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Film『僕たちのバイシクル・ロード』 | 僕たちのバイシクル・ロード Review

誰もやったことがない冒険にチャレンジしたい―。2005年、27歳のジェイミーと25歳のベンはそんな思いから、大学を卒業して社会に出る前に、世界を自転車で一周する旅に出発した。自分たちに課した条件は、空路は使わずに、陸路と海路だけで移動すること。その旅の記録が、一本のドキュメンタリー映画『僕たちのバイシクル・ロード〜7大陸900日〜』となった。

Text:須永貴子


英国人のジェイミーとベンは従兄同士。それぞれに大学でアートを専攻した彼らは、そもそもアウトドアには無縁なタイプだった。彼らはこの旅のために自転車を購入し、初めての釣りや野宿を体験する。旅の資金は1人あたり約50万円。これで7大陸を走破しようという無謀な計画は、アウトドアの知識や経験がなかったからこそ実行できたのだろう。

まずはイギリスからフランスへ。西欧、東欧、ロシアを横切り、中国を南下。貨物船に乗るためにシンガポールを目指す。そこからオーストラリア、南極大陸、ニュージーランド、南米、北米、モロッコからスペインへ渡り、イギリスへ。33ヵ国を訪れた、世界一周ひと筆書きの旅は、927日間という年月をかけて輪を閉じた。

冒険旅行は、誰にだって何らかのドラマを与えてくれる。この映画にも、無賃乗船させてくれる貨物船を見つけるまでの粘りの記録や、南極大陸で自転車に驚いている(ように見える)ユーモラスなペンギンの表情や、髄膜炎や足の怪我など、映画的山場はいくつか映し出されている。

しかし、この映画では映っているものよりも、彼らが回した映像がたった30時間分だったということや、旅の資金が底を突いた際にそれまでの旅の過程を小冊子にして、メルボルンの街頭で1万部を売り上げたことのほうがドラマティックだ。つまり、彼らは体力と精神力がものを言うタフガイのための冒険旅行に、アート系男子のクリエイティブをプラスすることに成功したのだ。

帰国後、彼らは2年をかけてDIY精神で映画を完成させた。自分たちで編集した映像につけたBGMは、ベンと弟のジャックの作曲・演奏によるもの。エンドロールには、ジェイミーが927日間描きためたイラストが映し出される。ただし、ナレーションだけはプロフェッショナルのピーター・コヨーテに依頼。初老の男性の渋い声が彼らの旅を彩ることで、作品のルックがグッと落ち着き、深みを増した。こういった判断力も、アーティストならではだ。

ベンは現在Twitterを使って、日本の映画宣伝アカウントから投げかけられる質問に答えるというTwitterviewを行っている。一般の人から投げられた日本語の質問にもベンは自動翻訳で回答し、なんだかおかしなことになっている。こんな風に、「他者と関わり合うことで生まれる先の読めない展開」を楽しむ彼らなので、この映画も冒険旅行の成果を「どや顔」で伝えるものじゃない。映画をつくるために、旅を利用したわけでもない。自分たちの体験を自分たちらしく表現し、他者と共有することの愉しさを伝えるものなのだ。


僕たちのバイシクル・ロード

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