
MUSIC『LUSH』/ あらかじめ決められた恋人たちへ | CD Review
ピアニカ奏者・トラックメイカーの池永正二率いるダブユニット、あらかじめ決められた恋人たちへ。一度聞いたら忘れない名前のインパクトに勝るとも劣らない、圧倒的なライブパフォーマンスは、各地でオーディエンスを熱狂させ続けている。そんな話題沸騰の”あら恋”が、CDとDVDの2枚組”フェイクメンタリー”ライブアルバム『ラッシュ』をリリースする。
Text:小島直子
本作は、今年2月に渋谷LUSHにて開催された公開ライブレコーディングの模様をCDとDVDにした、初のバンド編成でのレコーディングによるライブアルバムだ。あえて虚構を見せて事実を作り上げる「フェイクメンタリー(モキュメンタリー)」をコンセプトに掲げ、ただのライブ音源には終わらない作品に仕上がっている。
もともと、池永のソロ・プロジェクトである「あら恋」は、「アルバムとライブとのギャップを見せていきたい」という考えにより、アルバムでは自らが制作したトラック主体、ライブではサポートメンバーと共にバンドセットでの演奏というスタイルが貫かれてきた。この『ラッシュ』は、その”バンド”としてのあら恋を音源化してほしいという多くの声に応えて完成した作品でもあり、 これまでのアルバム以上に、唯一無二の「あら恋」サウンドが色濃く確立されている。
スカーンと突き抜けたドラムス、咆哮するベース、ノスタルジックなピアニカ、叙情的なテルミン。
ダブ、ロック、エレクトロニカを内包しつつ、混沌とした世界観は時に穏やかで、時に狂気をはらみ、中毒にかかったように私たちを惹き付けてやまない。特にM2~M4にかけての静と動が入り乱れたような展開には、鳥肌が立つ程感情を揺さぶられる。
また、雑踏、チャイム音、子供の声、車内アナウンスといった様々な生活音がドラマティックに使われ、「音楽で映画を作りたい」と語っていた池永の思いも、このアルバムの随所に散りばめられている。
さらに、前作「カラ」に続き、林絵美子がデザインを手掛けたジャケット、ブックレット、B4判ポスターなど、こだわりのアートワークにも注目したい。


Release Information
『LUSH』
アーティスト名:あらかじめ決められた恋人たちへ
レーベル : MAO
リリース日 : July 8. 2009
Artist Profile
あらかじめ決められた恋人たちへピアニカ奏者/トラックメイカーの池永正二を中心とした、叙情派エレクトロ・ダブ・ユニット。これまでに3枚のフルアルバム『釘』(03年)、『ブレ』(05年)、『カラ』(08年)を発表している。そのほか、あがた森魚、はっぴぃえんど、赤犬、等のトリビュート/リミックスワークに参加する一方で、映像的なセンスを持った音楽性が高く評価され、映画音楽、演劇音楽の製作も手掛けている。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008出品作品、映画「青空ポンチ」(柴田剛監督)/音楽担当は08年公開。演劇「パンク侍、斬られて候」(山内圭哉主演・脚本/町田康原作)/音楽担当は09年初頭に全国規模で再演。
メンバー、池永正二(track・melodion)/キム(drums)/剣(bass)/クリテツ(テルミン・パーカッション)/カミジョー(bass)/りしゅう(bass)/まどか(kye)












