
Exhibition 『愛についての100の物語』 | 金沢21世紀美術館 開館5周年記念展
日本を代表する建築事務所SANAA(妹島和世+西沢立衛)が手がけた、全周ガラス張りの円の内側に大小方形の展示室を配した開放的な構造。建築はもとより、チャレンジングな企画展開の数々で、“先鋭建築の地方美術館”の日本における先駆・成功例として名高い、金沢21世紀美術館。その開館5周年を飾る大規模企画展のテーマは“愛”だという。なぜいま愛なのか? 愛とアートの関わりとは? 湧き上がる謎を胸に、開幕初日の会場を訪れた。
Text:深沢慶太
「あい 口で言うのはかんたんだ
愛 文字で書くのもむずかしくない」
この2行から始まる、詩人・谷川俊太郎の詩『あい』。展覧会チラシや会場内の冊子に掲載されたこの詩から、「“答え”を提示する」企画ではないことを予感していた。それぞれ独立した展示室を回廊がつなぐ美術館の構造上、来場者は自由な順番で各作品をたどることができる。つまり本展は、順序立てた構成で「愛とは何か」という“答え”を導くものではない。展覧会それ自体が、見る者自らが愛について感じ、考え、それぞれの“物語”を紡いでいくための仕掛けに満ちた、“装置”なのだ。


(左)『浮くもの/沈むもの』島袋道浩 (2008)
Photo:福永一夫 (c)SHIMABUKU
大小とりどりの野菜が浮遊する水槽。浮くもの、沈むもの、何故か泳ぐようにたゆたうもの。存在ごとに内包された“個性”をユーモアとともに浮かび上がらせる作品。
(右)『妻の肖像』舟越桂 (1979-80)
Photo:近藤正一 (c)西村画廊
木彫半身像で知られる舟越桂が、初めてクスノキを用いて制作した、作家キャリアの原点ともいえる作品。“愛のかたち”と制作行為の関係性が、極めてピュアな印象とともに伝わってくる。

『パルス・ルーム』ラファエル・ロサノ=ヘメル (2006)
Photo:福永一夫 (c)Rafael LOZANO-HEMMER
金属グリップを握った者の心拍リズムで明滅する、約300もの白熱球からなる作品。異なる300人の鼓動が、関係に生きる人間の在り方を照らし出す。

『記憶の部屋』塩田千春 (2009)
Photo: Sunhi Mang (c)SHIOTA Chiharu
旧東ベルリンの廃屋や改築時の建物から集められた、木枠のガラス窓が織りなす巨大な塔。かつてそこに触れながら<いま/ここ>に不在の人々、その痕跡と記憶の集積に震撼する。

『100の迷宮』山本基 (2009)
(c)YAMAMOTO Motoi
金沢在住、同館の開館記念展でも話題を呼んだ作家の、塩を用いたインスタレーション。迷路に内包された99の円と、美術館外周と同じ弧を描く1つの円が、儚くも密につながり合う人間の姿を想起させる。

鈴木ヒラク+Shing02—パフォーマンスとライブペインティング
パフォーマンス中の鈴木ヒラク(手前)とShing02(奥)
鈴木ヒラク作品の展示室にて、5月5日に開催。土、水、大気などこの世界に溢れる魂とのアニミズム的交信を感じさせる作家と、フリースタイルのラップとの、共時性あふれる“対話”のひとこま。
会期を通し開催されるトークやパフォーマンス、朗読やライブなどのイベントは、のべ100回を超える。展示やそれらイベントを貫くキーワードは「オープン・ダイアローグ」。まさに、「心を開いて対話すること」を、“愛の端緒”として投げかけているようにも捉えられる。作家や関係者、来場者など、すべての人々が織りなす交信から生まれる無数の“物語”に思いを馳せ、時に共有し、記憶に刻み、その関係性のうちに生きていくこと。教条やレッテルに満ちた権威的な“美術館”像はここにはない。“開かれた美術館”が放つ、“開かれたアート”の試みは、“開かれた社会”=“愛に満ちた世界”への試みでもある。

Exhibition Information
金沢21世紀美術館 開館5周年記念展『愛についての100の物語』
Zone1: April 29 2009
- August 30 2009
Zone2: April 29 2009
- July 20 2009
at 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa
Photo: 中道淳/ナカサアンドパートナーズ
(c)金沢21世紀美術館













