイプルソープは、その刺激的な作風もあり、一流アーティストの道を一気に駆け上がる。
このドキュメンタリーは、パティ・スミスに加えて、たくさんの人々の証言で構成されている。なかでも衝撃的なのは、メイプルソープが「より良い写真を撮ることがすべて」という思いよりも、「写真家として成功したい」欲求が強い野心家だったという事実。そして、その野心があればこそ成り立った、ワグスタッフとメイプルソープとの、利害関係と恋愛関係の危ういバランス。
愛する者の欲望を叶えるために、ワグスタッフは社会における写真の意味づけから変えていった。その手法は、彼がかつて所属していた広告的手法以外の何物でもない。広告業界を捨て、愛するアートの世界に生きようと決めた彼が、写真家である恋人のために取ったこの方法が内包する自己矛盾は、すさまじく人間的でロマンチックだ。
『メイプルソープとコレクター』は、3/28よりライズXにてロードショー。

Information
『メイプルソープとコレクター』
監督:ジェームズ・クランプ
出演:ロバート・メイプルソープ、サム・ワグスタッフ・パティ・スミス
配給:ロングライド
2007 / アメリカ、スイス
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