
BOOK『PLAY』/ 菊地敦己 | 作品集『PLAY』レビュー
グラフィックデザイナー/アートディレクターの菊地敦己が、約10年間に亘り手掛けた仕事を厳選した作品集を出版した。2000年にWebディレクター斎藤寿大らと「BLUEMARK」を設立し、広告、雑誌、プロダクト、飲食店プロデュースなど、幅広く活動を行ってきた彼の活動の軌跡がこの一冊に凝縮されている。
Text:小島直子

「sally scott」ノベルティ ニューヨーカー 2007
本作品集は『mina perhonen』、『sally scott』のブランディング、「横浜トリエンナーレ 2008」のアートディレクション、「青森県立美術館」のVI/サイン計画といった代表的なクライアントワークを網羅している。どの作品も、独特な配色と絶妙な空間で構成されたグラフィック、和文と欧文を混在させたタイポグラフィが特徴的であり、その線や文字のディテールひとつとっても、無駄がなく計算されている。こうした美しさと機能性を兼ね備えたグラフィックデザインを生み出せるのは、デザインの役割や必要性を熟知し、そこにつきまとう制限や課題をポジティブに捉え、そのルールの中で遊ばせるテクニックを持っているからなのだろう。

「青森県立美術館」VI /サイン計画 青森県 2006

(左)「インコ」ショップデザイン ブルーマーク 2005
(右)『装苑』「アノニマスデザインとモード」エディトリアル 文化出版局 2008
巻末にはデザインジャーナリスト紫牟田伸子氏による3日間・計8時間ものロングインタビューを掲載。大学時代のエピソードや会社設立の経緯、デザインに対する姿勢や考え方などが語られている。
ブルーマーク設立以後、クライアントワークだけにとどまらず、自社運営によるカフェ「インコ」などのプロデュースや、若手アーティストの作品集などの出版活動も行い、組織や流通の仕組みまでもデザインしてきた菊地。仕事の内容は多様だが、その全てが一貫した理念の元に作られている。だからといって、デザインの方法論を形式化し、閉塞させてしまうのではなく、自発的な活動によって解放させる仕組み作りを志し、フレキシブルに対応しているということが、このインタビューを通して見えてくる。
本書は、ただの作品集では終わらず、「デザインの役割とは?」「良いデザインとは?」という疑問に対するヒントが必ず見つかる一冊だ。また、ブックデザイン、印刷、製本のクオリティにもぜひ注目してもらいたい。

『広告』 雑誌デザイン 博報堂2004-2005

Release Information
『PLAY』
著者 : 菊地敦己
出版 : 誠文堂新光社
リリース日 : May 10,2009
Artist Profile
菊地敦己
1974年東京都生まれ。武蔵野美術大学彫刻科中退。1995年在学中にネオスタンダートグラフィックス設立。1997〜1998年「スタジオ食堂」プロデューサー。2000年ブルーマーク設立。アートディレクターとして総合的なビジュアルのブランディングのほか、プロダクトデザインやカフェのプロデュースなども手がける。現在、東北芸術工科大学で客員教授を務めている。













