
YUICHI YOKOYAMA EXHIBITION |『私は時間を描いている』| 横山裕一
荒野でも車内でも神秘の楽園でもどこでもいい。そこには冷ややかなポーズを決め込んだ、無表情なキャラクターたちが散在し、スタートの合図を待っている。サイレン、号砲、それに類ずるもの。彼らは、合図と共にエッジの効いた擬音を鳴らし、その時間と空間を超越した行き先不明のランデヴーは、”わたしたち”を乗せ加速するー。スタイリッシュで圧倒的な世界観。漫画ともアートとも称せない、独自の領域で作品を発表し続ける孤高の芸術家・横山裕一。そんな横山裕一初の大規模個展『わたしは時間を描いている』が現在、川崎市市民ミュージアムで開催中だ。
Text:石井龍
4月24日より始まった本展では、川崎市市民ミュージアムの2008年度収蔵・寄託作品となった『ニュー土木』『トラベル』『NIWA』所収原画を中心に、横山裕一がこれまでに製作してきた作品が展示されている。会場は、およそ漫画が展示されていると思えないほど、来場者の”動き”を想定した作りとなっており、会場は運動場にさえ思える。横山の作品をを理解するには、これほどのボリュームがどうしても必要であり、漫画という静的な表現媒体を見ながらも、来場者は自ら移動し、”動き”を体感するはずだ。


陸上のトラックを模したようなショーケースの中には、横山のこれまでの漫画原稿が陳列されている。列にそって読み進めていくと、いつのまにか、同じ場所にたどり着く。来場者たちが、ぐるぐるとこのトラックを回る姿は、どこか滑稽でシュールだ。

(下)「わたしたち」入り口付近に展示された絵画の数々。どれも印象的であったが、特に「わたしたち」という作品は、横山自身の抽象的な自画像のようで、とても興味深かった。


(上)「野獣とわたしたち」個性的なキャラクターを中心とした絵が壁一面を埋め尽くしている本作は、2007年に森美術館で開催された「六本木クロッシング2007:未来への脈動」でも展示されたもの。また、作中にも現れる芝を丸めたような立体を、実際に作ってしまうところが、まさに横山の遊び心の現れであり、展示全体にこのような、無邪気なギミックを感じることができた。

(左)「無題」、(右)「戸田」大型のペインディングも展示され、横山が描く油絵が重厚で暗いトーンから、カラフルでトリッキーなものへと変貌していく様子など、時代の経過と共に、作品の変化の軌跡を辿ることができる。
呼吸の瞬間を切り取ったかのようなひとコマひとコマは、展示会名の通り、横山が何を表現しているのかを、堂々と提示している。「常に見る人のことを意識している」と横山本人が言うように、その洗練された世界には、全てを俯瞰し、導く神の視点=横山の気配を感じるのだ。
5月11日から16日までの間。横山裕一は公開制作を行い、そのスペースには、過去の資料や友人との会話を取り貯めたというテープなども展示され、横山の閃きが、作品に落とし込まれていく様子を、見学することができた。また、6月6日には「横山裕一相談会」と題した、トーク&サイン会が開かれる。こちらも楽しみだ。
Exhibition Information
『私は時間を描いている』
April 24 2010 – June 20 2010
at 川崎市市民ミュージアム
Artist Profile
横山裕一
1967年宮崎に生まれる。絵画を学んだのち、時間を描くことのできる表現方法として漫画を選びとり、以降独創的な作品を生み出し続ける。目的不明の大土木工事を描いた「ニュー土木」、不思議な鉄道旅行の一部始終を描いた「トラベル」など、その時間と空間がおりなす新しい世界は、国内外を問わず、またジャンルを超えて高い評価を得ている。












