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Film『しんぼる』 | しんぼる レビュー

“ヒーローの表と裏”をテーマにした監督デビュー作『大日本人』(07年)で、映画界に賛否両論を巻き起こした松本人志が、第二回監督作品『しんぼる』を完成させた。前作同様、自身が企画・監督・主演を務め、盟友・高須光聖とともにシナリオを練り上げた本作は、前作を上回るスケールで、またしても新たな映画体験をもたらしてくれる作品に仕上がっている。

Text:原田優輝


デビュー以来25年以上に渡り、お笑い界のカリスマ的存在として、お茶の間を挑発してきた松本人志。そのシュールかつアーティスティックなセンスは、国内の様々なクリエイターたちにも多くのインスピレーションを与え続けている。そんな現代きっての天才による2年ぶりとなる長編映画『しんぼる』もまた、観客の想像力を刺激しまくる圧倒的な作品だ。

一切の情報を明かさずに公開された前作同様、今作についてもここであまり多くを語ることはできないが、松本の言葉を借りるなら、「ある閉じこめられた男が脱出を測るが、様々なことに巻きこまれていく話」というのが、作品の大まかな筋書きだ。
それだけを聞くと、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督による密室サスペンス『CUBE』のような展開を想像する人も多いだろう。
だが、『大日本人』公開時に、「人と作るものがカブらないために、『観ておく』ことは必要だと思っていました。今も昔もこれからも、僕のつくるものは誰にも毒されていないです」というコメントを残している松本だけに、当然同作の存在は知っていたはず。その上であえて、「密室脱出劇」という設定で展開される本作では、『CUBE』とは似ても似つかない唯一無二の松本ワールドが、次々と展開されていく。脱出を計る男の苦悩が、緊張感あふれる密室空間で、松本ならではのシュールな「笑い」とともに描かれている。
一方で、その密室と外界を繋ぐプロットとして、しばしばインサートされるメキシコのとある町のプロレスラー、エスカルゴマンの物語。家族のために闘うメキシコ人プロレスラーと、密室で絶叫する水玉パジャマを着た男。予想もつかない両者の関係は、やがて思いもよらぬ接点を持ち、壮大なクライマックスへとなだれ込んでいく―。

ふたつの並行するストーリーが終末に向けてシンクロしていくという極めて映画的な構造を、「コント」+「サスペンス」+「SF」とも言うべきかつてない手法で描き切った実験作『しんぼる』。決してフォロワーを生むことを許さない圧倒的なオリジナリティで、「さすが天才・松本」と思わせてくれる現時点での最高傑作と言える作品だ。

しんぼる
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