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Film『トルソ』 | トルソ レビュー

タイトルの「トルソ」とは、胴体部分のみを造形した彫刻や、マネキンのこと。この映画はそのトルソを心の拠り所に生きるヒロコ(渡辺真起子)と、父親の違う妹・ミナ(ミナ)、2人の女性を対比させながら、都市に生きる女性の姿を描いていく。

Text:須永貴子

ヒロコは地方出身の独身で、年の頃は40歳前後、アパレル会社でOLをしている。いつもすっぴんで、同僚からの合コンの誘いにも乗らず、恋人を作る気もない。なぜなら、彼女はトルソを抱きしめるだけで充分満たされているからだ。
こうして彼女の状況だけを書き連ねると、ヒロコを「さみしそう」「負け組」と捉える向きもいるだろうが、彼女は孤独だけれど、いや、孤独だからこそ、きちんと自炊をし、居心地の良いインテリアに囲まれ、自分の生活をそれなりに楽しんでいる。一方のミナは恋愛をすることには長けているが、男からの暴力に悩み、CM業界で成功する夢の前にくじけそうである。姉妹は父親が違うこともあり複雑な感情をお互いに抱き合っていたが、ヒロコの部屋にミナが転がり込んできたことで、2人の関係に、そしてそれぞれの人生に変化が起こり始める。

監督は、是枝裕和の『ワンダフルライフ』から『大丈夫であるようにーCocco終わらない旅—』まで、カメラマンを務めてきた山崎裕。「35年前、コペンハーゲンのポルノショップで、空気で膨らませる男性器のみがついたトルソを見かけてショックを受け、この作品の着想を得た」と語る山崎監督が脚本と撮影も手がけた初監督作である。是枝裕和、空気で膨らませる人形、ときたら、『空気人形』を思い出すなという方が無理な話である。都市の孤独という共通するテーマにおいて、『空気人形』における孤独の描写は過食症や引きこもりなどあまりに画一的だった。リー・ピンビンのファンタジックな映像美学も、観客と映画を地続きでないものにしてしまったようにも思えた。
その点『トルソ』は、ヒロコやミナを自分と地続きの世界にいると観客に感じさせてくれる。それは、彼女たちを否定もジャッジもせず、男である自分が求める結論へと煽ることなく、彼女たちの成長と選択を温かい眼差しで見守っている山崎監督の視点があればこそ。
山崎裕は自身の初監督作で、言葉では説明できない感情の変遷を、ファインダーを通し、これまで以上に高い純度ですくい取ることに成功している。

トルソ
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