
「クロスカウンター 日英共有展」レポート
10月2日まで、東京のオルタナティブ・スペース「XYZ collective」とギャラリー「CAPSULE」で「クロスカウンター 日英共有展」が開催された。この展覧会は、青山悟、澤柳英行、ピーター・ドナルドソン3名のアーティストがキュレーションを行い、自らも出品作家として参加している。その中のひとり、青山悟さんと、XYZ発起人であり、映像作家であるCOBRAさんに、展覧会を行うことになった経緯や、特徴、日英の展示スペース事情などについてインタビューすることができた。
Text:和田真文
そもそものきっかけは、大学(ロイヤル・アカデミー・カレッジ)の友人同士だったアーティスト、ピーター・ドナルドソンと澤柳秀之による企画「Cross Counter」が、革新的なクリエイティヴ事業計画を募集するコンペ「Deutsche Bank Awards2010」を受賞したことにある。
この企画を実行に移すべく、英国を拠点に活躍するアーティストを集めた展覧会「クロスカウンター・ラウンド1:東京」を都内で行う予定で動いていたが、3月に起きた震災や円高の影響をうけキャンセルになってしまっていた。そもそも、青山さんが澤柳さんとロンドンで同じスタジオを使っていたことや、青山さんがピーターと知り合うきっかけがあったり、XYZの話をCAPSULEのオーナー、吉野さんから聞く機会があったり・・・人の繋がりが新たな繋がりを呼び、今回改めて「クロスカウンター 日英共有展」として、まだオープンして間もない2つのスペースで開催されることになった。
本展は、他国との文化交流を図る展覧会でもある。日本国内では現在、日独交流150周年を記念した展覧会もあちらこちらで開かれているが、このような他国間交流は「地味だけど続けていく必要がある作業だ」と青山さんは話す。

会場1、XYZ collectiveの内部。会場は足下を直接照らす照明はなく、作品そのものにわずかなスポットライトが当てられている。それが結果として気迫というか殺気すら感じさせる作品の強さにプラスの効果を生み出しているように思えた。

(左から)朝海陽子「素敵な歌と船はゆく、横浜」(2007)、「トランスフォーマー、ソウル」(2009)、「トスカーナの休日、ニューヨーク」(2010)、「C.R.A.Z.Y., New York」(2010)
戸を開けて正面に見える作品。朝海さんの作品のように、普段はきっちりとしたギャラリースペースに飾ってありそうな作品をあえてオルタナティヴな場所に配置し、ラフなイメージを持ちそうな作品を白い壁面のCAPSULEに展示したことが本展のひとつのポイントになっている。
青山さん自身は、展覧会を「新鮮味をみせる」ものと捉えている。オルタナティブ・スペースを、作品と場所柄の性質にギャップを発生させる展示によって作品そのものに対する発見をうながすような、より自由で面白い、風通しの良いものに変える発信源にできたらという考えは、COBRAさんが話すXYZの将来像とも重なる。
XYZ Collectiveは、COBRAさんのメルボルンでのアーティスト・ラン・スペースでの体験を原点にスタートした。DJなどのイベントもあり、建物の外まで人が溢れ返ってあちこちで人が話し盛り上がる姿が見られるとても雰囲気のいいパーティーを体験し「こんな活気があるスペースを日本でもやりたい!」と強く思ったのだという。XYZには、アーティストのためや同世代のためだけのスペースに留まらず、国内の文化そのものを活発化させようという仕掛けが溢れている。

雨宮庸介「併走論のために」(2011)
1月、2月と当たり前のように月日が並び、3月が長く尾を引くように数字が並ぶ。

Chicks on Speed「Don’t」


秋吉風人「overall」(2011)
イギリスでいえば、YBA以降の作家(デミアン・ハースト以降の作家)を、日本でいえば村上隆以降の作家を見せるというのも、本展で意識されている点のひとつ。ゼロ年代の動向となっていたサブカルチャーや「オリエント」以降の美術の動向がどうなっているのかがわかるような作品を集めたという。

右手に見える作品は澤柳英行「There is still love after the 3 minutes」。数字のカウントダウンが終わった瞬間、「LOVE」の文字が光って浮かび上がる。


(左)ルース・イーワン「Unrecorded Future Tell Us What Broods There」(2008)、(右)青山悟「祈りは通りすぎる」(2011)
(左)20世紀初頭の活動家、グスタフ・スピラーの著作『Poems of Human Service』を元にしたメッセージが並ぶ。(右)本展企画者のひとり、青山さんによる作品。スポットライトが当てられた作品の前を人が通り過ぎると・・・。観客が作品に近づくことでタイトルがより深く響く仕組みがとられている。
さて、こちらが第2会場、世田谷の三宿交差点近くにオープンしたギャラリー「CAPSULE」。XYZからバスで10分ほどの距離にある。併設のカフェはランチやお茶を楽しむお客さんで賑わっていた。

道路から少し奥まった場所にあるカフェ。オープンテラスで休憩するのもおすすめ。

ピーター・ドナルドソン「A Quiet Explosion」(2010)
会場2、CAPSULEを入って正面に見えるのが本展キュレーターの一人、ピーター・ドナルドソンによる作品。筒にあたる部分が地面を向いて曲げられている。

(左奥)松原壮志朗「TELEPHON(SELF PORTRAIT)」(2008)、(右奥)松原壮志朗「SELF PORTRAIT」(2011)

ピーター・マクドナルド「Mother’s Bobbles」(2009)、「Touching Toes」(2010)、「Smoking Zen」(2010)、「See-Saw Birds」(2008)、「She’s nice 」(2008)、「Home」(2005)、「Zen Bubbles」(2010)、「Pretzel」(2010)
ピーター・マクドナルドによる、アクリルを使ったドローイング作品。会場2で正面に見えるのがこれ。顔(?)が、向こうが透けてみえる空豆型の頭をした人の姿をしている。
展示順やコンセプト、参加作家などを決定しオーガナイズする役割を担うのがキュレーション。それを、あえてアーティスト主体でやる何よりの面白さは「スピード感」だと青山さんは言う。複数のやりとりを介さず、まず感覚を軸に置いて作品を選ぶ面白さが展示そのものにあふれている。作家の顔ぶれをみても、最年少の八幡亜樹から雨宮庸介、ルース・イーワンなど、自らの頭で思考し続けるアーティストたちによる、ピリピリした緊張感と強さを併せ持つ作品が集められた展示だった。

Exhibition Information
クロスカウンター 日英共有展
会期:2011年9月17日(土)〜10月2日(日)
会場1:XYZ collective
会場2:CAPSULE
参加アーティスト:
チックス・オン・スピード / ピーター・ドナルドソン
ルース・イーワン / ピル・アンド・ガリア・コレクティブ
ピーター・マクドナルド / ケイト・オウエンズ
澤柳英行 / 青木陵子 / 青山悟 / 秋吉風人 / 朝海陽子
雨宮庸介 / 松原壮志朗 / 山川冬樹 / 八幡亜樹
















