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諏訪綾子展 ゲリラレストラン『LOST TONGUES』

コンセプチュアルなケータリングや、食に関する斬新なプロデュースを仕掛けるフードアーティスト・諏訪綾子。美食の追求ではなく”表現としての食”という新たなアプローチで、国内外からその活動に注目を集め始めている彼女が、先日ラフォーレミュージアム原宿にて、東京では初の大規模エキシビジョンとフードパフォーマンス「LOST TONGUES」を行った。演劇、パフォーマンスが融合したレストランで「感情のテイスト」をあじわうという未知なる体験に胸躍らされた私は、3日間限定のゲリラレストラン開店初日をリポートした。

Text:小島直子

真っ赤にドレスアップされた舞台、真っ白いテーブルがずらりと並んだ空間には、非日常を求めにやって来た大勢の大人たちで溢れていた。ショーの開幕は、S席の客達と諏訪綾子が、A席の客達の拍手で迎えられながら舞台上から登場するという演出で始まった。ドレスコード付きのS席は9品のフルコースを堪能でき、私たち立ち見のA席はフィンガーフードを2品楽しめる。

実はこのシステムがとても奇妙で面白い状況を生むことに気がついた。テーブルに向かい合って食事をする人を大勢の人々がじっと眺めているという光景が現れるからだ。A席は、この食べ物がどういう味なのかをS席の客の表情とコメントから想像しなくてはならない。逆に言えば、嫌でも食べている様子の一部始終を大勢に見られながら食事をしなければいけないといった演出が仕掛けられている。

また、YOSHiKO CREATiON PARiSの梶谷好孝ディレクションによるコスチュームを纏った個性的なウェイターたちは、ただの配膳係ではなく、おどけてみせたり、感情を露にする。このレストランではテーブルで食事をする客、それを眺める私たち観客、その空間にいるもの全てが「演出者」になり「観客」になる。

「恥ずかしさと喜びがゆっくりと快感に変わるテイスト」

「驚きの効いた楽しさと隠しきれない嬉しさのテイスト」
見た目も華やかな菊花を乗せたホワイトチョコレート。中に隠されたパチパチキャンディが口の中で弾け踊ったので、これが”隠しきれない嬉しさ”かと納得。コンセプトが胃まで届いたのを実感した瞬間だ。

「幸せのテイスト 後から押し寄せる切なさのテイスト」
使用食材はマスカット、海ぶどう、バラフ、にがり、バジル、松の実、岩塩、オリーブオイル…と味の見当もつかない組み合わせ。和洋中とジャンルを越えた素材同士を組み合わせるところも諏訪綾子の特徴だ。

舞台上で鍋を振ったり、包丁を叩く音が場内ミュージックのように軽快なサウンドとなって響き渡る。9品の感情のテイストに合わせ、4人の調理人達によって作曲されているそうだ。

諏訪綾子本人も登場し、ゲリラレストランを盛り上げる。アーティスト自身も楽しんでいることが伝わると同時に、このショーの一部始終に彼女の目が行き届いているのだと感じる。

エキシビジョンのコーナーでは、諏訪綾子の食プロジェクト「food creation」名義での活動を展示と映像で紹介するほか、諏訪綾子の世界観を写真、グラフィック、立体作品で表現。

ロビー空間にはウェイティングバーが出現。food creationが開発した初の商品を味うことができる。

金沢の老舗酒造「福光屋」と共同開発した「sensuous food,emotional taste,感覚であじわう 感情のテイスト」はテーマ別になった香りのエッセンスをブレンドして楽しむ新感覚のフードプロダクト。私は「saketonic」なるアルコールに「くらくらする程の切なさに嬉しさが込み上げて喜びに上気するテイスト」を注文。甘い眠くなる香りのあとにスパイシーな風味が鼻から口を駆け巡る。

また、バーの女性スタッフがつけていて気になっていた、黄色の輪っかがいくつも重なったインパクトのあるネックレスは、3種のカンパンがネックレス状になった実際に食べられるジュエリーだった。こちらもカンパン製造技術をもつhokkaとコラボレーションした「JEWELRY for your LOST TONGUES-あなたの忘れかけていた感覚を呼び覚ますジュエリー」という商品。

これまで国内外で多くの表現活動を行っているが、トータルに諏訪綾子の世界を感じることができる盛り沢山な内容はこれが初めてだ。フードパフォーマンス、作品展示、プロダクト、その全てが官能的で挑発的であった。それはただ見たことがないから美しい、食べたことがないから新しい味ということではない、感情を揺さぶられる感覚なのだ。food creationの五感に刺激を与えてくれる「食」体験と「感情のテイスト」シリーズの今後の展開が非常に楽しみである。

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